ギャップイヤー・ジャパンからのニュース・お知らせ

海外ギャップイヤー事情 米国編:「就職もろくにできなく価値のない大学の対抗軸という大義で、ギャップイヤー・プログラム提供のNPOを創ったアンカレッジ(Uncollege)創設者はかつて不登校!」の巻Uncollege 図表.jpg

高等教育変革として、大学に行かず、自分の教育を切り拓く目的のギャップイヤー・プログラムが出現
 米国にあるアンカレッジ(UnCollege)ってご存じであろうか。語呂はいいが、やってることは先鋭的で、文字通り「大学否定」の社会運動体。ひと言で言うと、"a social movement designed to help you hack your education" つまり、「高等教育を切り拓く人を支援する社会運動体」を指す。

 デイル・J・ステフェン( Dale J. Stephens)は、長らく不登校で自宅やフリースクールで学習をし、高校を卒業した後に、アーカンソー州コンウェイのヘンドリックスカレッジに入学した。そこで、彼は大学生活にフラストレーションを感じ、最初の1学期はそれら問題点について考え続け、それを記録することに注力した。

 冬休みが明け、デイルは、不登校仲間でダートマス大学から逃げ出したレベッカ・ゴールドマンとその不満について話し合った。話の中で、ふたりは違う大学に入学したにも関わらず、まったく同じ不満を抱えていることがわかった。

 熟考した後にデイルの出した結論は、大学教育に対するふたりの不満はたまたま互いが通っている大学のせいなのではなく、高等教育そのものに対する不満で、在宅学習の時に比べ、何も学んでいないと感じたことからきている。その後も、ふたりはメールで意見交換をし、レベッカは、「自分で自分の大学を作ればいいんだ」と結論づけた。

 デイルは不登校出身として、レベッカが考えたアンスクール生のための大学を実現させようと2011年に立ち上がる。ちょうどその年、若手社会起業家のためのスイール奨学金(Thiel Fellows)が誕生した、これは、世界で1億3000万人以上のアクティブなユーザーを誇るインターネット決済サービスのペイ・パル創業者のピーター・スイール氏が2011年5月したものだ。20歳未満で大学に所属していない「社会変革の若者」を対象に、ひも付きなしの給付奨学金10万ドル(1千万円)を資金提供(1期生20名)するというもので、デイルは見事選出され、この"ギャップイヤー・プログラム"の運動資金を手に入れた。


学生ローンがクレジットローンの債務残高より高い米国
 デイルはアンカレッジという組織を「最高教育逸脱者(Chief Educational Deviant)」として率いて、「大学が成功の唯一の道だという概念を壊す社会活動」の一環としてギャップイヤー事業を思いついた。たしかに、米国の現状は、世界の大学ランキング100校に半分入っていても、就職が約束されたわけでもなく、覚束ない。学費は州立大学ですら、私立同様に600万円ほどかかり、国として、「学生ローン」の債務残高が1兆ドル(100兆円)を超えて、クレジットローンのそれより高くなってしまっている。

 これは歴史上初めてのことだ。だから、大学への投資価値ってあるのと考えている人が増えてきた。彼は2013年5月には、「教育をぶっ壊せ」(Hacking Your Education)も上梓したが、「大学証書」はもはや時代遅れと考える教育開拓者(hackacademics)の新しいトレンドを紹介している。デイルや多くの仲間がどのように教育を開拓してきたのか、そして読者もそれができると書いている。天才でなくとも、特別な動機がなくとも、大学の外で活躍することは可能だ。大切なのはもっと「好奇心、自信と根性」と言う。


ギャップイヤーの目標は、「独立心と主体的な学びの潜在能力を高めること」
 また、著書の中で、既に大学に入学した学生や大学に入学しないと決めた人に、貴重なアドバイスを贈る。教室の内外で、自分のための機会を作り出して自分のカリキュラムを組めることをデイルは教えてくれる。「あなたの夢が世界旅行でも起業でも企業内の昇進でも何であろうと、卒業するまでやらずに待っていなくても、それは今すぐ出来るのだ」と主張している。

 アンカレッジの1年間のギャップイヤー・プログラムの目標は、独立心と主体的な学びの潜在能力を高めること(The goal of the Gap Year Program is to significantly develop your capacity for independent, self-directed learning)と言う。

 「大学が実社会のための準備をしてくれないのは明らかだ。職のない大卒者が働き口を求めている様子を見て、私たちは、今日の労働市場で成功するためのもっとよいやり方があるのでは」とデイルは真剣に考えている。

 さて、大学教育への不満は日本でもよく聞くようになった。このような「革命的運動」は、いつか日本でも起こるのであろうか。

Uncollege2.jpg

(文・吉武くらら @ドイツ、JGAP客員研究員)

監修:JGAPギャップイヤー総研

※JGAPからのお知らせ
留学や進路、生き方やキャリアを一緒に議論しましょう!
1/15(水)18時~ JGAPエッセイ"フロンティア・フォーラム欄"オフ会 「米国・ブラウン大学 小谷篤信さんを囲む会」http://japangap.jp/info/2014/01/11518jgap.html

JGAPが「翻訳・広報(編集企画、校正等)」の2部門で、ボランティア・プロボノ募集!(2014年1月16日締切)http://japangap.jp/info/2013/12/1031.html


※「海外ギャップイヤー事情」80記事の一覧リスト(右ナビ)→
http://japangap.jp/info/cat44/