代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

教育改革を実行するための円卓会議 
 昨年9月に都知事および都知事が委嘱する学識経験者や経済人等による「教育再生・東京円卓会議」が立ち上がった。設置について、石原都知事は6月の議会で次のように説明している。

 「戦後、我が国は正当な歴史を教えることもせずに、官僚に表象されるような先行事例を学び追いかけることに長けた人材を効率よく生み出すための教育が惰性のように続き、子供から個性や想像力の芽を摘んできました。このままでは、子供に海図・チャートも無しに21世紀の海へ乗り出せということになりかねません。知力・体力・人間力を備え、自信と誇りを持って世界と渡り合える人材を育てるために、従来の制度や常識、慣行に囚われない新しいシステムが求められております。そこで、破壊的な教育改革を議論し発信してまいります。高い見識と類い稀な人生経験を持ち、国際感覚も豊かな方々からなる円卓会議を設置いたします。」


因習にとらわれずに検討 
 目的は 少子高齢化、国際化の進展など社会・経済状況が大きく変化する中、どう次世代リーダーを育て、社会の中で真に自立させられるかを従来の制度や常識、慣行に囚われずに多角的に検討するということだ。メンバーは猪瀬副知事、葛西敬之海陽学園副理事長・東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長、中島嶺雄国際教養大学理事長・学長、原島文雄首都大学東京学長。既に2回開催されている。


ソーシャルメディアの効用を認めない都知事
 石原都知事の限界は「携帯電話のメールやインターネット上のみで意思を交わし合う若者たちが増え、空疎で実質を欠いた関わりでは、人間同士の真の連帯を築くことは、とてもできず、個性がなく、ひ弱で内向き志向の若者たちが増えるばかり」(11月30日都議会)の発言に見るように、明らかに触ったこともないソーシャルメディアの効用を断罪することなど枚挙に暇はないが、一方よいこともたくさん言っている。

おとなは若者の挑戦を引き出し、力強く後押しすることが肝要
 例えば、「日本の未来を託す次の世代を逞しく育てるのは大人たちの責任だが、我が国の教育制度は極めて画一的で、結果の平等をいたずらに追い求め、若者の可能性を潰してきた」「若者が未知を恐れその特権である情熱やエネルギーまでを失っては、日本は二度と立ち上がれない。ならばこそ、全国の若者が集まる東京から彼等を刺激して挑戦を引き出し、力強く後押しをしなければなりません」(2月8日都議会)

ギャップイヤーを議論の最初に切り出した国際教養大学の中島理事長・学長
 さて、メンバーの中島氏は、11月16日の第1回円卓会議でギャップイヤーをほぼ最初の主要主張で紹介している。
 それは、「失われた20年」期間に同様に落ちこんでしまったのは高等教育であり、世界に飛び出すような若者をどんどん育てなければいけないという文脈の中、のちに本年元旦付「広報東京」で「大学入学前に社会体験を」と見出しがついているが、こう切り出す。

 「国際教養大学は、ギャップイヤーをやっています。9月入学の学生を対象にしていて、秋に入試をして、次の9月まで自分の計画したボランティアをやったり、あるいは対外活動をするんです。例えば福岡から来た女子学生が半年間ぐらい、福岡の農場に住み込みをしました。そうすると、その農場にはフィリピンからの労働者がたくさん来ていて、本当によく働く。どうしてそんなによく働くのかと聞くと、やはり貧困なんですね。そのことを大学に入る前にまとめてレポートを書いて、それに対して単位を研修扱いで6単位与える。そういうようなことを含めて、いろいろなシステムを作ってやれば若者は食いついてくるんです。今の若者は内向きで行かない、外に行きたくないというのは、やはり大人の責任です。」


都は4月の新年度から都立高校生を"単位認定"の海外留学へ派遣
 東京都は12年度から「かわいい子には旅をさせよプロジェクト」をスタートさせる。都立高校生や大学生、若手職人らの留学や武者修行を所得に応じて支援する方針だという。国際競争が激しさを増す中で、外国人と対等に渡り合える若者を育成するのが狙い。計画では、2年生の9月から1年間留学する。現地の高校に1年間在籍してホームステイをしながら、大学の講義も受ける。 留学は単位として認定し、3年間で高校を卒業できるようにする。20年度までに3000人の留学を目指す。そして、若手職人や若手社員の技能習得や海外研修含め、 20年度までに1万人の支援を目指す。


ギャップイヤーは日本の三つのことわざの統合概念
 私は、親元離れた非日常下での社会体験・就業体験を意味するギャップイヤーの要素は、3つの日本のことわざを体現することでしかなく、それほど突飛なことではないと言い続けてきた。
すなわち、最初の2つは社会体験、3つめは就業体験そのものである。
・ 「かわいい子には旅をさせよ(手許からはなしてつらい経験をさせ、 世の中の辛苦をなめさせた方がよい)」は課外の国内外留学
・「情けは人のためならず(情けを人にかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来る)」はボランティア
・「他人の釜の飯を食う(他家に奉公するなどして、多くの人にもまれて実社会の経験を積む)」はインターン

 東京都のこのプロジェクトはギャップイヤーのコンセプトが反映されて結構素敵で、他の自治体でもぜひ見習って予算化してほしい。財政は厳しいが、次世代への的確な教育の投資なくして、日本の未来はないからだ。

 
参考サイト:
東京都の「かわいい子には旅をさせよプロジェクト

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