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JGAP寄稿者短信:「失敗を許容し、挑戦を奨励する文化は確かにここに存在する!」(中込 翔、ヒューストン大学博士課程)
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年末、アメリカの博士課程も早いことにもう1セメスター目を終えようとしている。最後の最後というところで僕はとあるプロジェクトで大きな失敗をしてしまっていることに気がついた。4ヶ月続いている実験においてデータの半数を失うかもしれないという失敗。個人でやっている分ならまだしもチームワークでやっている実験において任された役割を全う出来ないというのは非常に厳しい。

本気でやってきた。一切手を抜くことなくこれこそが唯一の解であると信じ、アプリを作り、コード書いて解析し続けてきた。

だけど、ダメだった。
そうだと気がついてしまった。
正直認めたくはなかった。
悔しさよりも仲間にこのことを打ち明けねばならないということが辛かった。


僕は重い足取りで研究室に向かい、恐る恐るこのことを仲間や教授に打ち明けた。

結果として僕はみんなに救われた。

もちろんロスはあったが色々話し合って挽回策を見つけつつあるし、何よりも教授のこの言葉には本当に救われた。

"At least you challenged! You'd never know if it's worth enough trying, unless you actually try doing it."
「君は少なくとも挑戦をした!実際にやってみるまでそこに価値があるのかなんて分からないものだ。」


アメリカでは「失敗を許容し、挑戦を奨励する文化がある」とは聞いていた。しかし実際に自分でこうして直に体験してみるまでそのことは「他人から聞いた噂」でしかない。そうしたものはこれから先へ進む時の原動力としては弱いし、何よりも自分自身の血肉になりえない。だからこそ実際にこうした環境に自分自身で来て、全力で頑張ってみることが重要なのだ。

僕は大きな失敗をした。それは事実だ。褒められるべきものではない。このことでチームに迷惑をかけることはもう疑いようのない事実だ。

だけどこんな僕の失敗を許容してくれたからこそ、これからよりいっそう頑張って取り返そうと意欲が湧くし、僕自身のチームメイトへの信頼感は非常に上がったし、これから第2、第3の失敗が起きないよう定期的にチームで話し合うきっかけにもなった。

今日を機に僕は同じような失敗をしないだろう。今回は僕の意思決定が遅かったことによる失敗だ。意思決定が遅れた理由としては「このままこの手法で行っていくのか?」という基準が曖昧になってしまっていたこと、かつそうした基準に基いていつまでに判断するべきだったのかというスケジュールを決めていなかったことに起因する。そのせいでずるずると同じ手法を用いたまま時間を浪費してしまった。


僕の好きな漫画「宇宙兄弟」にこんな言葉がある。

「本気でやった場合に限るよ。本気の失敗には価値がある。」
宇宙兄弟 107話「本気の失敗」


僕は今この言葉を自分の体験に重ねあわせている。漫画では分からなかったが、本気でやった失敗が価値を生むためには周りがそうした失敗を許容してくれる環境があってはじめて「価値」を生むんだと。


失敗することは決して気持ちのよいことではないし、同じような失敗を繰り返したり、単なるミス等による失敗は許されるべきではない。それに本気で取り組んでいた物事はその分失敗したときの衝撃も大きい。失敗した人はプレッシャーに押しつぶされそうになっているし、弱っている。そこから隠蔽や改ざんに走る人が少なくないのも理解できる。だからこそ許容してくれる仲間が、環境があるというのは大事だ。本気で取り組み失敗し、それを周りが許容してくれることではじめてその失敗した人は前に進めるし、前よりも一層推進力を持って進むことが出来るからだ。


ということで僕は自分の失敗を取り戻すためにここに残って年末年始研究を頑張ることにした。


日本の皆さん、またいつか世界のどこかで


2014年8月16日付
エッセイ集 フロンティア・フォーラム No.178:「自分の中に羅針盤を持つということ」(中込 翔さん、ヒューストン大学博士課程)http://japangap.jp/essay/2014/08/why-do-you-do-that.html

2014年10月10日付
JGAP寄稿者短信:「『君のキャリアパスを教えてほしい』と教授に言われた!」(中込 翔さん、ヒューストン大学博士課程) http://japangap.jp/info/2014/10/jgap-171.html

ブログ:「How I walk ゴメスの歩き方」:http://www.shonakagome.com/