海外ギャップイヤー事情 英国編:「大学卒業者が"新ギャップイヤー"を選び、外国で次の学位取得というトレンド」の巻
9月になって、英国の「ザ・テレグラフ」紙に、「大学を卒業して、"新ギャップイヤー"を選択し、海外で次の学位を取得」という見出しの記事が出た。これは何だろうと読み始めると、「新ギャップイヤー」の正体は、本業である学究を"飛び出し"て、社会体験(ボランティアや課外留学)や就業体験を意味する本来の"ギャップイヤー"ではなく、英国の若者が、国内の大学や大学院の学費が高いので、他の欧州の大学院に"飛び出し始めた"ということがわかった。
記事によると、英国・高等教育統計局の発表で、2012年には少なくとも1590人の学生が、海外へ移って学業を継続した。大学院生のうち、こういった進路を取る者の割合は2011年よりも増加しており、今年はさらに増加すると予測されている。
英国では、修士課程取得(1~2年)には、3,000ポンド(45万円)から始まり、高いところではオックスフォード大学でMBA(経営学修士)を取る場合に41,000ポンド(615万円)かかる。
一方、ノルウェーやスウェーデンなどの北欧の国々では、EU(欧州連合)とEFTA(欧州自由貿易連合)加盟国の国民は授業料が無料となるので、英国民にもこれが適用される。
また、主にヨーロッパ圏で、授業を全て英語で行うインターナショナル・コースのある大学数は、2002年の560大学から、最新の数値で2011年には約3700大学まで急増した。
特に、スウェーデンは英国人大卒者の間で人気の高い行き先であるが、英語で授業の行われるコースが現在700ある。一方フィンランドでも2007年には英語による修士課程は42だったのが、英語での修士課程は246コースもある。
フランスとオランダでは大学院教育が手厚く助成されており、フランスのある名門大学の修士課程では、授業料は年間225ポンド(3万4千円)しかかからない。
オランダのマーストリヒト大学では近年修士課程に在籍する英国人学生の数が10倍になった。また、年間授業料が約500ポンド(7万5千円)のベルギーには英語で行われるコースが252コース存在する。
今年に入りフランス政府は、大学の授業を英語で行ってもよいとする法律を、フランス語がおびやかされるという反対を受けながらも可決した。それまでは、1994年に成立した法律によって、大学内では外国語以外の授業はフランス語で行わなければならなかった。
例えば、パリ・スクールオブエコノミクスの修士課程で公共政策と開発学を学ぶと、授業料は140ポンド(2万1千円)。ロンドン・スクールオブエコノミクスで同様のコースに通う場合には25,000ポンド(375万円)かかる。
「小規模で活発な意見交換ができる授業というコースの魅力と、パリのような刺激的な街に住めるというのにつられて修士をパリで取ることにしました。」と言う学生もいる。
パリにあるフランス国立科学研究センターで博士課程の英国人学生も、英国から他国の留学を勧め、新しい言葉と文化に飛び込むのは大変だったが価値あることだったと言う。
スウェーデンの文学と文化の修士課程に出願しようと思っているある学生は、スウェーデンの文化や暮らし方に魅力を感じている。「お金もうけや労働市場で使える人間を作る事だけに重点を置くのではなく、スウェーデンの大学は、家庭の経済状況に関係なく、人を育て、クリティカル・シンキングのやり方を教えている」と言う。
また「家庭が裕福でない学生にとって高等教育がどんどん手の届かないものになってきている、また、大多数の大学が教育よりもお金を重視しているような英国ではほとんどありえない」と付け加える。
大学卒業後のキャリア支援を行うサイト運営会社の社長は、「企業は国際経験のある応募者を求めるようになってきているので、英国から留学をした場合、その便益は就職活動の時に受けることができる」と言う。
大学院の授業料は安くない。修士課程に進みたいが学費の心配をしている学生は数多くいる。これは英国で現実に起こっていることだ。今後、就活市場でも、"勇気ある少数派"である他国での修士号や博士号取得者が有利に働くとなれば、より注目されることだろう。
日本でこの文脈で考えると、アジアで修士号、博士号取得ということか。
※著者注:1ポンド=150円で換算。
(文・吉武くらら @ドイツ)
JGAPギャップイヤー総研
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