JGAP寄稿者短信:「日本と違い、スウェーデンの若者の投票率が高い理由~社会的弱者を置いてきぼりにしない社会」(檜垣賢一、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)![]()
※写真は、両角達平さんと筆者(ストックホルム市庁舎)
魔女の宅急便のモデル街と言われるスウェーデンの首都ストックホルムにやってきました。
北欧スウェーデンは日本と同じく先進諸国の1つですが、多くの先進諸国で若者の選挙での投票率の低さが問題になっている中、スウェーデンの若者の投票率は長期間に渡り70%を超えているという結果があります。
この理由を探るべく、現在ストックホルム大学院 国際比較教育研究 課程に在籍中で、社会とスウェーデンの若者の関わりに関して研究をしていらっしゃる両角達平(もろずみ たつへい)さんにお話を伺うことができました。
そのお話を元に読者のみなさんと共に、日本の投票率の問題に焦点を当てながら今後の日本の政治との関わり方を考えていければと思います。
スウェーデンの投票率の高さの理由
スウェーデンにおける国政選挙の投票率は、30年以上に渡り80パーセントを維持しており、ほぼ100パーセントの投票率を誇る北朝鮮、そして投票を義務化しているオーストラリアやシンガポールなどの国を除けば、先進諸国最高レベルの高さを維持しています。
(引用:The International Institute for Democracy and Electoral Assistance: [http://www.idea.int/index.cfm])
両角さんは、スウェーデンの投票率の高さに関して、自身のブログにて「学校」の役割が大きいことを指摘しています。
(引用:【保存版】スウェーデンの若者の投票率が高い理由 10記事 まとめ[http://www.huffingtonpost.jp/t.../swedish-youth_b_6345336.html])
スウェーデンでは、多くの学校で社会問題に関するディベートや民主主義に関する授業が行われているようで、そのことが若者の政治への興味を高めている一つの要因であると考えられます。また選挙がある度に、多くの中高学校で模擬選挙を行う"学校選挙"と呼ばれるイベントが催されるそうです。実際に選挙権を持つ前にこういった経験を定期的に持つことで、自然と日常生活の中で政治を考え行動する習慣を身につけているのかもしれません。公教育でもある学校を通して多くの若者に政治に興味をもってもらおうとするこの取り組みは、"一部のわかる人だけが参加する政治"から"すべての人が参加できる政治"へ向けて大きな役割を果たしているようです。
日本で投票に行かない若者に理由を聞いてみると、「興味がない」や「まったく分からない」などといった答えをよく耳にします。日本では、興味があり、分かる人だけが投票に行けば良いといった風潮が強いように感じるのが現実です。
社会的弱者を置いてきぼりにしない社会を目指して
両角さんは、日本の投票率の低さに対して「知らない間にルールが作られてしまう社会になる可能性がある。」と警鐘を鳴らします。
両角さん:「これまで日本は福祉国家であるフィンランドやスウェーデンを始めとする北欧諸国と並んで一億総中流と言われるように平等社会を実現してきました。しかし、それはもはや昔の話です。例えば、世界の学力調査で権威のあるPISA調査では日本は常に上位におり教育水準が非常に高いと言われていますが、そこには見落とされている側面もあり、一方で教育格差が広がっています。
様々な分野で格差が広がる中、一部の知識があり富めるものだけが投票して、弱者が抱える問題は表舞台に出てこないまま埋もれてしまう可能性があります。すべての人が社会の意思決定に関わる事ができる社会にしていかなければ、一層格差が広がってしまうかも知れません。」
確かに投票に行く人は、学歴が高く、収入も高い人の方が多いということは容易に想像できます。そうなると、持てる者がより富み、持たざる人はより貧しくなるルールが自然と出来てしまってもおかしくないわけです。日本では普段は政治の話などタブー視されている側面が強くある中、選挙の投票前になると急に「投票に行け」や「投票に行かないやつには権利はない」などとなんとも押し付けがましいフレーズを耳にすることがよくあります。
投票を強制させたりするこのような手法には反対ですが、低投票率が続く今の日本社会にもほったらかしにして目を背けることもできません。投票率が低いという問題は、表面的な数字の問題だけではなく、"みんなで社会のルールを決めていこう"という民主主義の根幹をも揺るがす大きな問題です。
この度、両角達平さんからお話を伺い見えてきたこととして、スウェーデンの若者の投票率が高いのは、"スウェーデン社会が他国と比べて「社会的弱者」を置いてきぼりにしない社会である" からということです。こういった点が他の先進諸国との投票率の違いを生んだ大きな理由の1つのように感じます。
スウェーデンでは、社会のルールを決めるための大きな役割を果たす選挙では、「自分たちの社会は自分たちの一票で」という意思がおそらく日本より強いのでしょう。社会のルールを決める政治が他人ごとではなく、自分ごととして考えられている点に、やはり日本との違いを感じます。日本でもより多くの市民が社会のルールの作り手として当たり前のように政治に参加できるようにするためには、スウェーデンから学べることが多くありそうです。
最後に
日本の一億総中流神話が崩壊し、平等社会から次第に格差社会と言われるようになってきた今だからこそ、 政治との関わりに関して1人1人が今一度立ち止まり考えなければならない時が来ているのかも知れません。もちろん若者の投票率そして全体の投票率を急激に上げることは難しいことでしょう。スウェーデンを1つの手本として、学校を通してなど小さな頃から社会と関わり合いながら、自然と政治との関わりが生活の一部として定着できるように社会全体が努力していかなければなりません。この文章を読み、一人でも多くの方にとって考えるキッカケとなりましたら幸いです。
両角達平さん、お忙しい中誠にありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
2015年1月19日 スウェーデン, ストックホルム市庁舎にて
(関連記事)
JGAPエッセイ集 フロンティア・フォーラム「道がないところに道を作る。」(檜垣賢一さん、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)
http://japangap.jp/essay/2014/11/3-5.html
Website「多様性の中の共存を目指して。」:http://www.kenichihigaki.com/
1月22日付JGAP寄稿者短信:「すべての人にとって住みやすい街を目指して~バリアフリー社会 北欧フィンランド・ヘルシンキ」 http://japangap.jp/info/2015/01/jgap3-4.html
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[両角 達平さん プロフィール]
長野育ち、ストックホルム在住の日本人。2009年、静岡県立大学にてユースワーク団体YEC を設立。大学生による中高生の余暇活動支援を軸とし、啓発活動などにも取り組み若者の社会参画を促すユースワーク活動を続ける。その後、大学を休学し2012年からスウェーデンの首都ストックホルムに留学。ストックホルム大学にて子ども・若者学を専攻、複数のユースセンターでのインターンシップを経験。その間、視察コーディネートや翻訳、ブロガーとして記事執筆に携わる。ヨーロッパで訪問した団体の数は40以上。帰国後、静岡県立大学を卒業し、2014年4月からベルリン拠点の若者政策のエビデンス・ベースを構築する国際NGO Youth Policy Pressにて勤務を開始。現在は再びスウェーデンに渡欧し、ストックホルム大学院国際比較教育研究課程に在籍。
公式ブログ: http://tatsumarutimes.com/
(関連記事)
2012年5月16日付JGAPエッセイ集 フロンティア・フォーラム
No.65:「僕の"留学のススメ"~"18歳の国会議員"がいるスウェーデンにいるワケ」 両角達平さん(静岡県立大学 国際関係学部4年=休学中)※Stockholm University(スウェーデン)留学中
http://japangap.jp/essay/2012/05/18-4stockholm-university.html

