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なんと、大学院が「ギャップイヤー・プログラム」を創った?!~"起業家精神と経営管理の"ギャップイヤー修了書"が授与される南ア・有力大学院1年専修コースが出現南アフリカ大学院写真.jpgのサムネール画像


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なんと、大学院が「ギャップイヤー・プログラム」を創った!
 ステレンボッシュ大学は南アフリカの4大大学の一つ。特にビジネススクールは、世界的に見れば、アフリカの最南端という地理的不利にもかかわらず、研究の質が高いことで知られている。海外からの留学生率も10%を超えていて(東大:学部1.7%、大学院13.6%)、世界標準に近づく努力をしている。それゆえ、国内ナンバーワンの呼び名が高い。

 このステレンボッシュ大学のビジネススクール(運営は大学学内ベンチャーのエグゼキュティブ・デベロップメント社が受託)が2011年から「起業家精神とマネジメントでのギャップイヤー・プログラム」を立ち上げた。履修した専修学生に、なんと「ギャップイヤー修了書」を授与しているのだ。 この10ヵ月プログラムはちょうど昨年12月に2期目が終了し、今年2月から始まる3期生を募集している。大学のサイトには「起業家になるために、ギャップイヤーを利用しよう(Use a gap year to become an entrepreneur  http://www.usb-ed.com/News/Use-a-gap-year-to-become-an-entrepreneur  )」という見出しが踊り、概要が読める。

 この専修コースの「出願資格」は、以下のとおり。
1.キャリア選択に対しての方向性に時間と支援が必要な高卒者
2.大学を中退し、将来の展望が持てない者
3.自分自身の機会を創出したいか、企業に勤めたい大学既卒者

 プログラムの特徴は、大学内の教室移動に終始するだけの「座学」だけでは閉鎖的で不十分として、"外部"に飛び出すことだ。学内だけでは、社会に存在する新しい課題に直面する学生のニーズや希望に合った仕事を見つけるは難しい。その結果、自分のキャリアと仕事の機会を創る能力は、大学学外の環境で培われる。特に、学生がどの方向に舵を切るか確信が持てない場合は、このコースで足場を固めるチャンスと説く。

 具体的には、このプログラムは10ヵ月間。最初のフェイズ(5ヵ月間)は自己分析と何を成し遂げたいかを突き詰める座学中心。この10ヵ月間は、起業家精神の行動様式のエッセンス、つまりどうやりたい事業を際立たせ、本人や周りを豊かにする機会を見つけ出すかという時間になる。

 後半の5ヵ月は、中小企業やベンチャーの現場に赴き、経営の基本原則やデザインを学ぶ。この期間も、週3日は座学になる。宿題も多く、実務的な適用、すなわち起業のビジネス活動は土曜日に行われる。このフェイズでは、学習と成長した経験を持つコーチが学生を支援する。フェイズ2(後半の5ヵ月)は、フェイズ1で学生が日常生活の中で発見した新事業のタネを深堀りする機会となる。フェイズ2の期間ほとんど学生は自分の思うようにすればよいが、コーチによる継続したサポートは受けられる。

 そして経験したことは定期的に大学側からのフィードバックが受けられ、フェイズ終了時に、今後のキャリアや人生計画をプレゼンすることが求められる。この計画書は活動し始めるにつれ、かなり状況が変わる中、変化するだろうが、明確なビジョンを持った人は、より成功して充実感を味わうことは既に立証されていると言う。

 大学側のアピールは、このギャップイヤーを活用した「人材育成プログラム」は、人生におけるキャリア機会を自ら創れることだと言う。市場のニーズに合致する適切なスキルと同様に、ユニークな資質と才能を発見できる可能性がある。さらに収入を得るために、現実生活の中で学んだことが生かされるよう十分な機会をプログラム参加者に提供する。それゆえ、学生の目的と、実務の生活の中で方向性が明確になり、体系化された方法を見つけられるということだ。ちなみに、10ヵ月間のプログラム受講料は24900ランド(約23万円)。通常の南アフリカの大学の1年間の授業料の三分の一であり、良心的といえるのではないだろうか。

 この専修コース終了時に授与される「 起業家精神と経営管理の"ギャップイヤー修了書"」を取得すると、以下の力がついているという。
・探究することで、自分の才能と夢を特定でき、それらを人生の機会とマッチさせる方法が見つける
・起業家思考で、自分や周りの人にチャンスと富を与えられる
・潜在的なビジネス機会を特定し、それらを活かすビジネス・コンセプトをデザインできる
・中小企業やベンチャーを興したり、マネジメントができる

 また卒業後、どのような機会が得られるかについては、以下のようにまとめられている。
・新しい管理やビジネス・スキルを得て、自身の雇用可能性を高める
・自身が興すベンチャーをマネジメントすることができる
・ビジネスの管理手法を学ぶことによって、立派なキャリア・パスになる

 この「起業家精神と経営管理のギャップイヤー」修了後は、常勤管理職か中小企業やベンチャーの経営を3-5 年実務経験すると、 ステレンボッシュ大学大学院 の上級経営管理開発プログラム (SMDP)に登録できる。このSMDP を修了すれば、英国でランキング急上昇中の リンカーン大学のオンライン・コースの「経営学科(論文コース、2年間で修了できる。その後修士課程に進学も可) 」に入学できる。 つまり、日本でいうと高卒資格で入学可能なこの1年足らずの「ギャップイヤー修了書」の価値は、どうやら大学学部1年と等価のようである。

 昨年米国では、高卒後、指定された1年間の「ギャップイヤー・プログラム」を修了すると、単位が付与され、大学2年生として入学できる大学がニューヨークの都心に誕生したが、その位置づけと近いことが南アフリカで起こっていることが興味深い。(参考:「12日付ニューヨークタイムズが報じた"ギャップイヤー"をすれば2年生になれる大学がついに出現!~ユージン・ラング・カレッジ」-JGAP代表ブログ http://japangap.jp/blog/2012/09/12.html

 ギャップイヤー期間中の非日常下での社会体験(ボランティア・課外の国内外留学)・就業体験が、いかに社会や大学に評価されているかがわかり、また人材育成に深く関わっているかもよくわかる。今年は、4月に入学する東大生(約3千人)のうち、最大30人が休学扱いで1年間、給付付のギャップイヤーが利用できるようになる。日本でも、大学の内外でギャップイヤーが議論されることが多くなるだろう。

参考:ステレンボッシュ大学「Gap-year Certificate in Entrepreneurship and Management」プログラム
http://www.usb-ed.com/Course/gap-year-certificate-in-entrepreneurship

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