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JGAP寄稿者短信:「されどクラクションは鳴り続く。インドの喧騒と静けさの中で~タタ財団でのフェローシップ」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis卒業) 加藤さん1.jpg


インドに来て、1ヶ月半が経ちました。
日々の小さなトラブルは絶えませんが、大きな病気もなく元気にやっています。

最初の調査地がコルカタで、ベンガル語圏ということもあり、
生活上の知恵や仕事をする上での心構えは、バングラデシュと変わりませんでした。

リキシャやCNGドライバーとの交渉やバスの乗り方は慣れたもので、
「5分待って!」が、1時間にも数時間にもなってしまう魔法や、
日常的な交通渋滞への対応も、そこまでストレス無くこなしています。

「バングラと大して変わらないだろう」
そんな(失礼な)思い込みも、あながち間違いではない?
と思いましたが、実際は大ハズレ。

最初に居たムンバイでは、
滞在地域が西洋化のあまり、カレー屋を見つけられなかったこと、
通りに立ち並ぶ荘厳なヴィクトリア様式の建物、
リキシャ、CNGの居ない道路など表面上の違いだけでも、これだけ。

コルカタでは、微妙に違うストリートフードのラインナップに困惑し、サモサを頼んだら、コロッケみたいなものが出てきたり、チャドカンで使われるチャイ/チャーのカップが違ったり、発見はいたるところにあったのでした。


インド最大の財閥、タタ・グループ
そんな国、インドに来た理由は、タタ・グループが英米の大学と連携して行う、フェローシップ(http://www.tatasocial-in.com/)に参加するため。

タタ・グループでは、グループの頂上にタタ財団を据え、その傘下に持ち株会社のタタ・サンズ、さらにその下にあるグループ企業(タタ・モーターズ、タタ・スチールなど)が利益の一部を財団に還元し、財団が社会貢献活動に従事する、という体制になっています。

各グループ企業内にもCSR部門が存在し、そこが独自の社会貢献活動を行っています。

フェローシップの内容は、いずれかの企業のCSR部門に派遣され、コンサルタントのような形で、2ヶ月間与えられたプロジェクトに取り組むというもの。
僕の派遣先は、グループ企業ではなく、タタ財団。

主な仕事はパートナーのNGOを視察して周り、タタ財団が支援するITE(Integrated Approach to Technology in Education)というプログラムの課題を分析するというもの。
ITEとは、PCやカメラなど様々なテクノロジーやマルチメディアを活用し、フィールドワークなどを通じて生徒主体の授業を実践しようというものです。

今回はサーベイなどを通じた定量的なプログラム評価ではなく、参与観察やインタビューなどのエスノグラフィックな調査を通じて、具体的なストーリーを拾い、映像(ドキュメンタリー)にまとめるというものです。
これまで、コルカタに始まり、ハウラ、シャンテニケタン、アッサム、現在のバラナシまで、5つのNGOの活動をリサーチしてきました。


気付き
移動ばかりで、落ち着かない日々を送っていますが、現場から学べることはとても刺激的です。
2年間の大学院で学んだものが、「活きている!」と喜べる場面もあれば、「鈍ってしまったな」「甘かった」と苦渋をなめることもしばしば。

特に、「現場は待ってくれない」ということを痛いほど実感しました。
「一つの問い」をじっくりと考え続けた大学院生活とは違い、現場では目の前で起こる一つ一つの事象に素早い判断が求められます。

また、農村や都市スラムの住民が抱える課題の深刻さも再認識することにもなりました。

ある農村の少数民族に立ちはだかる壁は、言語と文化。
家庭では少数民族の言語を使うため、学校で使われるベンガル語に戸惑う生徒。
一方で、彼らの文化を理解できない教師たちは対応に困り果てる始末。
そして、立派な大学を構える都市からたった数キロという、この村には、トイレが一つも存在していませんでした。

ムンバイ、デリーなどの都市や観光地のイメージが先行しがちですが、インドの国民の大半は農村に暮らしています。
都市化が急速に進んでいるとは言え、7割ほどは未だに農村に居るのです。

都市人口の中にはスラム居住者も含まれ、農村とは違った課題を抱えています。
ドラッグの売買が主な生業というスラムでは、ドロップアウトの様々なリスクに晒されながらも、家庭のサポートも得ずに学び続ける子ども達が居ました。

農村、都市スラム、それぞれの環境がどれだけ過酷であっても、そこには生活する人々が居て、未来を担う子ども達が居ます。
彼らの将来が、そしてコミュニティの未来が少しでも明るくなるような、そんな教育機会を提供することが必要とされています。

それぞれの現場で、このような難しい課題に挑む、NGOスタッフ、教師たち、そして、貪欲に学ぶ子ども達のストーリーを、この仕事を通じて、少しでも多くの人に伝えていけたらと思います。加藤さん2.jpg

(関連記事)
2012年7月8日付 フロンティア・フォーラム寄稿 No.75:「米国留学、国際NGOインターンを経て、バングラデシュ~国境なきコミュニティデザイナーを目指している私」 加藤遥平さん(当時、筑波大学5年) 
http://japangap.jp/essay/2012/07/ngo.html

2015年7月10日付
JGAP寄稿者短信:ボクとアメリカとインドをつなぐ、大学院での2年間」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis卒業) http://japangap.jp/info/2015/07/jgap20142015uc-davis-1.html

2014年11月10日付
JGAP寄稿者短信:「大学院卒業後の進路~これからのキャリアを考える」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2014/11/jgap-uc-davis.html

2014年8月30日付JGAP寄稿者短信:「米国大学院生の懐事情 ― 留学費用についてのあれこれ」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) | ギャップイヤー・ジャパン: http://japangap.jp/info/2014/08/jgap1-----uc-davis.html

2014年8月3日付 JGAP寄稿者短信:「大学院1年目を振り返って --- 米国大学院で学んだ個人戦と団体戦」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2014/08/jgapuc-davis-2.html

2013年12月16日付 JGAP寄稿者短信:「米国大学院の教壇で学んだこと」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2013/12/jgap1220-happiness-architect.html

2015年1月17日付JGAP寄稿者短信:「2014年から2015年へ~振り返りとこれからのテーマ」(加藤遥平さん、米国大学院UC Davis在学中) http://japangap.jp/info/2015/01/jgapuc-davis-3.html


ブログ:The Rad Visionary
http://yoheikato.weebly.com/1/post/2013/12/161.html