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JGAP寄稿者短信:「旅と自営業を通して知った『自ら営業しないこと』の極意 」

海外旅行で

  「自分が何もしていないのに声をかけてくる相手には注意せよ。逆に、自分が困っている時に声をかける相手は信用して良い」 という金言がありますが、これは本当によく言ったものだと思います。


  この法則が100%当てはまることはもちろんありませんが、大方の場合はこれに基づいているといっても良いでしょう。空港でのタクシー、広場での物売り、観光地でのツアー会社...。旅行ガイドブックを読んでいても、だいたいのトラブルはこういう場所で「相手に声をかけられ」たことがきっかけで起こっています。タクシーや買物でのぼったくり、ぼったくりツアーへの申込、慈善団体を装った募金詐欺など、事例を挙げると枚挙にいとまがありませんが、多くの場合「相手から近寄って」来ることが最初のきっかけとなることが多いです。(私も多々経験があります。)


 逆に、自分が道に迷った時に方向を尋ねる相手であったり、物を失くしてしまった時に助けてもらう人というのは殆どの場合が「善人」です。これも、私も幾度となく経験があります。


 もちろん、シャレになる程度の差額であるならば海外でぼったくられるのも良いことだと思います。それも海外での経験だと言えますし、そういう経験をするからこそたくましくなれるのも間違いではないでしょう。(私は余分に神経をすり減らすのが嫌なのと、自分が対価を払いたくないものにお金を払うのが嫌いなのでこういうことは極力未然に防ぐことにしています。)


 私がこの金言を耳にしたのは、何度か海外に出た後でしたが、始めて聞いた時はとてもしっくり肚に落ちたのを覚えています。

★★★

 と、ここから翻ると感じるのが「仕事で営業されるのはやっぱりあまり良いものではない」ということです。

 世の中にある数多くある職種の中でも、営業は多くの人からそれほど良いイメージを持たれていないと思います。多くの人が持っているマイナスイメージの中には、「自分が良いとも思わない商品を売らなければならない」「何回も頭を下げないといけない」「無謀なノルマと、それを達成できなかった時のペナルティの恐ろしさ」というようなものがあると思います。一口に「営業」と言っても様々な商品を売る営業があり、更に仕事も飛び込みのようなものからクライアントへの企画・提案等を含むものもあるため、まとめることは難しいのですが、それでもやはり、私も今の自営業という仕事を通して「積極的に営業するのはいやだな」と思うようになりました。

 これはなぜか。

 私は、先に述べた「旅の金言」に通じるものがある、と気づいたからです。

  海外で、自分は何もしていないのに執拗に何かを進めてくる、何か絡んでくる相手。これはやっぱり、疑り深いです。ぼったくられるんじゃないか、とか飲み物に変な薬でも入っているんじゃないか、とか、どこか変なところに連れて行かれるんじゃないか、とか。

 それと同じで、なんて言ってしまうと全国の営業職の方を敵に回してしまうことになりかねませんが、必要としていないのに営業されるのは嫌です。こちらとしては時間の無駄ですし、仮に必要としていたとしても、相手から商品さサービスの案内をする、ということは主導権は相手にある訳ですからこちらとしては、どこかで不利な条件になっているんじゃないか、と思ってもしまうかもしれません。

 (ちなみに私の前職は、それこそ飛び込みの営業職でした。営業そのものの必要性や面白みは分かりましたが、やっぱり実際にやっていると断られる方が圧倒的に多かったです。)

 では、一体営業の何が悪いのかというと、一番は「自分が主導権を握る(と相手が思い込んでいる)」ことにあると思います。


★★★

 よく、「本当に売れる商品は営業しなくても売れる」と言います。

 私も今、自営業をしていて肌間隔で分かるのですが、確かに「売れるのは自分で営業していないから」なんですよ。


 私は物の販売をしている訳ではなくサービス業を営んでいる訳ですが、最近はよく「翻訳をお願いします」「通訳をお願いします」という依頼に始まり、他の仕事も、自ら営業しなくても頼まれることが増えてきました。

 仕事として(自ら営業したのではなく)何かを頼まれると、
・相手は何かしら困っているので、必ず解決策が必要となる(=解決することが仕事)
・相手も「人に頼んでいるので」という気持ちがあるので、より高い対価を支払おうとする
ということが顕著に分かります。

 こういう要素が「頼まれた仕事」にはあるので、より発注先(困っている人)と受注者(私)の間で、ヒアリングができたりするのに加えて、解決策を提示することが可能です。

 何より、相手(ニーズ)が主体的に存在している訳ですから、付加価値が高くなりやすい。相手も「困っていたことが解決した」と、依頼先に対して思ってくれます。これが営業されて判断したことであれば、それほど「自分が困っていたことを解決してくれた」とは思いにくいかもしれません。



  結局のところ、旅でも仕事でも「困っている人が自ら判断して行動する」ことが、第一にあるべきだと思います。

 私はよく、分からないことや困ったことがあれば自分で調べて時には人に聞くこともあるのですが、そのプロセスの中では「この問題は誰に聞いたらいいのか(=この問題の専門家は誰だろう?)」という判断を、主体的に行っていることになります。

 自分で判断するということは、自分の中である程度の判断基準があるということですから、その判断は多かれ少なかれ根拠のあるものですし、そういう判断を自分で受け入れることが可能です。

 逆に、営業で「私は〇〇を担当します」と言われても、自分に必要ないこともありますし、そもそも自分で名乗る時点で、ほんまかいなと疑ってしまうのはある意味当然のことかもしれません。

 旅でも仕事でも、本当に潜んでいるニーズというのは「困っている人が主体的に行動すること」なのです。

 そういう潜在性をどうやって汲み取るかが大切ですし、頼まれたことを100%の結果を残して行えば、自ら営業なんてしなくても、お客さんはついてきます。


 旅でも仕事でも、それらを通して学べる本質は案外似通ったものなのかもしれません。


プロフィール:
藪内達也/英日翻訳家(観光翻訳)/翻訳×デザイン×Webのフリーランスネットワークを構築して、仕事製作中/現在は奈良を拠点に複数の仕事作り/「自分の人生の舵は自分で取る!」がモットー
詳しくはブログで(自分の考え方や哲学等について書き連ねています)

No17:「海外での出会いと発見が、僕を変えた」藪内達也さん(当時、神戸大学国際文化学部4年) -エッセイ集 フロンティア・フォーラム欄寄稿(2011年12月9日) http://japangap.jp/essay/2011/12/4.html

ブログ:
http://tatsuyayabuuchi.blogspot.jp/2014/05/blog-post_18.html