ギャップイヤー・ジャパンからのニュース・お知らせ

海外ギャップイヤー事情 英国編:「ギャップイヤー生が産業界での1年インターン・プログラム「Year In Industry(YINI)」の価値を語る」の巻


 英国には、高校卒業後、大学入学前の1年を利用した産業界でのインターンをテーマとしたギャップイヤー・プログラム「Year In Industry(以下YINI)※直訳すると、"産業界で1年"」がある。1年間に毎年750人ものギャップイヤー生(gap year student、ここでは、大学入学前の高卒者の意味)が大々的に本格的インターンを行う。業種は、工学系、科学系、技術系、IT、eコマース、一般営業会社など英国トップ300社に現れるような企業で、ロレアルやシェル、ブリティッシュ・エネルギーなども含まれる。それぞれCV(個人のアピールポイントなども入った本格的履歴書)を送り、選抜される。

 今年も9月に、大学入学前に産業界でギャップイヤーをした学生にとって、1年間の頑張りを評価されるクライマックスがある。非営利組織であるEDTが主催するYINIプログラムの参加者約500人のうち、今年は9人がYINI賞に推薦された。この賞は、仕事を通して最も大きくビジネスに貢献した学生に与えられる。授賞式は週19日(木)にロンドンの王立工学アカデミーで今開かれる。

 YINIプログラムでは、工学、理学、IT、電子商取引、商取引、マーケティング、金融、物流などの会社でインターンシップをすることができる。英国中の会社から学生にぴったり合う会社が選ばれ、学校の年度に合わせて、基本的に9~12ヶ月の間企業に配属される。

 このプログラムは、工学部と理学部に翌年進学するギャップイヤー生に特に人気である。

受賞者は一体どん1年間を過ごしてきたのだろうか。気になってくる。このギャップイヤー・プログラムに参加した3人の足取りを探ってみる。

ロールス・ロイス社で就業体験した男子ギャップイヤー生
 ある男子のギャップイヤー生(バース大学工学部入学予定)は、ノッティンガムシャー州のロールス・ロイス社で働いた。
「私は、ロールス・ロイスの製造部門で、タービンのサプライチェーンに関わる仕事をしていました。ここでは、エアバスA380やボーイング787ドリームライナーにも搭載されているようなジェットエンジンの、重要な部品を作っています。そこで、新設する工場のためのプロセス改善とコスト削減をやっていました」と言う。「高校時代は、工学のどの分野を勉強したいのか自分でもよくわからなかった。今回メーカーで1年間働いてみたら、あまり知らなかった色々な分野に触れることが出来たし、進路決定の参考になる情報も得ることが出来ました。幅広い分野の製造に関する知識や工学的考え方が沢山身に付き、チーム作業、組織の中での動き方やスムーズな人間関係についても得るものがありました」と語る。

 「職場の環境にはすぐに慣れました。自分で決定を下せる自由と、自分の考えやチームへの貢献を他人が評価してくれるという経験は新鮮なものでした」「素晴らしい1年を過ごしました。工学部に進学しようとしている人は全員、入学前にYINIプログラムをやるべきだと思います。実際の会社で実際の問題に取り組むことは、学士を取るための予習と準備に最適です」


プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社で働いた女子
 このギャップイヤー女子はニューカッスルのP&Gで全く新しい衣料用洗剤の開発に携わった。
彼女ははオックスフォード大学で人間科学の勉強をする予定だったが、産業界で1年過ごせてよかったと言う。
「この経験から、職場で活躍するために必要な方法論とスキル、特に自分の仕事を他人に伝え、売り込む能力が身につきました。大学やその先のキャリアで自分の役に立つだろうと思います」と言う。

 「学校を出て仕事をするという変化に適応するのは割と簡単だと思いました。確かに、始めたばかり頃は、いろいろ難しかったですが、親切な同僚と、多くのなインターン仲間の手助けのおかげで初めの数週間からうまくやっていくことができました」と続ける

 「興味があって、実体験から多くのものを得るために仕事をしてみたい人たちには、YINIを本当にお勧め。インターンシップで私はすべてのものを、あるいは、それ以上のものを得ました」


テクノロジー・パートナーシップ社で活躍した男子
 ハートフォードシャー州に本社を置く、テクノロジー・パートナーシップ社で就労体験をそいた男子学生(ケンブリッジ大学で工学を専攻予定)の仕事は、新しい反射防止膜技術の開発による、市場参入の可能性調査だった。

 「私は大学の出願手続きの途中で志望コースを変更したので、来年出願し直すことになるんじゃないかと懸念していました。その時に、予備のプランとしてYINIを最初に見つけました」「けれど、詳しく説明を読むうちに、ぜひこのギャップイヤーをやらなくてはと思いました」

 「私の心を動かしたのは、1年間の就業経験が得られること(産業界でギャップイヤーをやっていない人に比べて、将来専門職に就ける可能性は3倍になります)、工学は本当に自分のやりたいことなのか確かめられること、そして、私がなりたいと思っている、公認技術者の資格取得に役に立つことでした。どれも、いい給料を得ることにつながると思う」
「仕事は本当に楽しかったですし、とても充実していました。新しい友達ができたし、ここでの経験は大学卒業後の就職活動に有利になるでしょう。会社にとって、1年の就業経験は、成績で1番になるのと同じくらい重要なようです。私はYINIに参加したのを、これまでの人生で一番良い選択だったと思っているので、応募してみることを薦めます!」

 最後に、97%の学生がYINIに参加すると将来就業力が向上し、CVもアピールできると言われている。日本でも経団連や日本貿易会傘下の企業が、近い将来「ギャップイヤー生」を半年なり1年なりの期間、インターンシップで迎えるということは考えられないだろうか。

(文・吉武くらら @ドイツ)

JGAPギャップイヤー総研

※「海外ギャップイヤー事情」70記事の一覧リスト(右ナビ)→http://japangap.jp/info/cat44/