ギャップイヤー・ジャパンからのニュース・お知らせ

公立大学法人国際教養大学(秋田県)  国際教養学部グローバル・ビジネス課程に所属している渡部北斗さんに聞いた『ギャップイヤー体験』インタビューをお届けします。多くの高校生からもっとギャップイヤーのイメージを持ちたいというお問い合わせがあり、皆さんにとって"お兄さん"にあたる現役大学生である渡部さんに丁寧にお応えいただきました。

 参考にしていただき、制度への理解を深めていただければ幸いです。

                                                                         JGAP広報

1.なぜギャップイヤーをしようと思ったか?
  一言で言うと、ギャップイヤーの取り入れられた9月入学という入試制度が、国際教養大学の入試制度の1つだったからです。もともと国際教養大学に興味を持ち、他人とは違うことがしたいと思っていた私は、「9月入学・ギャップイヤー制度」という日本ではあまり聞き慣れないこの入試制度に惹かれ、受験に挑戦することに決めました。

 しかしながら、出願時までギャップイヤーについて何の知識もなかった私にとって、ギャップイヤーは得体の知れない制度でした。ですが、9月までの半年間のギャップイヤーを経験することはとても魅力的に感じ、受験し、合格することができました。


2.ギャップイヤーを利用して、何を学ぼうとしたか?
  9月入学試験の出願の際、「ギャップイヤー活動計画書」の提出が求められましたが、ギャップイヤーについてほとんど知識のなかった私は、全ての授業が英語で行われる国際教養大学のカリキュラムについていけるように「英語圏での語学研修」という内容で提出しました。

 しかし、3月末の入試面接までの間、インターネット等でギャップイヤーについて調べた結果、「語学研修による英語力強化よりも、その時点の私にはできそうもない活動を行った方がよい経験になる」と考えるに至りました。そこで私は、将来的に国際協力の分野に関わりたいと考えていたので、何かそういった活動をギャップイヤーで経験することに決めました。


3.国際教養大学のギャップイヤー制度の意図は?
  国際教養大学のギャップイヤーの目的は、大学HPにもあるように、「様々な活動を通じて、本学に入学する前に社会的な見聞を広げ、自己発見を促し、社会人としての基礎能力発達の機会を得るなど、入学前に貴重な社会体験を行うことで、入学後の本人の学習意欲や職業選択能力を高めること」です。

 ギャップイヤー制度を採用している9月入学試験の合格後は、他の日本の大学と同じように4月から授業の始まる他の試験日程とは違い、国際教養大学の9月入学の入試制度では、9月入学の合格者はその文字通り、入学の許可される9月までは授業をとることができません。その代わりに、入学までの約半年間をギャップイヤーとして自分で活動を計画し、実行することが課せられます。

 ギャップイヤーの中で学んだ「自分で計画し、実行する」という行動をギャップイヤー経験後の大学生活でも活かすことを大学も求めています。


4.どんな経験をし、何をギャップイヤーで学んだか?
  私はギャップイヤーの期間を使い、「住民参加型地雷除去作業」を行っている認定特定非営利活動法人日本地雷処理を支援する会(JMAS)様のご協力を得て、カンボジアで1ヶ月間の研修を行ないました。研修内容は、地雷原での地雷や不発弾の除去作業の見学、井戸掘り作業の補助、村として行っていたゴミ削減活動への参加、単身ホームステイによる住民との交流など、とても内容の濃い経験をすることができました。研修前の私は発展途上国であるカンボジアの人々に対し、「貧しい生活を送っていそうでかわいそう」というイメージをもっていました。

 研修を通して、確かにカンボジアは、物資の量や経済力、衛生面などの多くの点で、日本に劣っているのは明らかでした。しかしながら、私の目にはカンボジアの人々は毎日をいきいきと過ごしているように映り、「かわいそう」などという感情は全くおきませんでした。その上、実際に異国の地で研修を行うことにより、日本という国から出たことのなかった私の持っていた「私の常識」という尺度とは全く違った尺度に出会い、今まで漠然とした概念でしか捉えることができなかった「世界が広がる」という経験をすることもできました。

  また、自分の住んでいる地域の文化にも触れ、いつかその文化を知らない他の国や地域の人にも紹介できるようになりたいと考え、私の住んでいた四国地域で古くから歴史のある「四国88カ所巡り(お遍路さん)」をすることにしました。途中で身内に不幸があり、結果的には88カ所すべてのお寺を廻ることはできませんでしたが、遍路の旅の途中や行く先々でいろいろな人と出会い、自分自身を見つめ直す良い機会にもなりました。


5.国際教養大学で、他のギャッパー(ギャップイヤー経験者)の経験した内容を数点紹介を?
 私と同時期にギャップイヤーを経験し、一緒に入学した友人のうちの2人の、ギャップイヤーでの経験を簡単にですが紹介したいと思います。

A君
タイで自給自足のための畑造りをしている団体のもとで、1ヶ月間のボランティアを経験。異国の地での慣れない生活や、世界各国から集まった他のボランティアのメンバーとの交流を通して、異文化とふれあうことの大切さや、それに伴う難しさを経験できた。

Bさん
外国人労働者を雇用している国内の農家での体験プログラムを経験。外国人被雇用者と共に作業をする体験を通して、中学時代から新聞記事で知って興味があった外国人労働者の雇用問題についてより深い理解ができた。


6.単位認定の仕組みは?
 国際教養大学のギャップイヤー制度は、秋(現役なら高3の秋)の入学試験により翌年9月入学の合否が決まります。合格が決まれば、大学と打ち合わせ、その後約半年間のギャップイヤー活動(国内・国外問わず)を経て9月から大学に通うことになります。入学後、ギャップイヤー活動報告書を提出し、その報告書に基づくプレゼンテーションを行なうことによって「インターンシップ」の科目として3単位が付与されます。

