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下村文科大臣のギャップイヤー奨学金発言から想うこと~大学入学前の高卒者に、1年の海外ボランティアを提供する米国・社会起業「グローバル・シチズン・イヤー」の快挙!


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5月1日、下村博文文部科学相は、ワシントンで「高校卒業から秋入学までの期間(ギャップイヤー※ギャップタームは、意味不明な和製英語なので使用しない)」に短期留学する学生に対して、奨学金を給付する構想を明らかにした。

 実は同日、米国高校卒業生を約1年、大学入学前に途上国(セネガル、ブラジル、エクアドル)にボランティアとして送り出す"ギャップイヤー社会起業"であるNPOの「グローバル・シチズン・イヤー(アビー・ファリック代表、以下GCY)」が、また雑誌で「善人100人」として受賞された(注1)。理由は、「米国に、欧州のギャップイヤーの持つ視野を広くする仕組み・価値観を持ち込んだこと」による。

4月24日には、GCYは教育や芸術を支援する米国「アーノルド基金」から、125万ドル(約1億円)の寄付が約束された。同基金のジョン・アーナノルド理事長は、その理由を「GCYは組織としては08年からと設立は浅いが、若者への"ギャップイヤー事業"により、米国の教育を変革し、今日の複雑化したグローバルな社会にあって、共感性理解と異文化理解ができる米国の次世代リーダーを創出していこうとしているからだ」とコメントしている。

 この「ギャップイヤー・プログラム」に参加する高卒者は毎年100名を超え、親の収入にスライドして参加費は決まるので、参加者の8割が完全奨学金も含め、なんらかの助成金を受けている。もっと参加者を増やし、奨学金も充実させたいので、総額7億円をファンドレイジングしようとしている。

今年2月には、社会起業支援の"総本山"である米国・アショカ財団からも、他の大学の5事業と共に今年度の「高等教育イノベーション賞」を受賞している。

 この受賞理由は、私が昨年9月にBLOGOSでも紹介した「10ヵ月のギャップイヤー・プログラム」参加で、修了後に2年生になる単位認定制度(30単位授与)を大学と提携し、策定・実施したことによる(注2)。

 これにより、今後全米の大学に普及し、社会・経済領域を超えて、社会貢献マインドを持った新しい若手リーダーを育成する仕組みに成長することだろう。

 この「ギャップイヤー・プログラム」は、グローバル人材(global citizen)と社会貢献人材(social innovator)の創出を担うという好例だと考える。そう考えると、下村文部科学相が、大学入学前の期間を「空白」でなく、課外留学などを通しての人材育成の「機会」と捉えているのなら、素晴らしい。

 大学という狭い檻の中で、しかも教室という密室内の座学だけでは知識は得られても、それを実社会で応用可能かわからない。高度成長の時代なら、それは会社に入ってからわかればよかった。しかし、企業は低成長期や停滞・後退局面になり、環境が変わった。大学で学んだものを実験するあるいは実践してみる、それを入社前に行うことが要請されるようになった。昨今の大学のサービス・ラーニングやアクション・ラーニング、はたまたPBL(プロジェクト・ベースト・ラーニング)導入は、大学で学んだことの社会への適用具合を見ることと理解している。

 私は、その先にあるトレンドが、「教員・親」からも離れた社会体験(ボランティア・課外留学・旅)・就業体験を意味するギャップイヤーだと捉えている。

 若いうちに、非日常下で、comfort zone(慣れた居心地良い安全地帯)から敢えて脱出するからこそ、感性・感覚も研ぎ澄まされ、自分に足りないことを体験を通じ発見できる。日常とのコントラストから学ぶ喜びが沸々と湧き上がる(中退防止機能)。心身とも異文化にもまれ、耐性がつきタフになる。そして、生きていく上でほんとうに必要なソフトスキルを習得していく(修学力・就業力向上機能)。半年なり1年後にクラスルームに帰ってきて、変化した自分が確認し、周りの学生も体験を共有できる。それが、ギャップイヤーの真髄だと考えている。だからこそ、プリンストン大学や東大、国際教養大学では制度として存在し、ハーバード大学やスタンフォード大学でも、強く推奨されているのだ。

(注1)「世界を進展させる百人の善人」THE GOOD 100
http://www.good.is/posts/good-100-meet-abby-falik-reinventing-college-prep

(注2)「ニューヨークタイムズが報じた"ギャップイヤー"をすれば2年生になれる大学がついに出現!(2012年9月)」-代表ブログ: http://japangap.jp/blog/2012/09/12.html
アショカ財団のGCY評価
https://www.ashoka.org/press/announcing-2013-ashoka-u---cordes-innovation-award-winners

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