海外ギャップイヤー事情 米国編:「ギャップイヤー・プログラムのCity Yearは、競争率5倍の難関で、貧困層の学校に派遣され、社会貢献して月収10万円!」の巻
10月4日付ニューヨーク・タイムズに「金がかかっても、高校と大学の間にギャップイヤーを」という記事が教育面に掲載された。
米国は秋入学が主流で、大学1年生になって1ヶ月ほど経ったが、大半の同級生と同様、寮生活、授業や自分で洗濯をする事にも慣れる頃だ。しかし、中には南米にボランティアに行ったり、イスラエルへ行く準備をしている若者もいる。
彼らはギャップイヤー(高校と大学の間に設けるブレイクで、昔から秋から)をやっている。ギャップイヤーを取る学生数についての全米規模の統計は存在しないが、その人気が高まってきていることは疑いようがない。ギャップイヤー・プログラムを提供している法人の数も増加しているようだ。
例えば、米国ギャップイヤー・フェアは、最初に開催された2006年当時は、高校での説明会は7回開いただけだった。当時参加したのは約10社で、来場者は数百人。それが今、1年間でフェアは28都市30会場に拡大し、約40の団体と2,500人の生徒・学生が参加するようになった。説明会は主に1、2月にあるが、今年は35回開かれ、50の組織と約4,000人の学生が参加した。
なぜこんなに関心が高まってきたのか。長年ギャップイヤーのコンサルタントをやってきたホリー・ブル氏は、英国のハリー王子、続いてウィリアム王子が経験したことが大きいという。
「あれは、イギリスからのある種の宣伝でした」ブル氏は言う。彼女が代表を務めるインテリム・プログラムセンターは、1980年からギャップイヤーのコンサルティングを行ってきた。
ハリー王子のギャップイヤーは高校と士官学校の間の2年。オーストラリアで農場の仕事を勉強し、若い王子が馬に乗っている姿は英国メディアをにぎわせた。
英国のギャップイヤーは米国に比べてゆるく、組織化されていない傾向にあり、しばしば、「ビーチで酔っぱらって終わり」とも評される。そう言うのは、ギャップイヤーのプログラムに基準を設けて認可を行う、米国ギャップイヤー協会のイーサン・ナイト代表だ。
しかし、英国流はたいてい安く済む。そしてこれは重要なポイントだ。米国のギャップイヤー・プログラムは営利目的のものとそうでないものが入り混じっている。費用は、大体3カ月で1万ドル(100万円)以上かかる。これらをいくつか組み合わせると、大学に1年分の授業料を払う金額とさほど変わりない。(JGAP評:City Yearも後述するが、米国には"平和部隊"等給与や奨学金が支給される公的ギャップイヤー・プログラムが多数育ってきていることも忘れてはならない)
また、親が費用負担して、バックパック、徒歩旅行と運転の装備、その他の費用を持ち、プログラムの参加費を支払うケースもある。
プログラムの参加費は、ベリーズでの6週間のサンゴ礁保護活動(4500ドル)、オーストラリアでの11週間の野外活動プログラム(14,850ドル)と飛行機の切符代(5000ドル)で「年間授業料の半分」になるといった具合だ。
しかしながら、ギャップイヤー生のほうは、その途中から、有機農場で部屋と食事を無料で提供してもらいながら働くなどよくある。
誰でもギャップイヤーをやることができる。それは1カ月であってもいいし、何歳でやってもいいのだが、それはたいてい、高校と大学の間に休みを入れることにしたティーン・エイジャーに対して使われる。そしてほとんどのプログラムも彼らを対象としている。
多くの場合、既に彼らは希望する進学先から入学許可を得ており、ほとんどの者にとって、入学を1年遅らせることは特に問題ではない。
全米ギャップイヤー・フェアには、現在ではCity Yearの担当官も来ている。City Year は全米国内の25の学校に17~24歳の若者を派遣し、低所得層の多い地域での中退率を下げるために活発に活動している団体だ。
例えば、ニューヨークのイースト・ハーレムにあるマンモス校に派遣されると、多様な人種で、学力格差を目の当たりにするだろう。数学と理科の教師としてフルタイムで働いて、年間12,100ドル(約120万円)の給料をもらえる。
お金のためだけなら、他のバイトや仕事のほうがよいわけで、このギャップイヤー・プログラムに参加することは、金目当てではないだろう。派遣された多くのギャップイヤー生は「自分たちを必要としている」と感じる。さらに、1,700時間以上働いた場合は、5,500ドルの奨学金を受けられる。
このプログラムの帰還者は、必ずしも後に教育の道に進むわけでもない。しかし、身に付けた協働作業や時間管理は、今後の人生において、大変な状況を乗り越える力がつき、どんな職業に就いても役立つだろうと考える人は多い。
このCity Yearに参加することは、大学出願することちょっと似ているのかもしれない。資金の3分の1をAmeriCorps(アメリ・コー)という連邦国家的社会貢献事業から提供されている。City Year副採用部門長のメラニー・ブレナンド・ミューラー氏は、採用するのは5人に1人程度であり、昨年から志願者の数が急増し、今年の実際の参加者は2700人であったと言う。
親の中には、ギャップイヤーを将来に対しての投資と考える者もいて、ギャップイヤーは、贅沢ではなく、スキル習得期間と捉えている。ニュージーランドで10週間かけてスキー・インストラクターの資格を取らせ(講習、飛行機の切符、宿と食事で12,000ドルかかった)、そして冬にはユタ州のディアバレ―で働いてかかった費用を取り戻させた例もある。
注意したいのは、親はギャップイヤー生の状況把握を完全にしたい。しかし、これは残念なことで、1年間完全にプログラム化された指導者主導のものでは、何かを失うことになる。親は子供が評判のよいギャップイヤー・プログラムに従事してほしいと考える。
だから、プログラムの評価認証のアメリカ・ギャップイヤー協会が成立する。それは安全性など54ページにわたる基準がある。これまで証明書を発行するような連邦機関はなかった。「ギャップイヤーには、多くの道があり、やる立派な理由もある。しかし、「生還後、よりよい大学に入学する」という期待は持たないほうがよいと、専門家は釘を差す。
(文・吉武くらら @ドイツ)
JGAPギャップイヤー総研
※「海外ギャップイヤー事情」70記事の一覧リスト(右ナビ)→http://japangap.jp/info/cat44/