 卒業に関しては、大学では春卒業と秋卒業の2通りから選ぶことができるので、ギャップイヤーを経験したとしても、4年間で卒業することができます。私の場合は、学業やそれ以外の課外活動等から多くのことを学び、たくさんの経験を積むことで、より価値のある大学生活を送りたいと考えているので、刺激的な日本人学生や留学生の仲間達と切磋琢磨しあえる国際教養大学の環境を十分に利用し、卒業を焦ることなく4年半在籍することを考えています。


7.今大学生活で、力を入れていることは?
  ギャップイヤー後の大学生活では多くのことを経験してきました。学生の本分である学業に励んできたことはもちろんですが、野球部に所属して地区大会でのチーム初優勝を経験したり、大学祭の部門長として約50人の実行委員をまとめる経験したり、いろいろな活動に挑戦してきました。

 現在は、友人数人と、低い人口増加率や高い自殺率等の秋田県のもつ課題に対して、多角的アプローチに繋がる情報共有を提供する活動がしたいと考え、現時点では任意団体ですが、組織を設立し日々活動しています。学生だけの内輪の団体になることなく、多くの人を巻き込みながら、大学生時代を過ごす「第二のふるさと」である秋田県の活性化に貢献できればと考えています。

 まだ設立から間もない団体で、いくつもの困難に直面することもありましたが、全ての作業が手探りの状態ながらも、それらを乗り越える度に、自分たちの成長や団体としての前進を実感できており、勉学もその他の課外活動も充実した大学生活を送れています。

8.卒業後、何がしたいかのキャリアのイメージや展望は?
  私はギャップイヤーを通して、また、大学での様々な経験を通して、世界にはまだまだ知らないことが数多くあることに気づきました。世界中の人と関わりながら、まだ日本にはないものやサービスを日本に紹介したり、日本の高い技術力やアイディアを世界に提供したりすることによって、日本を、そして世界の人々の生活をより便利で、より豊かにできるような仕事に携わりたいと考えています。

 今取り組んでいる秋田の活性化に向けた活動や、1年間の留学など、大学在学中には貴重な経験を得る機会がいくつもあります。これらの機会を活かし、自分を磨きながら学生生活を過ごしたいと考えています。


9.これからギャップイヤーを経験したい高校生へのメッセージを
  現在、ギャップイヤーを制度として導入している大学や、制度を理解している人はあまり多くはありません。私自身も、ギャップイヤーを経験するまでは何の知識もありませんでした。偏差値教育の弊害とまで言われる「ストレートで大学に進学し、就職することが一番正しく優秀である」と考える傾向がある現在、ギャップイヤーという制度は、一見して「回り道」でしかないような扱いです。

しかし、私は、「現時点でギャップイヤーを知っていることは他人とは違う経験をするための大きなチャンスである」と考え、少しでも興味があるのであればギャップイヤーを実行に移すことをお勧めします。

 また、ギャップイヤー制度を導入していない大学に進学する場合でも、自分自身でギャップイヤーを実施することは可能だと思います。自分で活動を考え、行動に移すことで得た経験は、その後の生活の中でもかけがえのない存在になると思います。


10.その他、注意点や、強調したいことは?
  ギャップイヤーをするうえで私が大切だと思うことは、まずは計画をしっかり立てるということです。せっかくギャップイヤーを行動に移したところで、明確な予定もなく成り行きで過ごしてしまうようであれば、残念なもので終わってしまうと思います。

また、最初に計画を立てることによって、どれだけ計画に沿って(またはそれ以上に)できたか、当初予想していたギャップイヤー後に得られるであろう充実感と比べ、今感じている充実感はどれくらいか等の反省が、ギャップイヤー終了後にできやすくなると思います。その反省点を改善しようと取り組むことで、ギャップイヤー後の生活もよりよいものになるのではと思います。

  これをご覧になっている方の中には、私の両親の年代に近い方や、ギャップイヤーをお子さんにさせたいとお考えの方もいると思います。その方々に向けて私が言いたいことは「強制してはいけないけれど、是非ギャップイヤーをお子さんに経験させてあげてください」ということです。

 もし、お子さんが「ギャップイヤーをしたい」と相談をうけた方がいらっしゃいましたら、ぜひ経験させてあげて欲しいと思います。私の両親はお世辞にも国際的な環境で育ったような両親ではありませんが、ギャップイヤーに関して理解があったと言えると思います。

 私が「ギャップイヤーで地雷撤去作業をしている団体で研修をしたい」と伝える際、「危険だから他のことをしなさい」などと返事が返ってくるのではと考えていたのですが、「自分で決めたならやればいい。ただ、やると決めたからには自分で動きなさい」と言ってくれました。今は、ギャップイヤーをすると言った私に対して理解を示してくれた両親にはとても感謝しています。

  最後に、ギャップイヤーを経験し、今思うことは、「ギャップイヤーは親に強制されてすることではない」ということです。ギャップイヤーは「自分で計画し行動に移す」という経験のできる大切な機会だと思います。「どうしてもお子さんにギャップイヤーを経験させたい」という方は、まずお子さんにギャップイヤーの存在を紹介し、巧くギャップイヤーに対するやる気を起こさせてあげて欲しいです。やる気をもって取り組んだギャップイヤーは自主性のあるものとなりきっと成功だと言える経験になると思います。  

※国際教養大学のウェブサイト「ギャップイヤー制度」→http://www.aiu.ac.jp/japanese/admission/admission0303.html                                                                                                                                                                   以上