ギャップイヤー・ジャパンからのニュース・お知らせ

ウェブ掲出用ギャップイヤーの4層構造.jpg2月15日15:00~15:30 TBSテレビCS「ニュースバード」の「ニュースの視点」で、JGAP砂田 薫代表理事がゲストとして「大学の秋入学とギャップイヤー」を解説しました。(番組では「ギャップターム」は東大の造語であるため、「ギャップイヤー」で統一しました。)

【はじめに】
・東大の秋入学検討のニュースは、大学の国際化の観点から歓迎。世界の7割が秋入学の中、"国際標準"として、相手の土俵に乗る意思表示で、これから学内外の環境整備のきっかけと捉えるべき。
・文科省発表の09年の海外留学した日本人数はピークの04年に比べ、09年は2.3万人減り6万人弱と落ちかたが大きい。しかも5年連続落ちている。
・東大内でも学部段階で留学する学生は0.4%(53人)でしかない。留学生の受入は、1.9%。ハーバード大やイエール大では、10%超と大きな差。

 【大学・大学生の国際競争力を意識する必要性】
・一つの指標である「世界大学ランキング」も100位以内に東大・京大の2校しかないが、実は、400位以内に入っている日本の大学は05年には27校だったのが、11年には16校にまで減っている。つまり、個人戦だけでなく、「団体戦」でも負けているのは明らか。これでは、ガラパゴスで「ゆでガエル」状態と言われてもしかたない。
・昨年12月の文科相の諮問機関である中教審で、金子委員のスライドが紹介されたが、「学生:(欧米に比べ)勉強していない  教育:密度が低い  大学システム:革新が生じていない」。金子さんは前の東大教育学部長で、いわば教育学の第一人者が国際競争力の劣化を認めてしまっている。
・昨年11月に行なわれた「政策仕分け(大学編)」でも、「グローバル人材対応になっていない」など酷評が相次いだ。
・朝日新聞の一般人に対する調査でも「日本の大学は世界に通用する人材を育てているか」の問いに63%が「できていない」と回答。
・文科省は、現在「大学入学後と卒業前」のビフォ・アフターで「能力測定」を検討しているほど、問題意識がある。
・商社などで構成する日本貿易会会長も「国際的な競争に耐えられる学生の教育ができていない」と一刀両断。
 つまり、産官学民の4セクターとも、「日本の大学と大学生の国際競争力」に疑念を抱いている現状を認識する必要がある。

【留学のしにくさは春入学に起因というデータ】
「学生の海外派遣に関する大きな障害は?」
「帰国後、留年する可能性が高い」(67.8%) ※06年 87国立大学調査

「大学の年間スケジュールや大学院・就職試験が留学の妨げになったか?」
「あてはまる・まあ、あてはまる」(39.7%)
「経済的問題」(31.4%)
「語学の問題」(22.9%)※10年東大「学部卒業者」調査

【ギャップイヤーの定義と構成要素】
04年の英国・教育技能省(現・教育省)の定義では、親元・教員から離れた非日常下での「ボランティア・国内外留学の社会体験とインターン・アルバイト等の就業体験」等の課外活動を指す。例えば、工学部に進学する予定の学生が、中国に半年語学留学したり、経済学部の学生が、限界集落や被災地に3ヶ月間インターンやボランティアに入ることなどが該当する。期間は、3ヶ月から24ヶ月。休学・留年の有無は関係ない。(最近は牧歌的な遊学ギャップイヤーは影を潜め、ソフトスキル開発、リーダーシップ醸成、就職・CV対応といった自己投資的かつ計画的constructive側面が強くなっている。)

【ギャップイヤーの効用】
①バーンアウト(燃えつき症候群)と中退率の低下(英国・米国等)
②入学後の目的意識が明確化
③就業力の向上(昨年の英国250社経営者インタビュー調査で、新人採用の際、学位よりギャップイヤーの経験を同等かそれ以上評価すると応えた人が6割を超えた)
④職業観の醸成(労働経済白書でも書かれている。大卒者は3年で3割辞めているが、その処方箋になるかもしれないという期待)
⑤海外でのインターン・ボランティア・課外の留学⇒「グローバル人材」の訓練
⑥国内での限界集落や被災地でのインターン・ボランティアをすることで、「社会的課題を克服する」研究やビジネスの足掛かり に

 つまり、ギャップイヤー導入で、「グローバル人材」と「国内社会・地域課題解決型人材」の両方を生み出す可能性がある。
 また、ギャップイヤーのテーマ設定については、入学予定者の個人差もあるため、図表にあるように、自主的に計画するプログラム(国際教養大型)と大学側が提供するプログラム(プリンストン大型)の選択にすべきと考えている。

※参考まで、東大の中間報告での記述を紹介
東大 ギャップイヤーのメリット
 「多様な体験活動を積む"寄り道"を設けることで、受験競争で染み付いた偏差値重視の価値観をリセットし、大学で学ぶ目的意識を明確化できる」
 
【半年ギャップイヤーの想定されるデメリット・懸念】
①ギャップイヤー期間の経済的負担増大 (奨学金・寄付対・助成金対応?)
②経済格差によるギャップイヤー活動の質(同上)
③高校進路指導の複雑化(いずれにせよ、春・秋入学が進行?)
④実施大学が社会に影響力ある有力大学ばかり⇒企業の採用が「秋入学」大学に集中、
「春入学」組の大学生の機会が奪われる
⑤半年ギャップイヤーの有効性(しかし、これは先行する国際教養大の半年ギャップイヤーの知見が既にある)

【総括コメント】
 東大の秋入学と半年ギャップイヤー構想の中間発表が1月20日に発表されてから、まだ1ヵ月も経っていない状態で、産官学でそれぞれ歓迎の意向が表明されたり、相当動きがあり、進捗している。
 東大が11大学に「秋入学」を呼びかけたのは、「国際拠点大学」としての議論であり、日本の全大学が秋にという提案ではない。それぞれの大学が、どういう価値を学生に提供できるかを考えるよい機会だと思う。
 実は4セクターのうち、「民」が受験生や親御さん、一般社会人などを抱え、一番多様でコンセンサスの形成が難しいかもしれない。
 しかし、世界で生きる日本としては、「日本の高等教育のグローバル化対応」という方向性は間違っていないし、若い世代に世界に伍する力をつけていただくことであり、オール・ジャパンで知恵を出し、乗り越えるべきテーマだと考えている。

TBSテレビCS「ニュースバード」→
http://www.tbs.co.jp/newsbird/lineup/viewpoint/index-j.html