ギャップイヤー・ジャパンからのニュース・お知らせ

 2012年5月31日に、JGAP1周年記念「明日の高等教育の可能性を"親子"で考えるセミナー」が築地・朝日新聞東京本社「読者ホール」で行なわれました(主催:一般社団法人JGAP 後援:朝日新聞社教育総合センター)。
以下は、東京大学でギャップイヤーを取得している吉澤裕紀さんの講演要旨です。吉澤さん記事写真.jpg


「ギャップイヤーを経験して考えていること」
プレゼンター:吉澤裕紀さん(東京大学経済学部3年=休学中)

 

 現在、ギャップイヤーを取得していろいろな活動をしています。その経験について、個人的な話がほとんどになりますが、率直にお話しをできればと思います。

 僕は東京大学経済学部3年です。今年4年になるはずだったのですが、去年の秋から1年間の休学をしているので、今も3年生です。あまり勉強は好きではなく、東大に入ったものの「あまり東大好きじゃないな」と思うこともあります(会場笑い)。ですから、典型的な東大生ではないと思います。

 大学1年までは、いわば親の敷いたレールに乗ってきました。大学受験も、負けず嫌いだったのでとりあえずものすごく勉強してなんとか東大に。大学に入ってからもなんとか周りについていこうと、ひたすら勉強しました。でも、テスト勉強や就活対策をする周りの学生を見て、そんなことをするために大学に入ったんじゃないという思いは抱いていました。

 そんな生活を大きく変えるきっかけになったのが、大学1年の春に参加した、途上国に貧困問題を学びにいくスタディーツアーです。大きく衝撃を受けました。カンボジアの人たちは生きることをすごく頑張っているのに、自分は何をやっているのだろうか、と思いました。また、国際協力に関心が高く、生き生きと学外で活動している他の参加者の姿を見て、自分ももっと外の世界で生きてみたいと思うようになりました。

 その後、スタディーツアーを主催したNPO法人かものはしプロジェクトで、学校に行きながらインターンをさせてもらいました。これが自分の中でのギャップイヤーの始まりです。児童買春問題を解決しようとしているNPOなのですが、そこで働いている人の姿にすごく刺激を受けました。また、働くということはどういうことなのか、ということを考えるようになりました。インターンを続ける中で漠然と国際協力の仕事をしたいと考えているころ、震災が起きました。

 昨年のと震災は僕にとって第二の衝撃でした。これまでカンボジアというとても遠いところにいる人たちのために活動をしていましたが、今度は東北というとても近い場所で自分と同じ日本人が苦しんでいる。すぐにでも東北に行かないといけない、という気になり、インターンを中断して、学校の休みを利用して合計2カ月東北でボランティアをしました。その中でだんだん日本のことに興味が出てきて、東北の農業、漁業といった産業に関する問題を解決したいと思うようになりました。そして農林水産省がやっている都市の若者を田舎に派遣して地域の問題を解決するプログラムに参加し、滋賀に行きました。東北から逃げるような後ろめたさもあったのですが、ひとつの地域に自分だけが入って活動するというのはとても大きな経験だと思ったんです。このとき(昨年秋)から東大を休学しました。

 滋賀では、農業や観光誘致事業など、地域の盛り上がりのためにいろいろ取り組みました。半年間で成果が上がるかというとそうではなく、継続することに意味があるとも感じました。もう東京に帰ってきてしまったのですが、滋賀には今後も関わっていきたいと思っています。

 戻ってからは、自分の地元の国立でなにかしたいと思うようになりました。せっかく興味をもった農業について、調べたらベンチャー企業が行っている地元の野菜の直売所があり、今はその手伝いをしているところです。まだ秋まで半年間休学期間があるので、その間にこの活動にもっと関わっていこうと考えています。

 この2年間の外での活動を通して、一番考えたことは、自分はどう生きるかということでした。
今までは、常に上へ上へ、というところしか見てこなかったと感じています。しかし、この2年間の経験を経て、いろんな世界があっていろんな境遇の人がいて、幸せの感じ方もさまざまだと気付きました。どんな選択肢でも選べるという点で、自分は恵まれているな、と思います。

 生き方もそれぞれ多様だと感じました。社会を変える活動をしている、いわゆる社会起業家という人たちとたくさん出会ったのですが、彼らが取り組んでいる問題は本当に大変なことです。自分の人生をかけてやっているわけですから、その決断は本当にすごい。そういう決断をする力はまだ自分にはないな、と感じました。将来的に社会を変えるようなことをしたいと思っているので、今後もっと大学でも勉強したいし、働く時の指針としても持ちたいと思います。

 もうひとつは、大学って何のためにあるんだろう?ということについてずっと考えています。
社会体験をあっせんするのは大学の役割なのだろうか、ということは僕にはわかりません。とりあえず大学は学問を修めるところという結論だけ導きだしました。何を何のためにどう学ぶのか、ということをはっきりさせないと意味がないです。

 僕はまだ具体的なキャリアを描けていないのですが、これまで自分が活動してきたことを学問として学びたいというモチベーションがあります。学び方も、講義を受けるだけでなく講演会に行ってみたり、色々な教授と話したりしたいと思っています。

 社会を変える活動をしてきた中で、自分にはまだできないと思うことがある一方で、自分にしかできないと感じたこともありました。自分は学生で、大学のことや就職活動のことなど、自分にしか当事者として取り組めないことなので、そういうことを大学に通いながらでも卒業するまでに活動していきたいと思います。日本の社会問題について学生同士で議論して、それをUSTREAMで放送する「学生ヨル会議」や、就職活動のありかたを考える「職子屋」という活動を初めています。

 残り1年半の大学生活ですが、活動自体はカンボジアから国立(くにたち)へと身近になってきましたし、いきなり海外に目を向けるよりは、自分の身近なところで活動したいと思っています。身近な問題のほうが自分としてはモチベーションも高いですし、関心もあります。

 また、できるだけ就職後につながることを学びたいと思います。いまのうちから就職をちゃんと意識して、自分が行きたい方向、やりたいこと、キャリアをしっかり考えておきたいと思います。もちろん起業も選択肢に入れています。幅広い選択肢を持って人生を考えたうえで就職活動に望みたいと思います。

 最後に―――「社会を変える」「日本を変える」など、自分の活動として変えたいものはたくさんあるんですが、その前に僕は自分が変わりたいと思っています。自分にまだまだ足りないところもありますし、自分ができていないのに大学や日本に対して「変わればいいのに」と思うのはよくないとずっと思っています。今後どうなっても社会を変えられるような活動をしたいので、そういった仕事につく前に自分がもっと成長していきたいです。
                                                                          以上