代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

「日本再興戦略にギャップイヤーは入り、文科省スーパーグローバルハイスクール採択校でも導入が進む」

※この記事はBLOGOSでもお読みいただけます→ http://blogos.com/outline/103301/


2014年の「日本再興戦略」の中に、ギャップイヤー!
 「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」は2013年6月に安倍政権下で閣議決定されたが、この中に大学改革に関する記述がある。それは、「グローバル化等に対応する人材力の強化」の見出しで、「世界に勝てる真のグローバル人材を育てるため、教育再生実行会議の提言を踏まえつつ、国際的な英語試験の活用、意欲と能力のある若者全員への留学機会の付与、及びグローバル化に対応した教育を牽引する学校群の形成を図ることにより、2020 年までに日本人留学生を6万人(2010 年)から12 万人へ倍増させる。」というものだ。中略するが、「高校・大学等における留学機会を、将来グローバルに活躍する意欲と能力のある若者全員に与えるため、留学生の経済的負担を軽減するための寄附促進、給付を含む官民が協力した新たな仕組みを創設する」とあるのは、現在の「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN」につながっている。

 ギャップイヤーについては、定義として、「3か月以上の本組織から離れた社会体験(ボランティア・課外留学・旅)や就業体験」(注1)であり、一部「トビタテ!」の奨学生が重なっているが、本丸はその後の記述にある「就職・採用活動開始時期変更を行うほか、多様な体験活動の促進に資する秋季入学に向けた環境整備を行う」の「多様な体験活動」にあたると考えるのが、自然だろう。つまり、この時点では、内容はともかく「ギャップイヤー」という言葉はなかった。

そんな状況下、2013年10月に文科省に「学事暦の多様化とギャップタームの検討会議」( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/57/index.htm )が立ち上がった。翌年3月まで計5回開催されたが、東大・一橋・慶應等の5学長、経団連の副会長他経済団体から3名、NPO側からETIC.とJGAPの代表理事が委員に名を連ね、産官学民の各セクターから15名のリーダー達により、 「ギャップイヤーの日本や海外の現状や、その在り方」が議論された。筆者は5回中、「世界のギャップイヤーの浸透状況」と「世界の大学のギャップイヤー制度」というテーマで2回情報提供(委員の情報提供は合計5回)をしたが、国家レベルで初めてギャップイヤーが議論されたと言っても過言ではないだろう。その過程で、国際通用性の観点から、東大の造語であった「ギャップターム」を「ギャップイヤー」で議論するという合意が得られた。5月29日に審議内容を集約し、「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて」(意見まとめ)が、検討会議にも全出席していた下村博文文科大臣に手交された(注2)

公的なギャップイヤー制度導入大学の増加で、私的な一般学生の挑戦も加速する!
 翌月6月24日に、「日本再興戦略」(改訂2014―未来への挑戦―)が、閣議決定されたが、「大学改革/グローバル化等に対応する人材力の強化」の戦略の中で、「日本人留学生の倍増に向け、ギャップイヤー等を活用し、希望する学生が国内外で多様な長期体験活動を経験できる環境整備を推進する」とギャップイヤーが記載されている。これは検討会議の審議内容が反映されていることがわかる。日本でも今後、東大や国際教養大に続いて、奨学金や補助金の支援を受けて「ギャップイヤー制度」を導入する大学が確実に増えていく。そうなると、"シャワー効果"ではないが起爆剤となり、自主的にギャップイヤーを取得する若者も、おとなや社会の理解も大きく進むことが期待できる。また無償、低廉、もしくは有給の「ギャップイヤー・プログラム」も登場してくるだろう。(現在の有給の例:JICAの青年海外協力隊や地域おこし協力隊)

 ギャップイヤーの意義は、リーダーシップを持った「グローバル人材育成」と「地域課題解決型人材育成」、それに係る「起業家輩出」だと考える。また、シームレスでの「高校→大学→就活→企業人」という直線的なキャリアが万人にとって、はたしてよいことなのかの問題提起になるとも思っている。ストレートに企業社会に入った後が、年功序列や終身雇用の限界が来ている中、「非連続、所属なしのキャリア」を社会人になる前に体験して、レジリエンス(耐性)を高める効果も期待できるからだ。


先進的な高校(SGH)で、ギャップイヤーが進展中!
 英国で誕生したギャップイヤーは、高校・大学間のキャリアの「トランジション(移行、転機)課題」とも言える。それゆえ、先進的な高校側も敏感に反応してきている。

