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海外ギャップイヤー事情 米国編: 「CBNテレビが6分で伝えた女子ギャップイヤー生の1年~ギャップイヤーで若者は限界を超える」の巻


 8月23日、米国のCBNテレビが、現在増えている高校卒業後に世界に飛び出した3人の「ギャップイヤー生(gap year student ※注)」を特集した。(※英国でも高校を卒業して、大学入学前にギャップイヤーを取得する青年を学校の所属なしでも同様にこう呼称している)

 「高校を6月に卒業した若者は、そのほとんどが秋には大学に進学するが、代わりに1年間の休みを取る学生も増えてきている。それをギャップイヤーと呼び、米国トップ大学のハーバードやイエール、プリンストンなどもこれを推奨している」の口上で番組は始まる。

 この時間にして6分超の特集は、自分にとって居心地のいい場所(comfort zone)を離れ、ほぼ1年にわたって地球を旅した、3人の19歳のギャップイヤー生をフォーカスしていた。

 女子3人はテキサス州出身のレイニー・ダグラス、オクラホマ州のクリステン・ヘンドリクス、テネシー州出身のキャラ・クレンショー。くれんショーは「高校が終わって、私は教室の中にいることにちょっと疲れていました。考えてみれば13年間も学校に通って、今度はすぐ大学に通うようになっているのだから。そこから抜け出して、今のうちに世界を見てみたかった」とインタビューに応える。

コロラド
 3人は経験なクリスチャンでもあり、コロラドで活動しているキリスト教団体「キャンプ・キブ」に申し込みをした。この団体は、学生が高校と大学の間にギャップイヤーを取ることを推奨している。
「高校と大学の間のギャップイヤーは、子供が初めて家を離れ、自分が本当は何になりたいのかをつかみ始める時だと考えています」キャンプ・キブでギャップイヤー・プログラムを取り仕切っているルーク・パロット氏は語り、次のように続ける。
「3大陸、6カ国で6つの体験―これまで見たこともなかったような世界を見る機会。大学に入って卒業して、そして就職する人はこういう風に世界をみるチャンスはないのです。子供たちには、1年かけて、一生のためになる投資をしているんだよ、と伝えています」
1996年以来、1000人以上の若者がキャンプ・キブに参加しているという。

 このギャップイヤー・プログラムの始まりは1週間のオリエンテーションだった。
「自然豊かな美しいサンジュアン山とコロラド西南部の各地に連れて行って、山歩き、ロッククライミングやマウンテンバイクを体験してもらう。しかし、午前中には世界観を養うための座学を組んでいます」と言う。


デンバー
 取材は続き、少女たちは、デンバーの街角にいた。
「私の研修は、ホームレスの子供たちとの活動でした。」クレンショーは話した。彼女たちは、ほぼ3カ月の間、ケアを必要とする子供たちに教育を行い、社会から隔絶してしまった人々に手を差し伸べる活動のキリスト教団体で働いた。

 3人とも、このギャップイヤーを取ることに関して、家では反対を受けた。
「父からは、いつもギャップイヤーは危険と刷り込まれていました。私を保護することに躍起で、私を家にいさせたかったみたい」「同級生にも1年遅れになっちゃうね、と言われて、私がなぜギャップイヤーをやっているのかわかっていないみたい」ヘンドリクスは言う。
「確かに、私は何をしてるんだろうって疑問が湧きあがってくる時はあります。特に、友達は皆大学に行ってしまった時とか」クレンショーも言う。
 しかし、3人ともそれには負けることはなかったと言う。やはり、"居心地のいい場所"から抜け出したかったのだ。
「私は敷かれたレールの上を歩いてきていて、それをやめたかった」「やりがいのあることをやってみたかったし、自分を試してみたかったし、本には書かれていないことを勉強したかった。」ダグラスは言った。


ハイチ
 次の挑戦の場所はハイチ、毎日8千人の児童に給食を提供する組織で働いた。
孤児院を訪問し、食事の配給をして、医療活動を行い、合間に他の課題もこなし、3人は多忙を極めた。
「アメリカでの暮らしは井の中の蛙。世界が本当はどんな風なのか、国内では見えてこない。けれど、実際に訪れてそこを知ることで、世界はどんなに大きいかわかりました」とヘンドリクス。それからの数カ月は、アフリカのルワンダとタンザニアで、現地のキリスト教信者と典礼を行いながら、数千マイルを旅した。
「子供たちは辺境の地に連れて行かれた時に、一番神の存在を実感できる、と確信しています」「子供たちが勉強するにあたって、教室は文化と辺境の地の共同体にあり、この場合の教授は、いわば3人が仕えることになる現地の人々」とパロット氏は言う。


キリマンジャロ
 その後、少女たちは、アフリカの最高峰であるキリマンジャロに登る機会も与えられる。
「今夜、頂上にアタック」が決まると、3人はテントの中で、ハイテンションになった。
山頂にたどり着いたのは、クレンショーにとっては霊的な体験だったようだ。「登っている最中、自分はどんなにちっぽけなのか悟りました」という。


インド訪問そして最後の寄港はフィリピン
 次の行き先はインドだった。十億以上の人口を抱え、極度の貧困の存在する、ざわめいた国へ。3人とも、インドで貧しい人たちと典礼を行ったのが一番大変だったと言う。
ダグラスは、インドの信者が信仰によっていつも迫害を受けても忍耐を続けていることに特に心を動かされた。「私はアメリカではずっと信仰の自由があって安全な場所にいましたが、インドでは、信仰の自由を当たり前だと思ってはいけないと思い直させてくれた」と心情を吐露した。
 最後にフィリピン奥地の村へ行き、衛生と健康に関するプログラムを受けた。

始まりからほぼ8か月、コロラド州デンバーからハイチ、ルワンダ、タンザニア、インド、そしてフィリピンの村までやってきた。
彼女たちにとってこれは長い人生でもそれを変えるような経験だったろう。


総括
 「ギャップイヤーをしたこの8カ月、神様を身近に感じた」とクレンショー。
「聖書の中には"普通の生活"っていう記述はなかった」とダグラスは言い、ヘンドリクスは
「私は、自分のギャップイヤー体験を多くの人を伝えていきます。そして、ギャップイヤーを通して学ぶことができた楽しさと思いやりの心を他の人にも是非経験してほしい」とまとめた。

 つい先日コロラドに戻って行われた終了式をもって、彼女たちのギャップイヤーは完結した。9月には、3人の若者は、1年遅れだが、それぞれ大学に通い始める。


(文・吉武くらら @ドイツ)

JGAPギャップイヤー総研

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