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JGAP寄稿者短信:「高校生の心に火を灯す授業 "カタリ場"! 」(檜垣賢一、ロンドン大学大学院進学予定=ギャップイヤー中)higaki.jpg

この1ヶ月で学んだ、"カタリ場で起こる奇跡"と"カタリ場の秘伝のタレ"
 NPOカタリバでお世話になり始めてはや1ヶ月。5月は、東京で高校生と大学生などの先輩が対話をする約100分間の授業「カタリ場」にどっぷり浸かった日々でした。
この1ヶ月の学びを、次のステージに行く前にじぶんの中で整理しておきたいなと思って、この文を書いています。ちょっと長いです。

大きく2つの学びについて。
(1) カタリ場で起こる奇跡: どんな境遇にいたとしても、自分の未来は自分の手で変えれると思える瞬間
(2) カタリ場の秘伝のタレ: 中高生と実際に対話をするキャストひとりひとりの"想い"


カタリ場で起こる奇跡
-どんな境遇にいたとしても、自分の未来は自分の手で変えれると思える瞬間-
 まずなによりも、カタリ場という授業が秘めているパワーの大きさに、本当にびっくり。カタリ場は"高校生と先輩が話をする約100分間の授業"と一言で表現できちゃうけど、その100分間の対話の中では数え切れないほどの奇跡が生まれている。
今の中高生、僕たちの時代もそうだったけれど、たくさんのモヤモヤを抱えている。家庭事情、人間関係、進路のことなどなど・・・。

 自分の生まれ育った環境のせいで、自分の限界を決め付けてしまっている生徒、将来やりたいことがない生徒、夢を諦めている生徒、自分には価値がないと思い込んでいる生徒。さらに、モヤモヤしていても、相談できる人がいなかったりと・・・。
よくよく中高時代の自分を思い返してみると、日中は学校で、放課後は部活や塾で、夜は家で、毎日出会う人が決まっていて、知っている世界も狭かった。

 もしその時に、数年後の自分の姿である、ちょっと年上の先輩と話をする機会があれば・・・。
まさにそれを体現したカタリ場。先生のような上下関係でもなく、友達のような横の関係でもなく、"ナナメ"の関係のちょっと年上の先輩(キャスト)との対話の時間。中高生にとってとても特別な時間だし、不思議な空間が生まれる。

 最初は知らないお兄ちゃんやお姉ちゃんがやってきて、ちょっと照れくさかったり、お祭りのようなわちゃわちゃした雰囲気になるけれども、お互いにこの人は気を許せる人だと分かってくると、次第に「実は・・・」、「今ね・・・」と本音が出てくる。中には、感極まって泣きながら話をしてくれる生徒もいる。

カタリ場では、キャストは、
・本音や悩みを打ち明けることができるナナメの関係な人
・中高生と似たような環境や悩みを持っていて、克服した経験のあるロールモデル
・ 今まで知らなかった選択肢や考え方を提供できる先輩
になって、中高生に寄り添って対話をする。

中高生にとっては、キャストとの対話を通して
「私の話でも本気で聞いてくれる人がいる。」
「今苦しんでることって、自分だけじゃなかったんだ。」
「自分が変われば、未来を変えることができる。」
と思えて、前向きに物事を考えれるようになる。

 カタリ場は、ただの進路相談会じゃないし、先輩が一方的に価値観を押し付ける場でもなくて、むしろいろんな悩みを持っている中高生に、先輩が寄り添って、一緒に悩む場所なんだなと改めて実感。そこで、ロールモデルと出会えることが出来れば、「自分も先輩みたいに頑張ろう」と思えるようになるだろうし、もし出会えなくても先輩との対話を通して自分自身と本気で向き合うことにより自己理解が進むし、知らない世界にちょっと顔を覗かせてみることもできる。

 カタリ場は、自己発見、自己実現のきっかけ作りの場なんだろうな。たった100分の授業だけれども、カタリ場の持っているその影響力の大きさは生徒にとってもしかしたら一生モノなのかもしれない、と強く思ったのでした。
 


カタリ場の秘伝のタレ: "想い"

-中高生と実際に対話をするキャストひとりひとりの想いが、カタリ場を作っている-
 次に、カタリ場の授業の作り方について。カタリ場って、カタチをつくるのはそんな難しいことじゃない。体育館などの会場で対話できる環境を整えて、高校生と大学生を集めれば、カタチだけはカタリ場。

 でも、それだけじゃ、やっぱ本音が交差する情熱的なカタリ場は成り立たないし、おそらくなーなーに終わってしまう。どうすれば、本音による対話が生まれて、中高生の心に火を灯すような時間になるのだろうか・・・・。カタリ場で働き始めて一ヶ月、一番苦しみ考え続けたことは、おそらくこの部分でした。

 いろんな答えがあっていいと思うけど、僕は「中高生と実際に対話をするキャストひとりひとりの熱い"想い"がとても大事」、と思うようになりました。

カタリ場を届ける中高生のことをアンケートやヒアリングなどを通して、どんな生徒がいて、どういうことで悩んでいて、どんな特徴があるのか、などバックグラウンドをしっかりと想定する。その上で、キャスト1人1人が、"どんなカタリ場を作りたいのか"、"そこの生徒にとってどういうカタリ場にしたいのか"を徹底的に考え抜く。もちろん、どれだけ生徒想定をしても、全く想定とは異なる生徒と対面することもある。

 それでも、この生徒想定を通して、キャストが"想いを持ったキャスト"になっていく。想いを持って生徒と対話をすれば、自然と本音の対話になっていく。参加する30人近くのキャスト1人1人が、どれだけ本気で生徒に寄り添うことができるか、まさにこれこそがカタリ場を作る秘伝のタレなんだなって思いました。
ただ機械的なタスクをこなすだけじゃなくて、カタリ場を届ける生徒へ熱い"想い"を持つことの重要性。
これからも強く胸に刻みたいなと思います。


(関連記事)
JGAPエッセイ集 フロンティア・フォーラム「道がないところに道を作る。」(檜垣賢一さん、学習院大学3年=米国NY州立大学オールバニ校留学中)
http://japangap.jp/essay/2014/11/3-5.html

Website「多様性の中の共存を目指して。」:http://www.kenichihigaki.com/

2015年1月22日付
JGAP寄稿者短信:「すべての人にとって住みやすい街を目指して~バリアフリー社会 北欧フィンランド・ヘルシンキ」 http://japangap.jp/info/2015/01/jgap3-4.html

2015年9月21日付
JGAP寄稿者短信:「世界に羽ばたこう!そして、自分らしく生きよう!」(檜垣賢一さん、学習院大学4年)http://japangap.jp/info/2015/09/jgapny3-1.html

ブログ「井の中の蛙、大海を知る。」
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