ギャップイヤー海外事情(英国編まとめ)「ギャップイヤーは、よき"慣習"から"高等教育人材育成装置"のステージへ!」
藪内 達也(日本ギャップイヤー総研客員研究員)
これまでJGAPでは「ギャップイヤー海外情報 英国編」として最近の英国でのギャップイヤー事情について取り上げてきた。英国は比較的、ギャップイヤーが社会に浸透している場所である。ここでは、英国のギャップイヤーに対する考え方や実例を紹介していく。
1.英国ギャップイヤー取得者の現状
英国の大手旅行保険取り扱い会社の調べによると、英国内で年間25万人にのぼるギャップイヤー取得者(英国の学部大学生総数は約130万人、3年生大学が多いので一学年は1万人強と推定される)の半数は、大学入学前の高校卒業生であることが分かっている。A-level(資格試験の一種。
一般に日本の大学の一般教養レベルの内容が含まれる)資格を持つ高校生の両親への調査では、35%の親が「ギャップイヤーは、子供に取って価値ある成功可能性(worthwhile prospect)を秘めており、勤労体験や外国語習得を支援したい。そして履歴書(CV)を向上させると思う」と回答した。ギャップイヤーは、親元・教員から離れた就業体験・社会体験であり、いわば個を確立するための"社会修行"と捉えることができる。そのため、ギャップイヤーがよき"慣習"から、"高等教育人材育成装置"と認められる過渡期と考えることができる。
また、大学入学前にギャップイヤーを取得する人が、総人数の3割を超えているのには、理由がある。
まずは、わけもわからないうちに、「どの大学で何を勉強するか」を選ぶ難しさである。ギャップイヤーを取得すれば、たとえば一年間働くことによって、学費の工面に困らずに済む。また、仕事に就くということはどういうことかを知ることができるし、それゆえ、将来職場環境で生じる困難に対し、若いうちから心の準備もできる。
ここでは、大学入学前のケースのみを取り扱ったが、このように英国では既に、「ギャップイヤー」という言葉、概念が市民権を得ているのである。
2.ギャップイヤー取得を後押しする環境
英国が「ギャップイヤー先進国」であるゆえんの一つに、ギャップイヤーの取得を後押しする環境が整っていることをあげられる。
例えば、北アイルランドに位置するアルスター大学。2万人規模のマンモス大学では、キャリア開発センターが、提携旅行会社の「英語をタイで教える"ギャップイヤー"有給プログラム」の紹介をしている。このプログラムでは、一月最低600ポンド(約9万円)の収入が得られることができ、かつプログラムを通じてTEFL(外国人に英語を教える資格)が取得できる。更に研修と宿泊施設もついているのだ。
このパッケーには、オプションで選べるプログラムもあり、就労体験だけでなく参加者同士の交流等も楽しむことができる。
注目すべきは、英国ではこのような「ギャップイヤー・プログラム」に対し、大学のキャリアセンターが関与し、学生や入学見込み者に情報提供しているということだ。換言すれば、「ギャップイヤー」もキャリア(真の意味で生き方・働き方の道筋)であり、日本のように民間企業への就職の便宜を提供するのが主務である狭い業務範囲とは明らかに違う。
もう一つ注目に値するのは、ギャップイヤーには費用がかかり、富裕層が中心となって取得するものと短絡的に考えがちだが、そこは智恵と情報を駆使すれば、いろんな道があるということだ。ここで紹介したプログラムを使えば、幾らか費用はかかるが、場合によっては貯金することすらできる。
また、英国の大卒求人サイトでは「ギャップイヤー支援団体」の主要50団体のリストを掲示している。団体ごとに強い分野は異なっており(海外ボランティアやインターン、語学留学等)、それらから多様なアドバイスとプログラムを示されることも、英国がギャップイヤー先進国であることを示す証左となっている。
Reference: JGAPホームページ掲載記事(46記事):http://japangap.jp/info/cat44/
(1)ギャップイヤー海外情報 英国編 2013.2.16
(2)ギャップイヤー海外情報 英国編 2012.8.19
(3)ギャップイヤー海外情報 英国編2012.10.11

