代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

パナソニックの型破りな「ギャップイヤー入社」に期待する!

※この記事はBLOGOSにも転載されています。
http://blogos.com/outline/76068/


20年前に比べると半数の"厳選採用"
 パナソニックは昨日16日、「2015年度の国内新卒採用を14年度の2倍の700人にする」と発表し、話題になっている。内訳は大卒・大学院修了が600人、高校・高専卒が100人でいずれも増加(但し、海外採用の人数は非公表)。08年のリーマンショックの影響やプラズマテレビ撤退などのリストラに一区切りついたための"積極的採用"だそうだ。しかし、1991年には1400人規模の大卒採用(当時の就職者数34.7万人、就職率81.3%)だったことを考えると、それでもまだ半分という事実は忘れてはならない。そんな一昔前からみると"厳選採用"の中、私はパナソニックの大胆な発想の人材を求めた「型破り選考」に注目する。


企業内でも人材育成機能としてのギャップイヤーが浸透の局面
 本日付朝日新聞本日付朝刊で、パナソニックは選考方式も見直し、「アフリカ大陸横断といった特殊な経験をした学生を念頭に、異質、異能な人材を積極的に採用したい」という広報のコメントを掲載している。アフリカ大陸横断――これは、まさに「ギャップイヤー採用枠」と言っても過言ではないだろう。

 海外売上が半分を占めるといった日本のグローバル企業がギャップイヤーに注目し始めたのは、途上国のBOPマーケットをこじ開けたり、新規事業を立ち上げる攻めの姿勢が、ギャップイヤーを取得して、海外のNGOや企業、国内の被災地や限界集落でインターンやボランティアを社会修行として行ってきた学生の活動やマインドと親和性があると感じているからだ。

 このトレンドは、企業内の現役社員にも求められ始めている。本日付の日経朝刊では、文科省の"大学秋入学と半年ギャップイヤー"の検討会議(注1)委員でもある経団連川村隆副会長(教育問題委員長)が、「高校か大学時代に留学やボランティアで海外に行って(中略)、日立では毎年千人ずつ新人や若手社員を海外に出している」と回答している。


サムスンは20年以上前から「社内ギャップイヤー制度」でイノベーション
 トヨタ自動車も、新興国で「地域のプロ」を育成するとして、海外の特定地域の事業に精通した幹部社員を増やす人事制度を導入した。アジアや中南米などを対象にまず約20人を「地域人材」として認定し、各地域の事業に専念するプロを育成するという(2013年1月21日付日経朝刊)。本格的なグローバル時代を迎え、成長のけん引役である新興国など地域ごとの事情に詳しい経営人材を増やしていこうと「社内ギャップイヤー制度」の位置づけともいえる。

 しかし、韓国のサムスンはほぼ四半世紀前の1990年から"1年間の社内公募ギャップイヤー・プログラム"である「地域専門家制度」を導入している。仕事の義務はなく、その地域の言語や文化を学ぶため、自主的な計画を立て、実行する。家探しから、語学学習、人脈つくりを会社に頼らず自力で乗り切る厳しさがミソだ。既に4000人が途上国に派遣し、現地のマーケットを熟知した人材を育て、ヒット商品を発売した。インドで発売されたメイドや従業員の横流し防止のための「鍵付き冷蔵庫」や、ニュースやスポーツ観戦中に、騒がしいダンプカーが走り去るタイミングで、テレビを"いきなり大音響"にするリモコンに「大音響ボタン」を搭載すると機能を付けたものは、その成果だ。

 知識だけでないreal evperience(実体験)、そしてcomfort zone(居心地よい空間)からの脱却によって感じることの重要性を教えてくれる。若者が大きく成長するのは、このタイミングなのは自明だ。


ソニーはギャップイヤー採用の「昨年の取組み結果」をウェブで公表
 私は昨年1月に、BLOGOSでソニーの「新卒ルール変更」(注2)を紹介した。
「学生時代に精いっぱい勉強し、楽しみ、人生の進むべき道について自分の頭で考える。学校を卒業してから、海外の大学に留学する、起業する、海外の企業でインターンを経験する、家業を手伝う、世界を旅する。人生の選択肢は無限にあります。(中略)就業体験の有無は問いません。大学卒業後の"武者修行"を評価する」このギャップイヤーを推奨するような社会体験(ボランティア・課外の国内外留学、目的持った旅等)・就業体験(インターンやワーホリ等)を重視するコピーに対する共感は多かった。

 ソニーは今年も新卒採用にこの文を継続使用していて、当時私は「絵に書いた餅にするな」と書いたが、「昨年の取組み結果」を今回以下のように同欄に誠実に掲出している。

 「多様性を大切にしたいという思いから昨年よりこうした試みを始めました。結果として、学校を卒業後、色々な経験をされた方々とお会いすることができました。今年もソニーはこの取組みを継続して行いますので、より多くの方の積極的なチャレンジをお待ちしています。」
個人情報もあってか、どういう人が採用されたか不明だが、結果を書く姿勢に鑑み、善意に解釈したい。

 
経団連は組織としてギャップイヤーを評価!
 経済団体の雄である経団連は本年6月13日に「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」(注3)と題し、2年前の「グローバル人材提言」のフォローアップをしている。 第2章の「グローバル人材育成に向けて各教育段階で求められる取り組み」には、なんと「秋入学、ギャップイヤー等、国際化に対応するための取り組みの評価」のテーマ設定があり、「ギャップイヤーなど、大学・学生のグローバル化に資する取組みを積極的に評価」と本文にある。

 日本を代表する経済団体がこう提言するのであるから、それぞれの傘下の個別企業が、採用基準や人材評価軸がどう変わって、どのようなバックグラウンドを持った人材を受け入れるようになったか、パナソニックのように人事や広報が情報公開し、最低でもソニーのように、総括や結果を企業の社会的責任として公表してもらいたい。

(注1)文科省「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」(第1回会議配付資料)※2013年10月より開始
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/57/siryo/1341936.htm

(注2)BLOGOS 2012年1月5日 ソニーの「"シューカツ"ルールを変えよう」は革新的で賞賛すべき(砂田 薫) http://blogos.com/outline/28450/ 

(注3)経団連2013年6月13日「世界を舞台に活躍できる人づくりのために」
-グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言-
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/059.html 
 

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