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ギャップイヤー海外事情(米国編まとめ①)「高校卒業後、大学入学前で浸透が進む~ギャップイヤーはキャリアの選択肢」


湯上 千春(日本ギャップイヤー総研客員研究員)

 これまでJGAPでは「ギャップイヤー海外情報 米国編」として最近の米国でのギャップイヤー事情について取り上げてきた。ギャップイヤーが社会に浸透している英国に比べるとまだ限定的ではあるが、米国でもギャップイヤーは確実に広まっている。まずここでは米国の大学でのギャップイヤーの捉え方についてこれまでの「ギャップイヤー海外情報 米国編」で紹介してきた内容を少しずつ紹介する。

1.米国でも進むギャップイヤー志向
 ギャップイヤーの本場と言えば早い時期から広く学生にも社会全体にも浸透している英国であろう。米国では英国ほどはまだ社会に浸透してはいない。しかしギャップイヤー取得者も主流派ではないにせよ、米国のトップクラスの名門大学でも学生がギャップイヤーを経験することを積極的に推奨している。米国でもプログラム及び各種サポートを提供している大学や団体が増加している傾向がある。

2.名門大学によるギャップイヤー推奨
 例えばTIMES誌(電子版)には「大学に直接入学しない権利が魅力を増してきた」というタイトルで記事が掲載されている。入学延期制度を取り入れる大学の出現によって、これでまでのように高校を卒業してストレートに大学入学することが目指されるだけではなく、様々な経験をしてから大学に入学することが米国でも重要視される傾向にあるというのだ。米国で歴史ある名門ミドルベリー大学、ノースキャロライナ大学でもギャップイヤー取得の学生の成績はギャップイヤー非取得者よりも高いという統計がある。難関プリンストン大学でも9か月間のギャップイヤープログラム制度が導入されている。(1)

 さらに大学のプログラムだけでなく、ギャップイヤーを希望する入学予定者や学生へのピア・サポート体制が学生主体で整っている大学もある。ハーバード大学では
ギャップイヤーを経験した学生が中心になり希望者の相談、情報提供を行っている。同大学では1960年代からギャップイヤーのバーンアウト(燃え尽き)防止、修学の向上効果を認めており、入学予定者にギャップイヤー取得を推奨していることで知られている(2)。

 また大学が推奨しているのは入学前のギャップイヤーだけではない。難関大学であるハーバー・フォード大学のキャリアセンターでは卒業後にギャップイヤーを経験した多彩な人達による在学生のためのパネル・ディスカッションが行われている。入学前や休学中だけではなく、卒業後にギャップイヤーを経験することも進路を考えるための重要な選択肢として理解されているようだ。(3)

 110年の歴史ある名門コネチカット大学の大学新聞「デイリーキャンパス(電子版)」ではギャップイヤーがテーマとして取り上げられ、学生の将来に有効なポテンシャルを持つものとして議論されている。高校から大学に入学する期間がその後の人生に重要であるのにもかかわらず、何に興味があって何を勉強したいか自分でもわからないままに大学出願する学生が多い。しかし大学とはそもそも入学後から何を勉強するのかを探す場所であるべきなのかという疑問を投げかけている(4)。

3. 世界における市民意識を育む一環
 またミシガン州立大学では入学予定者のための短期ギャップイヤープログラムで2週間の南アフリカでのセミナーを取り入れている。異文化に身を置いて世界の問題について思考する体験がその後の大学生活に良い効果を与えると捉えられている (5)。

 さらにグローバルな視野を持って地球を一つの社会と看做してその一市民であるという感覚を学生が身につけて社会を改善していくことのできる人になるための教育の一環としてギャップイヤーに着目している歴史ある大学もある。ノースキャロライナ大学チャペルヒル校では入学予定者から選考された学生に半年間、仕事、旅行、奉仕活動を組み合わせた国際的なギャップイヤーに対して7500ドルの奨学金を提供している。この制度はは教務課と同大学の150年の歴史を持つ学生支援機関との共同で運営される。ここでも前述のハーバード大学のようにギャップイヤー経験学生で構成された団体による相談などのサポートが用意されているから頼もしい。

 こうした元々は英国を中心としたギャップイヤーの慣習が米国でも注目されている傾向をワシントンポスト電子版も取り上げている。大学側が入学延期制度を取り入れることによって、高校を卒業した入学予定の学生がギャップイヤーで様々な経験をしてから大学に入れるように入学を待ってくれるようになる。高等教育研究所のデータによると2011年は1.2%の新入生が入学延期制度を利用と推計している。(7)

 但し、こうした支援はすべての大学でまだ整備されているわけではなく、大学以外の団体が提供する様々なギャップイヤーのためのプログラムや支援も増加している。しかしインターネットの情報も様々な団体が教育目的以外に提供している場合もあるため、利用する際には安全のためによく注意を払って信頼できる団体をリサーチする必要がある。


Reference:JGAPホームページ掲載記事
(1)ギャップイヤー海外情報 米国編 2012.10.06
TIMES誌(電子版)2012.10.05
(2)ギャップイヤー海外情報 米国編 2012.07.15
 ハーバード大学就職課http://www/hcs.harvard.edu/gap-year/index.html
(3)ギャップイヤー海外情報 米国編 2012.11.08
ハーバー・フォード大学キャリア・デベロップメントオフィスhttp://cdoapps.haverford.edu/resources/events/index.php?calID=799 
(4) ギャップイヤー海外情報 米国編 2013.03.21
デイリーキャンパス (電子版) 2013.03.05 http://www.dailycampus.com/commentary/opinion-gap-year-potential-could-offer-students-a-lot-more-1.3004035 (5)ギャップイヤー海外情報 米国編 2012.09.06
     ザ・クロニクル誌(電子版) 2012.09.03
(6)ギャップイヤー海外情報 米国編  2012.02.14 ノースキャロライナ大学教務課:
http://www.admissions.unc.edu/globalgap/
(7)ギャップイヤー海外情報 米国編 2012.10.13
ワシントンポスト(電子版) 2012.10.12