 国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を目的とした教育活動を支援する文科省の「平成26年度スーパーグローバルハイスクール(SGH)」の採択校56校(246校応募)の取組を概観すると、例えば、順天学園順天高校(東京)は、「SGHの成果を、国内外のアカデミックな大学との高大連携の拡大につなげていき、将来的には日本の高校生や大学生が国際社会貢献活動として取り組めるギャップターム・イヤーの基盤構築をめざして、国際系の各大学や国際的なNPO機関、国際的な企業などとの連携を図っていく」とある。早速、同校は、英国のギャップイヤー・プログラム提供NPOの「プロジェクトトラスト」(1967年設立。スコットランド西沿岸に浮かぶ内ヘブリデス諸島コール島に本部。英国全国から集まった意欲ある青年を訓練して、世界60ヵ国に毎年300人規模を送り出し、既にに7千名以上がグローバルな世界での社会貢献活動を体験している)と連携を模索している。

 昭和女子大学附属昭和高等学校(東京)は、「第3学年次をグローバル・リーダー育成に効果の高いとされるギャップイヤーとして併設大学の海外分校『昭和ボストン』を拠点とした留学プログラムを組み、高大連携の大学準備教育を行う」とあり、これは筆者がJGAP設立時である4年前から提案していた「附属高校の大学入学前ギャップイヤー」の具現化と言える。また、県立長野高校は、「ギャップタームプラン(日本の大学へ進学を希望する海外高校生の短期受入等)」を掲げている。

 他でも、SGHに採択はされなかったもののアソシエイト(国立6、公立27、私立21校)としてグローバル・リーダー教育の開発・実践に取り組む中核的な存在である立教新座高等学校(埼玉)は、今年度から、その名も「ギャップイヤー留学」を実施する。これは現高校3年生を対象に、大学入学前の2月からの1ヶ月間を利用するもので、正確には英国のmini gap(短めのギャップイヤー)に相当する。米国バージニア州にあるメアリーワシントン大学の敷地内にあるランゲージセンターで、1ヶ月間に計100時間の英語の授業を受講し、世界から集う留学生と共に集中的に実践英語を学びという。このプログラムは、単に英語力伸長が目的だけでなく、論理的思考力や批判的思考力を同時に学び、ホームステイで異文化理解の促進から大学進学や就職後にも使える力を身に付けることを目的としている。


ギャップイヤーは、新たな"キャリアの創造"!
 米国・ニューヨーク・タイムスの新年1月4日付の記事が興味深い。見出しは、「In Fervent Support of the 'Gap Year'」(ギャップイヤーの熱烈支持の中にあって)。娘のギャップイヤーに反対していた母親が、徐々に変わって支持していくばかりでなく、下の息子に今度はギャップイヤーを勧めるまでの心情のプロセスが書かれている。教育に関して効率第一主義の米国でも、確実に"異変"が大きくなっている様子が記述されている。データに注目すると、2010 年から2013年の間に、ギャップイヤー・フェア(各地の高校や大学で体験者が語る会)の参加者は倍増し、2012年からたった1年で、ギャップイヤー・プログラム参加者が27%増となっている(米国ギャップイヤー協会イサン・ナイト理事長)。ハーバード大やエール大でも入学者にギャップイヤー取得を推奨していることや、ミドルベリー大やノース・キャロナイナ大の研究では、ギャップイヤー経験者は未経験者より、GPA(成績)が0.1から0.4むしろ高いことなども紹介されている。

 筆者の持論だが、ギャップイヤーの概念は、日本の人材育成に関する諺でいえば、「かわいい子には旅をさせよ(旅、課外留学等)」「情けは人の為ならず(ボランティア)」「他人の釜の飯を食う(インターン、短期就業等)」だ。別に、ギャップイヤーという言葉を使用しなくても、例えば、都会の生徒が地方に「島留学」するのも多様性が学べ、ギャップイヤー的でよいと考える。  comfort zone(ぬるま湯的日常環境)を抜け出して、非日常下に身を置き修行し、時には失敗することは、若い世代にとってソフトスキル開発や生きる力につながり、その"実体験"は大きな財産になることだろう。

 ギャップイヤーは、「空白」でなく「機会」、それは新たな価値であり、"キャリアの創造"である。


(注1)ギャップイヤーの定義と4層構造
スライド1.JPG

(注2)「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて」
文科省ギャップイヤー図.jpg


(関連記事)
2014年5月29日付
「日本もギャップイヤー推進へ~学生の社会経験の支援を!」 文科省有識者会議が報告書提出→http://japangap.jp/info/2014/05/421-1.html

※セミナー告知! 寄稿者の話が聴ける場!これまで大学内では「大学生起業」が議論されることは稀有だった!
1/27(火)JGAP4周年記念 JGAP&TIP*S present「"大学生で起業家"というキャリアを考える」セミナー参加者募集!→http://japangap.jp/info/2015/01/jgap-189.html

記事一覧

代表ブログトップページへ戻る