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JGAP寄稿者短信:「公教育と給食の意義~子供は親を選べない」(檜垣賢一、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)幼児1.jpg

今日の第2回は 「幼児教育の重要性と実際に教育することの難しさ」について書いてみます。


(2)公教育と給食の意義~ 子供は親を選べない

モンテッソーリ幼稚園(注1)でボランティアを始めて、早くも1ヶ月が経ちました。ここ最近は、すべての子どもたちに保証されている公教育そして給食の重要性、もちろん当たり前のことなのですが、この大切さを改めて身をもって思い知らされています。


ボランティアをしている幼稚園には、さまざまな家庭のバックグラウンド(事情)を持った子供たちが集まります。

たとえば、

・父子家庭の3人姉妹
・19歳で出産し、親がまだ比較的若い子ども
・親が教育熱心で何度も自分が納得いく幼稚園を探し、学校を転々とさせられている子ども
またアメリカならではの、
・両親が外国出身で移民としてアメリカにやってきた子ども
などなど。

このように1人1人違ったバックグラウンドを持った子供たちが、同じ1つの学校に通っています。この幼稚園はまるで小さな子供たちで構成される社会の縮図のようです。もちろん幼稚園だけではなく、子供たちの能力、親の経済力に関わらず誰でも入ることができる学校、たとえば日本であれば義務教育の下の公立小学校、中学校でも同じことが言えるでしょう。

そして、さまざまな場面で、この家庭的な背景による子ども間の差異が顕著に現れます。僕がボランティアを通じて強く感じている子ども間の差異は、大きく2つほどあります。それは、精神的な子供たちの成長、そしてお昼ごはんの弁当の違いです。
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まず1つ目は、子供たちの精神的な成長です。子どもたちと時間を共有していると、親の教育がよく行き届いている子供、また逆にそうではない子どもの差が顕著に目に見えて分かります。たとえば、第1回レポートで言及した、やっていいこととそうではないことを区別する「善悪の判断」が親からしっかり教えられていて、すでに自分で判断できるようになっている子もいれば、まったくそうではない子がいます。親のそれまでの教育によって、子どもたちの立ち振る舞いも大きく変わります。たしかに、一人一人の個性、価値観が違うことはとても良いことです。しかし、その一方で社会の中で他者と関わり合いながら、この自由を謳歌するには、最低限のルールもあります。たとえば、意見の相違があってもケンカなどの暴力的な解決策に頼ってはならない、人の物を盗んではいけないや、他者を尊重するといった、こういった基本的なルールです。こういったルールを教えること、いわゆるシティズンシップ教育は、必ず必要なことですが、実際は家庭だけでは難しいものです。やはり、こういった点に、公教育の意義が見出せてきます。
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次に、お昼ごはんの弁当の違いです。この幼稚園では、給食制度を取っておらず、昼食は親が用意したお弁当を子供たちが持参してきます。ある子供は、野菜とお肉とヨーグルトそしてフルーツジュースといったように栄養バランスが考えられた弁当を持ってきている一方で、逆にピザとパスタとスナック菓子といった風に栄養バランスが偏ったものを持参し毎日食べている子もいます。

子供たちは、大人とは違い、日々目まぐるしく身体的に成長しています。たった1年でも身長、体重ともに、目に見て取れるほど変わることもあります。そのような子どもたちの成長は、もちろん食べるものに大きく左右され、さらには将来の健康にも大きく影響を与えることは容易に想像できます。幼稚園をはじめとした学校という場所は、子どもたちがほぼ毎日過ごす場所です。そのことを考慮に入れると、給食制度があるかないかということは、子どもたちの健やかな成長にとってとても大きな役割を果たしているのだなと強く感じています。

今紹介した2点を含めて、さまざまな場面で、子どもたちの家庭的な背景による子ども間の差異を目にすることができます。どの家庭にも、さまざまな事情があります。親の年齢、経験値、経済力、仕事の忙しさ、教育に対する思い入れなどなど、違って当たりまえです。
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子どもたちは親を選べない。それでも、一人一人の子どもたちには、等しく健康的に文化的に成長する権利があります。たとえどの家庭に生まれても、子どもたちが自立するまでは社会が支えていく、こういった理念を具現化した一つの制度がまさに学校なのではないでしょうか。公教育と給食の存在は、今では当たり前のように考えられていますが、実際に現場で子どもたちの事情を目にすることによって、改めてその必要性そして意義を強く思い知らされます。


注1:
一人一人の自主性を最大限に尊重したモンテッソーリ・メソッドと呼ばれる教育方法を導入した幼稚園です。
モンテッソーリ教育の特徴は、
・子供の自主性を尊重させるために、学びを強制させない。
・約4~6歳の子供が同じクラスで学びあう。
・強制的な教育より、経験的な学びを大事にする。
・教室には、子供の知的好奇心をくすぐるような教具が揃えられている。
などあります。
(モンテッソーリ幼稚園の内部)
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歴史上ではアンネフランク、さらに現代ではGoogleやAmazonやWikipediaの創設者、さらにはイギリスのウィリアム王子がモンテッソーリ教育を受けたことで有名です。

モンテッソーリ教育は、子どもの個性を最大限活かす教育として以前紹介したレッジョ・エミリア教育と同じくイタリア発祥で、さらに子供の知的好奇心を尊重する点では共通します。
これから日本の教育を考える上で、学べることが多いと思い、この幼稚園を選びました。

(関連記事)
JGAPエッセイ集 フロンティア・フォーラム「道がないところに道を作る。」(檜垣賢一さん、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)
http://japangap.jp/essay/2014/11/3-5.html

2015年3月8日付
JGAP寄稿者短信:「幼稚園でのボランティアを通して幼児教育を考える~名門モンテッソーリ幼稚園で観たもの」 http://japangap.jp/info/2015/03/jgap-exit3-1.html

Website「多様性の中の共存を目指して。」:http://www.kenichihigaki.com/

1月22日付
JGAP寄稿者短信:「すべての人にとって住みやすい街を目指して~バリアフリー社会 北欧フィンランド・ヘルシンキ」 http://japangap.jp/info/2015/01/jgap3-4.html

ブログ「井の中の蛙、大海を知る。」
→[http://www.kenichihigaki.com/#!blog/c831]