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JGAP寄稿者短信:「永世中立国スイスと徴兵制度の残る ヨーロッパ諸国で日本の平和を考える」(檜垣賢一、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)フィンランド兵士.jpg

 平和とは。
永世中立国スイス と 徴兵制度の残る
ヨーロッパ諸国で日本の平和を考える。

 ヨーロッパ諸国には、未だに徴兵制度が採用されている国が多くあります。
2015年から始まったヨーロッパ周遊の旅で、訪れた国のうち、スイス、フィンランド、エストニア、ウクライナ(2014年秋復活)では未だに徴兵制度が残っています。このような国を訪問することで、日本の平和について考えるきっかけを得ることができました。

  誤解を招かないように先に述べておきますが、僕は日本の徴兵制度導入には断固として反対です。というのも、徴兵制度による若者の大切な時間の強制的な搾取は、著しい人権侵害であるからです。たとえそれが国家であろうとそのような権限はないというのが僕の基本的な立場です。

[日本を取り巻く環境の変化]
 今年で戦後70周年を迎えるわけですが、幸運にも日本はこれまで平和な70年間を謳歌することができました。それにはやはりこれまで近隣諸国を始めとした海外で日本にとって脅威になる存在がなかったことが理由の1つとして挙げられます。

 しかし、現在日本を取り巻く軍事的な環境は大きく変わろうとしています。  

  日本の近隣諸国では、国際社会に挑発を繰り返しながら核実験を繰り返し、核兵器保持国へ進んでいる国があり、また著しい経済成長に伴い軍事力も急速に強化している国が台頭しつつあります。つまり、これまでのバランスを保ってきた力関係が壊れようとしているのです。

 また現在の脅威は必ずしも国家だけとは限りません。時代の進歩に伴い国境を越えた移動が一層簡単になったこともあり、アメリカで9.11同時多発テロを起こした過激主義集団のようなテロリストが日本に矛を向ける可能性もあります。

 もしこのような国またテロリストが日本に矛を向けて攻撃してこようとしてきた際、日本はどのように対応するべきなのか、またそのような有事の際に備えて日本は今何をすべきなのか。「そんなことは絶対に起こらない」と言って目を背けてはならない問題なのです。もし起きてしまってから考えるようでは遅く、そんな無責任なことはないだろうと僕は思います。日本には1億2000万人のかけがえのない命があるのです。

 さらに戦後70年が経とうとし戦争体験者も急激に減りつつある中、憲法9条を含めた憲法改正の話もようやく現実味を帯びてきました。憲法改正の一票を投じ、日本の未来を決めるのは、日本国民である我々です。まさに今 国民1人1人が改めて平和とは何か考えていかなければならない時は熟したように思います。

 どのように日本の平和を守っていくのか。

・「たとえ周りの国が軍事力を強化してきても、日本は武力に頼らない平和国家として非武装を貫ぬくべきだ。それで国が滅ぶのであれば光栄なことである。」

・「有事の際に備えて、どのような状況にも対応できるほどの軍事力を備えるべきだ。」

・「必要最小限の軍事力は持つものの、外交や経済的連携を強めて、お互いに必要不可欠な関係を築くべきだ。」

などさまざまな考え方があります。これには絶対的な正解はありません。


[スイスとフィンランドの平和]
 永世中立国であるスイスの国民にインタビューをしてみると、面白い回答が返ってきました。

 スイス人:「スイスは確かに永世中立国です。しかし、だからと言って軍事力を持っていないかと言われればそんなことはありません。むしろ徴兵制度もあり、他の欧米諸国よりも強い軍隊を持っているという自負心もあります。第一次世界大戦も第二次世界大戦の時も、近隣諸国が攻められたり占領されていた中、他国からほとんど干渉を受けずに中立国を貫くことができたのも、それはスイスという国は強くて、"攻めてこれるものなら攻めてこい"という姿勢がはっきりしており、他国に攻め入る隙を見せなかったことが大きいと思います。そして私たちスイス人もそのことをとても誇りに思っています。」
(参考;スイスでは、2013年に徴兵制度存続の国民投票が全州で行われたが、全26州で存続派が多数を占めた。)

 またフィンランドで、出会った徴兵され現在軍隊で訓練を受けている19歳の青年からも話を伺うことができました。

檜垣:「徴兵制度にはどのような考えをお持ちですか。」

青年:「生まれた時からあった制度なので、当たり前のことのように感じています。ヨーロッパ諸国は、侵略と占領の歴史を持っているので、他国から干渉されないように軍事力を強くしておかないといけないという気持ちは個人としても強くもっています。そして、徴兵制度が国の軍事力を安定的なものにしているという実感があります。」

檜垣:「フィンランドでは、どうしても軍隊に入隊したくない人には、そに他の制度があると聞きました。徴兵されることには抵抗がありませんでしたか?」

青年:「確かに、"良心的兵役拒否"という制度があり、ボランティアとして代替することが可能です。ただ徴兵制度が半年で終わるの対して、ボランティアは1年以上奉仕しないといけなく期間が長いので、私は徴兵の方を選択しました。半年で終わるし、みんな一緒だし、簡単ですよ。」

檜垣:「かなり国と平和について自分ごとのように考えていらっしゃる感想を持つのですが、いかがでしょうか?」

青年:「はい。やはり先ほども述べましたが、歴史的な背景も然り、そして徴兵制度があることによって自然と平和とはどうすれば保てるのか自分なりに考えるきっかけが多いように感じます。自分の生まれて育った国ですから。」

2015年 1/5スイス,チューリッヒにて 1/19 フィンランド,ヘルシンキにて
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[最後に]
 インタビューをしていて強く感じたことは、国防に関して他人事ではなく自分ごとのように考えている人が多いということです。特に徴兵制を導入している国では自分自身を含めて家族や子供が戦争に行く可能性があるからこそ、他人ごとにはできないのだろうという印象を持ちました。

  誰しもが「戦争反対」ということは同じでしょう。

 でも、どうすれば戦争を回避することができるのか、今の平和な生活を守る事ができるのか、またなぜこれまで70年間日本は戦争をすることなく平和であったのか、ここを真剣に考えることもとても大事なのではないでしょうか。

 この問題に触れることは、今の日本ではあまりにタブー視されていて、書くことにはとても躊躇しました。しかし、今年は戦後70周年。日本を取り巻く環境が刻々と変わりつつある中、時宜は得たと考え文章にしてみました。ご批判等ある方もいらっしゃると思います。遠慮なくコメントしていただければと思います。絶対的な答えはありません。
みなさんと考えていくことができれば、とても嬉しく思います。

写真は、フィンランドで会った徴兵中の19歳の青年
ー 場所: Helsinki - Finland

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JGAPエッセイ集 フロンティア・フォーラム「道がないところに道を作る。」(檜垣賢一さん、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)
http://japangap.jp/essay/2014/11/3-5.html

Website「多様性の中の共存を目指して。」:http://www.kenichihigaki.com/

1月22日付JGAP寄稿者短信:「すべての人にとって住みやすい街を目指して~バリアフリー社会 北欧フィンランド・ヘルシンキ」 http://japangap.jp/info/2015/01/jgap3-4.html