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海外ギャップイヤー事情 マレーシア編「ギャップイヤーは高等教育のエコシステムを創る!?」の巻9 KIMG2633.JPG

マレーシアの情報が隈なく入手できる媒体"The Star"に掲載されていたギャップイヤーに関するニュース。それは、文部科学大臣が9月からギャップイヤープログラムを始まるとのことで、大変な反響を呼んでいる。

ギャップイヤーは学習の中にあるギャップを埋めるもの
ギャップイヤーについてどう考えているかマレーシアで聞いてみたら、何人かはすでに人生において、ギャップイヤーを取得していて、その経験や考え方についても語ってくれた。

ある女子大生は、マレーシアのイスラム国際大学の最終学年で法律を学んでいて、去年の1月から9月にかけてギャップイヤーを取得していた。
「まだ、国際的なものではなかったけれど、この決断に後悔はしていない」と語ってくれた。

彼女は東南アジア若手リーダーイニシアティブ(YSEALI)(2013年アメリカのオバマ大統領が発案し、アメリカ国務省がスポンサーになっている)に選ばれた時に、ギャップイヤーを取得しようと決心した。
「ありがたいことに、大学ではその選考過程が上手くいくようにとても協力してくれた。」
そして2月にアリゾナ州立大学に4週間行き、そこで社会起業家や経済成長(SEED)について学んだ。そのプログラムの5週目にはサンフランシスコとワシントンDCに行き、異文化を体験しアメリカの首都を見学した。

YSEALIのプログラムが終了しても、引き続き彼女は活動を続けた。
3月~9月の間にアジア諸国で色々なNGO団体のボランティア活動に励み、スイスのジュネーブでは人権に関するワークショップに出席し(スイスでは国連難民高等弁務官事務所、国際刑事裁判所、国際司法裁判所を訪問)そして9月には、ラオスでオバマ大統領とも会うことができた。

その間、2カ月間小売業で仕事をし、就労経験も積んでお金も稼いだ。
9月に再び学業に戻ったが、ボランティア活動と社会福祉事業とは引続き関わり続けている。現在、YSEALIで知り合ったフィリピンとタイの友達と一緒に、性差別や女性への暴力と戦っている若者達の活動を応援するプロジェクトに取り組んでいる。

「自分の調査スキルと書くことへの情熱を考えた結果、ジャーナリズムの世界を選んだ。例えばマレーシア人がどのように障害がある人を見ているかというような例をとっても、ジャーナリズムを通して、一般人の認識や先入観を変えることができるという希望で、読者に働きかけることができることが魅力」と彼女は言う。


何より実行することが重要だ 
ギャップイヤーへの支援はこれまでにもある。
Teach for Malaysiaの理事は、国民の合意形成が新たな取り組みの大きなテーマになっていることを喜んでおり、ギャップイヤーとコラボする機会を熱心に探している。

Nation Building School(将来のリーダーを作り上げる学校)創始者も、この新たな取り組みにおいてNGOがきわめて重要な役目をしているという。NGO団体が学生達を地域社会及び彼らの問題に向けさせることができるとして、彼らがネットワークでつながることによって地域社会を通して教育することができ、そしてこれらのような体験がもしかすると人生を変える出来事になるのだと語る。

UPSI(マレーシアの教師に成るための大学)を卒業した青年は、ボランティア活動の成果を称えられて最近英国のエリザベス女王と謁見する機会があったが、そのことは金銭的な理由で全ての学生達に平等な機会があるわけではないことを思いださせてくれたと話してくれた。

文部科学省は機会を確保するだけでなく、学生、親、そして社会的・教育的組織が考え方を変えるための準備が必要で、長期にわたって持続可能にしていくために文化化(人がある文化に順応し、その価値観を吸収し同化する過程)が重要だと言う。

もう一人は、かつてギャップイヤーを利用してEPIC HOMES(貧しい田舎に持続可能な住宅を建築する作業をボランティア活動につなげて行う社会的企業)に参加したが、大学学生支援あるいはカウンセリングサービスがギャップイヤー計画を立てる上で、重要な役割をすることが大事だと提言している。利用できる助成金などが数多くあるので、大学側はこれらの機会と学生を結び付ける必要がある。欧州では大学が学生達のギャップイヤーの費用を支払うかわりに、大学側は学生が魅力ある話を書き物にすることを期待している。

UNITENで学生リーダーをし、ソフトウェアのエンジニアリング科を卒業したある若者は、ギャップイヤーを取得できていれば、これら全てのリーダーシップに係る活動ができて、やりたいと思うことを全部やり、後の自分の勉強により集中できただろうと残念がっている。彼は現在Go STEM(学生が科学、テクノロジー、エンジニアリングや数学に対する関心が持つ人材育成を目標にスタートアップさせる企業)を運営しており、とても意識が高い人物だが、より効果的な学びを確かにするためにより率先してマネジメントできる必要性を感じている。


ギャップイヤーは高等教育のエコシステムを創る!

シンガポールの南洋理工大学の物理学部の学士号修了した社会人は、シンガポールのダウン症候群協会で働いている時に数多くのボランティア活動をしている学生達と出会った。彼曰く、ギャップイヤー制度を補足するためにボランティア活動を推進するある種の構造が必要で、さらに信用あるものにできるようにすることを提案している。そして全く管理されないようなことはないようにすべきだと言う。

これは単なるボランティア活動を推進する以上のことで、不足している人々が、我々の学生達の個人的成長についてより全体的に考え、ギャップイヤー期間中にどれだけ旅や就労活動やボランティア活動が価値あることになりうるかということを見ることであると言う。

ギャップイヤーは学生に自分自身を内省し、発見し、知性的に成長する機会を与えるものであり、また国に尽くす機会をも与える。この新たな取り組みはマレーシアの高等教育のエコシステム(生態系)に、ウィン・ウィンの関係をもたらしてくれると信じている。


文/JGAPギャップイヤー総研客員研究員 余田有子


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2016年1月1日付:「2016年は"ギャップイヤー2.0"の時代!」(砂田 薫)-代表ブログ http://japangap.jp/blog/2016/01/201620.html

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