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JGAP寄稿者短信:「ボクとアメリカとインドをつなぐ、大学院での2年間」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis卒業)

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オフィスからの景色


「初心、忘るべからず」と、
語ったのは、能楽師の世阿弥。
もともと、自らの過去に切れ目を入れ、変化を起こす強い心、
そして、過去と決別する、変化への切実な思いがこめられていたそうです。

大学院を修了して、1ヶ月。
住まいも、肩書も、ガラリと変わりましたが、
いまいちど、大学院での2年間を振り返り、
新天地で、なにを活かし、なにを求めるのか、整理します。


「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」 ―『ゴールデンスランバー』

振り返れば、人生のどのステージにおいても、
習慣と信頼は強力な味方でした。

1年目の1学期が大学院で最もカコクだったのは、
習慣が通用する自信も、周囲からの信頼もなかったから。

「精神と時の部屋って、こんな感じだろう」と思うほどに、
まいっていた時期もありましたが、結局、自分にできることは変わりません。


「口をとじて ただ脚を...じゃねえ 腕を動かせ!!
いつか必ずやってくる...『できるようになる』瞬間まで」― 『リアル 10巻』

それ以降も苦労は重ねましたが、
はじめに築いた信頼と習慣は、常に大きな支えとなりました。

アウトプットの量・質ともにレベルが上がるコースワーク、
カリキュラム作りにも携わるようになったティーチングアシスタント、
学際的なチームのなかで舵とりを担った共同研究、
集大成となる修士論文の研究、
大学院生活の最後を飾った学会発表、

書き連ねると、なんだか眩しく見えてしまいますが、
院生なら誰もが経験していくことですし、
夢中だったので、今だに終えたという実感も達成感もありません。
ただ、この期間に学んだことは、確かに自分の中に根付いています。

「理論なき実践は盲目であり、実践なき理論は空虚である」― クルト・レヴィン

修士論文の口頭試問は、2年間を振り返る貴重な時間でした。
質問の一つが「大学院を経て、あなた自身の何がどのように変わったか?」

いくらでも変化をあげることは、できたと思います。
それでも、不思議にスラスラと出てきた答えは、

1. 自分自身をより客観的に捉えられるようになったこと。
2. 理論と実践をつなぐ手立てを学んだこと。

以前の自分は、行き当たりばったりの試行錯誤で、理論に盲目でした。
いくつかのインターンを経て、ようやく理論とリサーチの大切さを痛感。
大学院を通じて、より批判的に、客観的に、
広い視野で、物事を見る目が養われました。
自分の発揮できる価値、抱えているバイアスを認識した上で、
引き出しに入った理論と手法を使い分けられるようにもなりました。

「砂をまき続けろ!」

開発分野での仕事の多くは高い専門性が求められ、修士号以上の学位を必要とします。
「幅広い知識と特化した専門性」を持つ人材が好まれ、
「T字型人間」という言葉もよく耳にします。

興味関心は広い方ですし、関連分野を横断的に捉えるのは得意です。
その反面、T字の専門にあたる部分は決めきれないまま。
この記事(http://yoheikato.weebly.com/blog/74)の中でも専門に触れていないのは、そのためです。

そんな時に友人に言われたのが「砂をまき続けろ!」

高い砂山を作るには、裾野を広くする必要があります。
意図的に高くするポイントを定めることもできますが、
一定の範囲内で、砂をまき続けていれば自然と山はできあがってくるのです。

入学当時の僕のキーワードは「参加型の手法」「ユース」「デザイン」「途上国」。
「絞るな」というアドバイザーの言葉を胸に、砂をまき続けた結果、
「参加型評価」「プロセス・ドキュメンテーション」という山ができ、修士論文となりました。
これから現場に出て、実践を重ねていけば、次第に山は高くなっていくはずです。
その際に一つ、忘れてはいけない大切な心がまえがあります。

「私の最大の強みは、『無知』であることを知っていること」

これは、TEDの共同創設者、リチャード・ソウル・ワーマンのけだし名言。
同じように、半世紀ものあいだ、コミュニティ開発に身を捧げた恩師も、

「私にも、わからないことがある」と言っています。

ならば、たった2年でコミュニティ開発をマスターしたと言えるのか。
むしろ、マスターとは、何かを習得した到達点にあたるのではなく、
マスターとしての心得を胸に、精進し続ける過程を指すのではないでしょうか。

とはいえ、一度、現場に出れば、ついてくる肩書は「専門家」。
一方、どんな肩書があろうと、それだけで住民が話を聞いてくれるわけでもありません。
だからこそ、現場に出て、身につけた理論と手法を実践し、学び続ける必要があるのです。
ここ、インドには、そんなチャンスがあふれています。

「インドでは、正しいことの真逆も、また正しい」―ジョーン・ロビンソン

今月から、以前書いた(下記「大学院卒業後の進路」)タタ財団のプログラムで、インドに来ています。
各地のNGOを視察し、
ITを取り入れた教育プログラムの課題とインパクトを評価するのが仕事です。
詳細と途中経過については、いずれ詳しく綴っていきますが、
修士論文で扱った内容を応用する、またとないチャンスなのです。
途上国、しかも多様性の国、インドで。

「バッターボックスでは、二度と同じ体験ができない」―イチロー

9月以降については、世界銀行のAnalyst Program を受けていたのですが、
最後のところで落ちてしまいました。
実力的にも、タイミング的にも、今ではないようが気がしていましたが、
晴れて、もともと決めていた「20代は現場で経験を」に従うことができます。
幸いにも仕事を通じて、NGOと関わることが多いので、
就職の機会も探りつつ、一瞬一瞬の経験を糧にしていきたいです。

(関連記事)
2012年7月8日付 フロンティア・フォーラム寄稿 No.75:「米国留学、国際NGOインターンを経て、バングラデシュ~国境なきコミュニティデザイナーを目指している私」 加藤遥平さん(当時、筑波大学5年) 
http://japangap.jp/essay/2012/07/ngo.html

2014年11月10日付
JGAP寄稿者短信:「大学院卒業後の進路~これからのキャリアを考える」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2014/11/jgap-uc-davis.html

2014年8月30日付JGAP寄稿者短信:「米国大学院生の懐事情 ― 留学費用についてのあれこれ」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) | ギャップイヤー・ジャパン: http://japangap.jp/info/2014/08/jgap1-----uc-davis.html

2014年8月3日付 JGAP寄稿者短信:「大学院1年目を振り返って --- 米国大学院で学んだ個人戦と団体戦」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2014/08/jgapuc-davis-2.html

2013年12月16日付 JGAP寄稿者短信:「米国大学院の教壇で学んだこと」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2013/12/jgap1220-happiness-architect.html

2015年1月17日付JGAP寄稿者短信:「2014年から2015年へ~振り返りとこれからのテーマ」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2015/01/jgapuc-davis-3.html


ブログ:The Rad Visionary
http://yoheikato.weebly.com/1/post/2013/12/161.html