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名門タフツ大学が来年から50人規模のギャップイヤー制度導入、そしてブラウン大学も検討中!タフツ大学.jpg


米国のギャップイヤーはcomfort zone(ぬるま湯的日常空間)からの脱却がキーワード!

 オスロにある北欧イノベーション・リサーチ・教育研究所の調査によると、ノルウェー、デンマーク、トルコでは半数以上の高卒者が大学入学前に1年のギャップイヤーを取得するが、米国ではペンシルベニア大学博士後期課程に在籍するニナ・ホエ氏は、データはないが「2-10%」と言う。(2013年5月8日付USA TODAY)

 米国タフツ大学(Tufts University)は、マサチューセッツ州メドフォード(Medford)にある私立大学。1852年チャールズ・タフツ(Charles Tufts)が設立し、160年の歴史のある国際的に著名な研究大学として知られている。

 その名門タフツ大学が、2月19日、入学予定者に対し、「タフツ1+4(おそらく入学前のギャップイヤー1年と学部4年間の意)」という1年間のギャップイヤー制度(補助・奨学金付)を来年度から設けると発表した。来年2015年秋に入学予定者の内から、50人規模を募集する。

 上にあるこの「ギャップイヤー・プログラム・キックオフ会」で、基調講演を行ったのは、元陸軍大将のスタンリー・マクリスタル氏。米国民の大規模な社会奉仕活動プログラム「フランクリン・プロジェクト」の提唱者で、米国の若者の自発的な奉仕活動や兵役を支持している人だ。

50人の選抜はタフツ大学ティッシュカレッジ内で行われるが、米国で唯一の大規模な市民参画研究の学術機関として有名だ。このシンポジウムには、学生の活動説明会の他、「シティイヤー・プログラム」という公的機関が行う1年のギャップイヤー制度でニューヨークのサウス・ブロンクス地区での青少年活動に従事した学生の講演も行われている。

 さて、これまで、ハーバード大やMITがギャップイヤーを「推奨」しているのはお知らせしてきたが、実際に「制度」として導入している主要な大学を図にまとめてみた。新 米国のギャップイヤー制度.jpg

 米国のギャップイヤー協会(AGA)はギャップイヤー・プログラムの認証と関連情報提供をミッションとして、JGAPに遅れること1年、すなわち2012年に誕生した。ギャップイヤーの定義は英国のもの(注1)とほぼ同じだが、表現は若干違う。

 彼らの定義は「学生が正規の教育機関を中断し、自己認識を高め、comfort zone(ぬるま湯的日常空間)に挑戦し、考えうるキャリアを試みるために設けられた一定期間。概ね2-24ヶ月。一般的に、旅や自己研修、インターンシップ、就労等を組み合わせること」だ。

そのAGAのイザン・ ナイト代表は、ティーン・ライフ社の「オンライン・ギャップイヤー・ガイド」の中で、「5年以内に全米2000大学に入学する高卒者の5%がギャップイヤーを取得し、多くに大学が奨学金をつけて支援し、そして10年以内に、ギャップイヤーは高校・大学間の"必修"になる」と予想する。

大学のギャップイヤー導入での期待は「リーダーシップ能力、自己認識力、共感能力」の醸成 
 タフツ大学は、ギャップイヤー制度に、そもそも何を期待しているのだろうか。
もちろん根底には、ギャップイヤーには中退防止効果や、学びの明確化、就業能力の向上などの期待があるだろうが、昨年末「ギャップイヤー~大学入学延期は、どのように世界が必要とする人材に変えるのか」を著したヨセフ・オシェア氏(フロリダ州立大学学部生研究室長) は「ギャップイヤーを経験した学生は、よりクリティカル・シンキングが上手で市民意識が高い」と強調する。
 私は日本の文脈でいうと、ギャップイヤーは「グローバル人材」と「社会的課題解決型人材」の輩出に寄与すると考えている。

 元スペイン・アンドラ駐在米国大使で、現在タフツ大学の市民教育・公共サービス学部長のアラン・ソロモン氏は答える。「ギャップイヤー経験者の風を入れることによって、他の学生が"ぬるま湯的日常空間"から抜け出し、リーダーシップ能力、自己認識力、共感能力などのスキルを身に付けることを期待している。」※原文:Tufts is hoping its new program will encourage other students to get out of their comfort zone and learn skills like leadership, self-awareness and empathy.)
 プリンストン大学が導入した時の論拠も、「ギャップイヤー帰還者が、他の学生に好影響を与える」だったことを思い出した。

 やはり、親元や教員から離れ、非日常化で本格的な社会体験(ボランティア・課外留学・目的ある旅)や就業体験をして武者修行をした学生は、点取り虫の受験生上がりの学生よりタフになり、その後の大学での学びの姿勢が"おとな"になるということなのだろう。

 私は、座学から社会との関係性で学ぶPBL(課題解決型授業)やアクティブ・ラーニングが日本で注目を集めているが、ギャップイヤーは、いわばその"究極形"と捉えている。だから、「学業を休み、リフレッシュする」ことだけがギャップイヤーと思い込んでいる人たちは面食らうし、誤解もする。たしかに、それもギャップイヤーの一端であるが、「ギャップイヤーの4層構造」をまず理解しないと、議論すら成立しない。

 そして、今度はアイビーリーグのブラウン大学も、奨学金付のギャップイヤー制度を検討中とのニュースも飛び込んできた。イザン・ナイトAGA代表の予言はまんざら虚言でもないようだ。

 日本でも昨年10月から、東大総長や経団連、日商など産官学民の各セクターの代表16人が集まり、「大学秋入学とそれに伴う半年ギャップイヤー」をオープンに議論する検討会議が始まっている。是非教育関係者や学生や高校生も、議論の行く末やその議事録などにも注目してほしい(注2)

注1:ギャップイヤーの4層構造
http://japangap.jp/info/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E6%8E%B2%E5%87%BA%E7%94%A8%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%81%AE%EF%BC%94%E5%B1%A4%E6%A7%8B%E9%80%A0.jpg 

注2:12/2実施 文科省第2回「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」検討会議議事録を公開
http://japangap.jp/info/2014/03/122-1.html 

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