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海外ギャップイヤー事情 米国編:クラウド・ファンディングで、ギャップイヤーのための100万円を獲得した大学生の実力はスゴかった!」の巻大学.jpg
             

 米国東部のサウス・キャロライナ州に位置するチャールストン大学(私大リベラルアーツ、学部生1万人、院生1千人)の公式ウェブサイトに「コンピューターサイエンス専攻の学生がクラウド・ファンディングを使ってギャップイヤーのための出資を募る」という記事が4月に出ている。


 仮に、皆さんが大学を卒業したばかりだが、会社の戦力として働き始める前に、クリエイティブな想いを希求するために1年間のギャップイヤーを取ろうと計画している。そしてまったく見ず知らずの他人がその大きな可能性があるとみて1万ドル(約100万円)を支給してくれて、そのお金を好きなように使えるとしたら、どうするだろう。それは、どんな差し迫る問題を解決しようとするか? どんな関心事を探求するか? そしてどのように、その資金を使うだろう

 チャールストン大学でコンピューターサイセンスを専攻するミッシェル・フェリシアーノン君にとっては、実は絵空事ではなかった。彼は、チャールストン大学では初めて、クラウド・ファンディングのUpstar.comのサイトを使ってギャップイヤー資金を調達した学生だ。 これは物やアイディアに投資するかわりに、人物に投資するものだ。

 Upstar..comで集められたお金は様々な目的のために使われる。学校に行くための資金、学生ローンの支払い、新規事業の開始、何かを発明する等だが、落とし穴もある。それは、そのお金は受取人の将来の収入の一部が「前貸し」として貸与されるからだ。ミッシェル君の場合、この先の10年間、給料の1%を返済に充てる義務がある。

 同大学のコンピューターサイエンス学部のクリス・スター教授は、ミッシェル君の大学でのアカデミック・アドバイザーだが、彼が出資者に最終的に返金することは、彼がこのギャップイヤー経験から得ることや技術産業で彼が確立するプロフェッショナルな関係性に比べるとささいなことと言い切る。Upstar.comの使命は "身近な人が何かすばらしいことをやってのける"ために金銭的な支援をすることで、実際、ミッシェル君は素晴らしいことをやる準備が出来ているようだ。

 彼は現在CodeChef.comで米国27位にランキングしている。Code Chef.comはコンピュータ・プログラマーがコーディングの問題を解決する時間を競う世界的なオンライン・コミュニティーだ。世界の頂点にいる25,000人のコンピュータ・プログラマーのうち、Felicianoは、アマチュアながら既に、世界ランク1,060位だ。そして、若干21歳ながら、英語、スペイン語、イタリア語の三カ国語を話す。

 また、既に保険医療業界でアンドロイドのアプリケーションを開発したし、またMITとコラボして地質学調査のソフトウェアを開発するための大学内のチームにも参加している。しかし彼の可能性をもっとも示しているのが、彼がUpstartから集めたお金で購入しようとしている以下の品目リストだろう。

1.Google Glassグーグルメガネ(メガネ型ウェアブル端末)
今やほとんどの人がグーグルのビルトイン式の視覚ディスプレイのついたヘッドマウントコンピューター機器について知っているだろう。Felicianoはこれのアプリケーションを開発したいと思ってこの機器を買う計画だ。実際、ミッシェル君はグーグルがこの製品をベーター・テストにかけるときに召集された限られた人材の一団に入っていた。その当時はその製品に1,500ドル(約15万円)を出す余裕がなかったが、今はできる。

2.Oculus Rift Development Kit 
これは開発者向け(非消費者向け)の仮想現実ヘッドセットで没入型の3Dのゲーム体験ができる機器だ。これがあればゲーマーが実際のゲームの中に入ってゲームをしている感覚になれる。ミッシェル君はこの新しい機器のプログラムを開発しようとしている。未来派の人々はヘッドセットがいつの日か様々な場面(保険医療や宇宙探検、また軍備など)のアプリケーションに使える日がくると期待している。

3.楽器のチェロ
  ミッシェル君は子供の頃からチェロを弾いている。音楽は逸る心を静めてくれる、そして弦楽器について再び知識を得ることは、長くて強く張りつめたコーディングや問題解決に転用できると信じている。

4.大量ののホワイトボード用のペンキ
  ギャップイヤー期間中は経費を最小限に抑えるために、サウスカロライナ州・コロンビアの実家に戻ろうと考えている。そして彼の部屋の壁を全部ホワイトボードにするつもりだ。そうすると壁がノート代わりになり、メモも計算もできるスペースが増えて、より生産性があがる

 ミッシェル君自身高校時代はごく普通の学生だったという。ずっとコンピュータが大好きだったが、ビデオゲームの作り方を学習に時間を費やすより、ビデオゲームで遊ぶこと興じていたことを後悔している。以前、ロールプレイング・ゲームにこれまで何時間費やしたのか計算してみたところ、それは驚くべき数字だった。 なんと合計365日分、つまり人生の内、1年間をゲームに費やしていた。

 前述のクリス・スター教授はミッシェル君がまだコロンビアのスプリングバレー高校に行っている時から同大学に来ないかと勧誘していた。なぜなら彼は多才で誰よりも際立っていたからだ。
社会性を欠いた典型的な技術おたくとは程遠く、彼は性格円満で、話好きで、人なつこい人物だ。教授は彼のことを"博識学"と呼ぶ。
 
 ミッシェル君のような学生は、大学のコンピュータ・サイエンスプログラムの魅力になるという。なぜなら彼らのプログラムとのつながりは信頼性を生み、才能ある人々の特別な情報ルートをつくる手助けになるからだ。「もしミッシェル君を獲得できれば、彼を尊敬している人が彼についてくるだろうと、わかっていた」と教授は語る。

 弟のダニエル君も彼についてきたうちの一人だ。ダニエル君も今、同大学の1年生でコンピュータ・サイセンスを専攻していて、大変有望な学生だ。

 現在教授はコンピュータ以外に別の興味を持つ、コンピューターサイエンス科の学生を探している。「彼らはあらゆる違った観点から問題にアプローチできる。彼らはリベラルアーツや大学のような科学研究所でも成功しやすい」と話す。

 ミッシェル君の大学での体験が教授の説を支裏付ける。大学に来てから彼の知性と情熱に火がついた。彼はより学問的ことに集中するようになり、学生会活動に参加し、社交クラブにも入った。同じような考えを持ったコンピュータ・マニア達と意気投合し、そしてコンピュータ・サイエンスプログラムによって育成されてきた共同的な環境で成長してきた。

 ミッシェル君は既にグーグル本社の面接を受け、いつの日かグーグルで働くことを志望している。2013年に卒業した彼の友人のように。
 
 グーグルとの"縁"はここで終わらない。 かつてグーグルのCEOだったエリック・シュミット氏が創設したベンチャー・キャピタルのInnovation Endeavorsは、ミッシェル君がUpstartで資金を調達した時、1万ドルの大部分を出したのがこの会社だった。
ミッシェル君がこの1万ドルを使って、どんなギャップイヤーを送るか興味は尽きない。


文・JGAPギャップイヤー総研客員研究員 余田有子

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