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「佐賀大の改組による定員減に想う~国立大定員減は安易に行われるべきではない」 佐賀大学.jpgのサムネール画像
(出所:図は佐賀大学ウェブサイトより転載)


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 本日25日付朝日新聞のトップでも伝えられたが、国立大・大学院の入学定員の総数が来年度、減少に転じる見通しだという。 その中で象徴的な大学として、国立佐賀大学経済学部が取り上げられ、来年春入学組から15人減らすことが明らかになった。その理由に「学生の質の保証」を挙げている。

 記事によると、「学内調査で、入試倍率が2倍を切ると入学者の学力が下がる結果が出ており、12年度に1.7倍だった経済学部の定員減に踏み切った」とある。学長は「学力が低いまま入った子は辞めたり卒業できなかったりするケースが多い」と説明している。文科省の担当者は「国立大が、質の保証を目的に定員を減らすのは例がない」と応えたという。

 そもそも、 「競争率が2倍から1.7倍に下がると、学力が下がる。試算では1.5倍になると、学生の平均学力の落ち幅が加速度的に起きくなる傾向がある」とは、どのくらいの年月の定年推移を観ての結果なのか。学術的にも興味があるので、ほんとうなら是非教育学の論文にして発表してもらいたい。学長のコメントからは、入学してくる学生のスペックや地頭を言及しているものの、自ら育てるという意思が伝わってこないのが残念だ。 佐賀大学のウェブサイトを観ると、あからさまな定員減は打ち出していない。別表にあるように、経済学部は改組により、結果的に定員が15人減るという形になっている。

  そこで、「大義」である定員減を伴う「改組の背景」を読んでみた。しかし、私にはわからないことだらけである。 まず、当然ながら最初に「改組の背景」が書かれている。 そこには「入口の明確化と出口での総合教育の必要性」があり、学修目標が明確でない学生が増加している中、改組で 「入学時から明確な学修目標の設定」ができるとある。しかし、おおかたの高校生は経済学部で何をやるかは理解していなく、入学時に狭く学科に分けても、あとでイメージが違って困るだけというのが現状ではないだろうか。

  また、「改組により期待される効果」であるが、一つ目に、「経済学・経営学・法学の3分野を横断した教育の実施」とある。しかし、これまでの2課程で「学際」「領域」で学ぶより、むしろ3学科に「縦割り」されることで、教員のセクショナリズムなども加わり、横断して学びにくくなると考えるのが自然だと思う。 どうして、「体系的なカリキュラムの確立により、3分野の総合的な学修が可能」なのかがわからない。

 二つ目に、「就職先を意識したコア科目群による教育の充実」とあるが、これは改組をしないとできないことかどうかもわからない。素朴に「就職先を意識したコア科目群」って、何だろう。全く何を指しているか不明だし、例示を示されていないので、解釈のしようがない。

 三つ目に「 ゼミ教育を中心にした、きめ細かな教育の実現」と初めてもっともらしい記述になるが、1学年15人を減らして、ゼミ数は不明だが、いいところ1ゼミあたり多くて2、3名ではないか。そうだとしたら、「きめ細かな」は誇大広告に近い。

 佐賀大学の15人定員減自体は大きなインパクトはないかもしれない。しかし、全国に82ある国立大学や80ある公立大学(4月1日現在)が、つぎつぎと都合の良い大義を見つけたとばかり進めていけば、簡単に5千人、1万人の定員減ということにもなりかねない。自分達の出口の「質保証」の努力をせずにあるいは開示もしないで 、入学という入口の学生の質保証を理由に定員削減をしていくとしたら安易であり、これはとても容認できるものではない。

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