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海外ギャップイヤー事情 米国編米国大統領の長女マリアさんのギャップイヤーから考える!?」udaiKIMG1357.JPG


米国の教育雑誌エデュケーション・ウィークに「大学進学前に、ギャップイヤーを取得しよう!」という記事が出た。 この寄稿は、デビット・サンツリーさんで、2001年から始まった国際的な非営利組織 United Planetの創始者であり、会長である。この団体が提供するプログラムは、学生と教師を米国内のギャップイヤーや公共事業について学ぶ機会とをマッチングさせている。

内容は、オバマ大統領の長女であるマリア・オバマさんは、高大間にギャップイヤー取得をし、ハーバード大学への入学を1年延期することにしたが、そのことを議論している。若者たちに小学校から大学まで、ずっと敷かれたレールに従うことを求め、更にこの間に専攻や職業の道を決めることまでも求めているのではないかという問いが原点にある。従来のこういうレールは、若者にとってフェアで現実的な期待になっているのかというところから始まっている。

要旨は以下の通り。

・古代ギリシャの金言「汝自身を知れ」は、デルフィにあるアポロンの神殿に刻まれているが、2千年以上も、それは何世代にも渡って賢明な指針で有り続けてきている。

・結局のところ、大学まで継ぎ目なく学修していくと、最も大切な旅-内面への旅をする時間がまだ取れないというのに、長きに渡って保ち続ける決意をどうして我々は若者たちに望むことができるだろうか。

・ギャップイヤー、インタリムイヤー、ブリッジイヤー、サバティカル(社会人になってからのギャップイヤー)-それを何と呼ぼうと、学術的な探求から離れることは、外的にも内的にも冒険の機会を与えてくれる。それは競争的な学問や大学の社会的な要求から離れて、自分自身について学ぶ時間である。

・多くの学生は、その時間を海外へ、またコンフォート・ゾーン(日常性・ぬるま湯)を超えて外国の思想や言語、そして文化を学びに行く旅行の機会に費やす。ギャップイヤーは、創造的な破壊をもたらす。それは自分の殻を脱ぎ捨てること、
新たな情熱を見出すこと、新しいスキルを身に着けること、見聞を広めること、そして人として成長することである。

・ギャップイヤーの概念は、起源については諸説ある。1960年代、バックパッカーがデルフィ―からゴアまでヒッピーの道を辿ったことに遡るという説。ま、ギャップイヤーは1970年代の英国で、高校の最後の試験を終わらせた後に、大学のスタートまでの間の7-8か月の空白を埋めるために始まったのだという。また第二次世界大戦の終戦時が起源だと強く主張する人もいる。物質的・構造的な戦禍以上に、多国間の繋がりが破壊されれ、政府・教会・NGOが、若い世代の人々が共に信頼を再構築するためにInternational Cultural Youth Exchange Federation(ICYE:国際文化青少年交換連盟) や the American Field Serviceのようなプログラムがギャップイヤーの原点という考え方だ。これらのプログラムは、戦争が破壊した若い世代間の交流を回復させるために役立つと信じて設立されている。

・ギャップ・イヤーとは、単なる20世紀の発明なのだろうか。人類はこの歳月に渡る人間の自己探求という本質的な必要性を、多文化を超えての様々な形で表現しながら認めてきたのではにか。人生の目標ともなる慈愛の心と自然との関りを得るための、見聞を広める旅や洞察力の探求はオーストラリアの先住民アボリジニ―も含めた多様で固有な文化を超えた通過儀礼にある。

・国際教育交流協会によれば、アメリカの多くの短大や大学においてギャップイヤーを取得した学生は、学術的により望ましい成果を上げているという。この10年間でハーバード大学においては、入学見込みの学生でギャップイヤーを取得する数が33%に跳ね上がっている。「ギャップイヤーの利点」の著者であるカール・ハイラ―とラ―・ネルソンの研究によると、ギャップイヤーを取得した生徒達は、帰還後、大学の課程を4年間で履修する傾向がより強く、そして回答者の60%が、その経験が専攻の選択に影響を与えたか決定づけている。

・ギャップイヤーはコストのかかるものである。プログラムは1年あたりで8,000ドル(約80万円)から50,000ドル(約500万円)以上かかるものもあり、大学学費を上回るものも。しかし無償も含め、アイスランド・フィンランド・スイスなど個人が住むには比較的安価な国への機会をもちろんある。

・United Planetや前述のICYEなど費用を賄うため月々の手当てを支給するギャップイヤーの機関さえある。もしギャップイヤーの機関が非営利なら、生徒は出費を賄うための資金を調達することができるし、プログラムの授業料は税控除の対象になっている。

・「マリア効果」によって米国内のみでなく、海外においてもギャップイヤーに弾みがついている。ギャップイヤー・ジャパンの砂田薫代表によると、「マリア・オバマさんのギャップイヤーは、既に日本でも話題になり、大きな影響を与えている」と言う。これはギャップイヤーを取得する学生の興味・関心が世界各地で高まっていることを意味している。

・国内や海外でギャップイヤーを取得しようと、高校卒業で、また大卒で終えようと転職期間であろうと、アメリカ国内外にいるあらゆる学生と大人に、ギャップイヤーを経験する機会が訪れるように願う。それは時間をかけて「汝自身を知る」機会となり、一人一人の内なるコンパスのけん引力を強めることに繋がる。


文JGAPギャップイヤー総研客員研究員 斉藤 美和


(関連記事)
2016年5月27日付
海外ギャップイヤー事情 米国編:「大学を今決めることが不安なら、ギャップイヤーがよい道筋かも!?」の巻(斉藤美和):http://japangap.jp/info/2016/05/post-220.html


2016年1月1日付:「2016年は"ギャップイヤー2.0"の時代!」(砂田 薫)-代表ブログ http://japangap.jp/blog/2016/01/201620.html

2015年8月1日付ス
「今秋から新たに10大学で"ギャップイヤー制度"が誕生する!」(砂田 薫)-代表ブログ http://japangap.jp/blog/2015/08/10.html

2015年5月15日付
文科省が平成27年度「ギャップイヤー・プログラム」の公募状況を公表~応募は38大学。選出は12件程度を予定 http://japangap.jp/info/2015/05/273812.html


2015年1月29日付
「ついに大学に、文科省の"ギャップイヤー予算"が付く!」(砂田 薫)-JGAP代表ブログ
http://japangap.jp/blog/2015/01/-27-httpwwwkanteigojpjpsingisouseikihonseisakudai2s6pdf.html


2013年1月9日付 なんと、大学院が「ギャップイヤー・プログラム」を創った?!~ "起業家精神と経営管理の"ギャップイヤー修了書"が授与される南ア・有力大学院1年専修コースが出現-JGAP代表ブログ
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※「海外ギャップイヤー事情」150超記事の一覧リスト(右ナビ)→http://japangap.jp/info/cat44/

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