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JGAP寄稿者短信:「キャリアセミナーで考えたこと:国際保健・国際開発を仕事にする人へ」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中)


Unite for Sight (http://www.uniteforsight.org/)というNPO主催のweb上での「キャリアセミナー」に参加してきました。魅力あるパネリストが議論する様子を特設サイトとカンファレンスコールでリアルタイムに追えるようになっていて便利でした。以下セミナーの内容とキャリアについての簡単な考察をまとめます。


「国際保健分野でのキャリアパス」というテーマでしたが、 他の分野を目指す就活生や、転職を考えている方・考えていない方にも、 参考になる点があると思います。

セミナーは事前に参加者から集めた質問に、 国際保健、公衆衛生分野で活躍している10人のパネリストが答えていくという形式でした。

パネリストは、Save the Children の前CEO, 元世界銀行の上級職員など豪華な顔ぶれから、現場で活躍するNGOの職員、建築やデザインの分野から畑を変えてきた人まで、とても多様でした。

以下、特に面白かった質問とその回答をまとめます。


Q1. 実務経験を得るための実務経験は、どうやって積めば良いですか?
①転用可能なスキルが身に付くならば分野は関連していなくても良い。
②無給のポジションにも目を向ける。得難い経験やネットワークを築けるポジションが有給とは限らない。
③海外ばかりに目を向けない。身の回りの課題に取り組むことが貴重な経験とスキルを養ってくれる。
④比較的小さくて新しい組織ほど、経験が浅くとも情熱のある若手を受け入れてくれることがある。
⑤選択肢を広く持ち、様々な機会を探る。

エントリーレベルの職やインターンシップでさえも、経験を求められることが多く、 国際保健や国際開発分野の学生にとって、この質問は共通の悩みだと思います。

周りにも一般企業で営業やマーケティングを経験してから、開発系のNGOに進まれた方は多いです。無給のインターンなどの求人を見ると、関連分野での経験よりも、ライティングやリサーチのスキルに重きを置いていることも多いので、①、②は同感です。

③について。確かに外に目が向きがちですが、自分の生活圏にも社会的な課題は存在するわけで、それに取り組むことで学べることも多いと思います。
④は少し疑問で、むしろスタートアップの段階ほど、一人一人に求められるスキルも高そうな気がします。一方で、立ち上げ時期だからこそ、経験以上に情熱や体力が重宝されるのかもしれません。


Q2. 大学卒業後は、ギャップイヤーを経験したほうが良いですか?
①ギャップイヤーを経験している学生ほど、視野が広い。
②考え方の軸があり、複雑な課題に立ち向かう際に、必ず助けになる。
③ギャップイヤーは必ずしも必要ではないが、進学を急ぐ必要はない。
④学部と大学院の間だけでなく、キャリアアップの過程でも、ギャップを設けることが大切。

周りの学生を観ると、①、②はまさに納得です。
一方、インターン経験のみで入学した僕が進学して良かったと思う点もあるので、
進学の準備が出来ているなら、待つ必要は無いと思います。

④については「専門性が高まるほど分野が狭まくなりがちなので、ギャップをあけて、スキルや経験を見直すこと分野外の機会を探ることが重要」とも言っていて新鮮でした。


Q3. 国際保健分野を目指すなら、大学院の学位は公衆衛生や国際保健、医療でないといけませんか?
①実務経験と同じく、学位も国際保健に関連している必要はない。
②どの分野でどのように働きたいかで、必要な学位は変わる。
③分野が関連している必要は無いが、修士号以上の学位は確実にキャリアの選択肢を広げてくれる。
④実務と学位の組み合わせが、自分自身のユニークなキャリアパスを築く。

 パネリストのキャリアパスが多種多様なことからも頷ける回答です。
ただ「修士も博士もお金で買える時代。お金で買えない実務経験の方が重要」という人も居ます。
つい最近の英ガーディアン紙の記事でも学位の重要性を説きつつも「修士号と実務経験の両輪が重要」とありました。
学位というライセンスしか持たないペーパードライバーは必要ないということなんでしょうね。


Q4. これからプロのキャリアを歩み始める若者へのアドバイスはありますか?
①ロールモデルをたくさん見つけて、彼ら・彼女らがどのようにキャリアを選択したか、理解する。
②定期的にキャリアパスを見返し、どんな経験とスキルがあり、何が出来るのか、何がしたいのか考える。
③キャリアパスは一つではない。ユニークな道を進むことは大変だが、先の見えない状態を楽しむことも大切。

僕が実際にお会いしてきた方々のキャリアパスも本当に様々で、似てはいても全く同じ道を歩んでいる人は居ませんでした。多様性を受け入れて、自ら道を作っていくことを恐れないことが大切なんだと思いました。先が見えない不安や、決断し切れないもどかしさから、暗くなることもありますが、
とても勇気づけられるアドバイスでした。


Q5. 履歴書(CV, Resume)を書く際のアドバイスはありますか?
①全く関連の無い経験は載せない。応募しているポジションにどう結びつくか一貫性を持たせる。
②「どこで働いたか」「どんなポジションに就いたか」よりも「どれだけの成果を出したか」が大切。できれば成果を数値化する。
③採用側が求める人物像、必要としているスキル、経験を踏まえて、書く。
④タイポはNG。

インターン先を決める際の基準としても、「どんな成果が残せるか?」「それは数値化出来るものなのか?」考えて選ぶと良い、とアドバイスをもらったことがあります。経験を次につなぐためにも、定量化は大切なんですね。


"あなたが下す決断が「あなた」をつくる。"

セミナーの最後に「人生には、常に次のステージがある」という言葉がありました。

キャリアプランとは「大学院に進学するまで」「就職するまで」といった、どこかで完結するものではなく、最期を迎えるまでの生き方、そのものを考えていくことなんだと思いました。

転職をせずとも、昇進や転勤をする度に、組織の中で求められる役割が変わります。キャリアチェンジの多い国際開発や国際保健に限らず、全ての人にとって、節目、節目に振り返り、決断をしていくことが大切なんだと思います。

決断について、Amazon のCEO ジェフ・ペゾスが、こんな力強い言葉を残しています。

"80歳になった、あなたが、あなたの過去を振り返るとしましょう。
その時に一番心に残っていること、思い出すことは、あなたが下してきた決断の数々であると私は信じています。"

望むと望まざるに関わらず、環境は変化します。
その中で、「どんな自分を目指すのか」これからも決断し続けたいです。


2012年7月8日付 フロンティア・フォーラム寄稿 No.75:「米国留学、国際NGOインターンを経て、バングラデシュ~国境なきコミュニティデザイナーを目指している私」 加藤遥平さん(当時、筑波大学5年) 
http://japangap.jp/essay/2012/07/ngo.html

ブログ:The Rad Visionary
http://yoheikato.weebly.com/1/post/2013/12/161.html