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「東大新案浮上で "ギャップターム"という和製英語を消滅させる頃合いだと考える!~『4月入学、9月始業、3月卒業』で入学時期の"空白期間"はなくなる 」

※この記事はBLOGOSにも転載されています→http://blogos.com/article/49080/

新案である"春入学の秋始業"は2月に発表された「一橋大案」に近似
 2017年度に秋入学への全面移行を目指していた東大が、 2014年度から現行の春入学を維持しつつ、正規授業を秋から始める学期スケジュールの導入を検討していることが分かった。この新案は2月下旬に報道された「一橋大案」に近い。一橋案は、「春入学で秋学期までを"導入学期"、4年次の最後の3カ月を"修了学期"とし、実質的な学部教育は7学期(3年半)で終え、春卒業する」というものだからだ。両大学とも、現在の春入学・春卒業の枠組みのまま、国際標準の秋入学に合わせた授業日程が組める利点があるとしている。

 一橋案との違いは、 24日付朝刊でスクープした読売新聞から読み解くと、
1.東大は、入学した年の4~8月の5ヵ月間を「導入学期」ではなく、「導入教育」と呼んでいること
2.入学した最初の4・5月は「フレッシュ・プログラム」とし、受験勉強から離れ、大学で何を学ぶかを考える。
3.初年次の6・7・8月は、海外の研究者や学生を招いた「サマープログラム」となる。
2.3月の卒業前の短い2ヶ月間を「8学期」としていること
3.従来の「夏休み」は8・9月だったが、2年生以降も6・7・8月を「サマープログラム」期間として、海外プログラムに参加しやすくした
4.「冬休み」は短く、1月の半月程度
5.学期は「春期」が「1月中旬から5月末」、「秋期」が「9月から12月」と特徴的

となるが、もう一つある。


4~8月の5ヶ月間の"ギャップイヤー"は「必修」から「選択制」へ!
 それは、「新入生の希望者には、"導入教育"の5ヵ月間をボランティアや短期留学などをする"ギャップターム(空白期間)"も選択できる」としていることだ。当初は「大学入学前に入学予定者全員が、いわば"必修"として社会体験・就業体験を行う"半年ギャップイヤー"を取得する」構想だったが、今回案では「選択制」となった。実施予定が2017年度とスピード感に欠けていたが、2014年度を見込んでいるため、導入の「前倒し」とも解釈できる。

 すなわち、2年後に東大の"ギャップイヤー生(英語でgap year student)"が最大3,000名(1学年定員)も生まれる可能性が出てきたともいえる。この試み自体は、素直に評価したい。内容はこれまでの東大側の見解だと、社会体験(ボランティアや国内外の課外留学等)・就業体験(インターン等)に関して、大学側からのプログラム提示型と、学生側の自主的な計画書提出型の二本立てだ。彼らが、どんな活動プランを描くか、そしてそれによって、どのようなスキルを獲得し、リーダーシップや異文化理解、問題解決能力等を高められるか、将来のキャリアにつながる職業観を醸成できるか楽しみだ、

参考まで、国際教養大学のギャップイヤー生の自主的活動・研究・研修の例を挙げてみる。

A君 「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」で、カンボジアで研修。内容は、地雷原での地雷や不発弾の除去作業の見学、井戸掘り作業の補助、村として行っていたゴミ削減活動への参加、単身ホームステイによる住民との交流など、とても内容の濃い経験をすることができた。  

B君 タイで自給自足のための畑造りをしている団体のもとでボランティア を経験。異国の地での慣れない生活や、世界各国から集まった他のボランティアのメンバーとの交流を通して、異文化とふれあうことの大切さや、それに伴う難しさを経験できた。

Cさん 国内農家で外国人労働者を雇用しているところでの体験プログラムを経験 外国人被雇用者と共に作業をする体験を通して、中学時代から新聞記事で知って興味があった外国人労働者の雇用問題についてより深い理解ができた。

D君 4月から8月までアフリカのガーナでボランティア活動

E君  カンボジア向けソーシャル・ファイナンスの事業体でインターン

F君  日本には国境や米軍基地で悩まされている地域があり、東京から自転車で行って風を感じ、直接住民にインタビューし、結果を論文にまとめる。
(出所:10月24日 「京都教育懇話会」発表資料)

意味不明な和製英語の"ギャップターム"は秋入学が前提だったので、不用になるはず! 
 ただ、もし讀賣の報道が正しいなら、未だに社会体験・就業体験を「ギャップターム」という意味不明な和製英語を使っているので、正してほしい。「ギャップターム」の言葉の誤謬は、再三、国際教養大の中嶋 嶺雄学長や私も指摘してきた。まずもってネイティブ含め、外国人には通じない。東大にも申し入れてきたが、「英語」と信じて使用する学生が恥ずかしい思いをする懸念をしている。

 簡単におさらいすると、
①東大は3月の「最終報告書」を読めば明らかだが、ギャップイヤーをの「イヤー」に縛られて、3か月以上で使用できる概念であることを「中間報告書」段階で知らなかった。
②「ギャップ」と「ターム」は並べると"食い合わせ"が悪く、全く言葉の意味が掴みにくいものになってしまう。「ターム」は期間という意味で東大は使用しているが、大学で「ターム」と言うと、英国の3学期制の1学期を指すか、「言葉・用語(例:テクニカル・ターム)」を普通イメージしてしまう。
(参考:BLOGOS「東大の"ギャップターム"という言葉は意味不明!」 http://blogos.com/article/29937/ 
2012年1月27日付「朝日新聞」東京本社版夕刊社会面「和製英語 本場はギャップ"ターム"でなく、"イヤー"」)

 東大がこれまで使用していた「ギャップターム」という言葉は、「入試時期は変えずに、入学は秋」が前提だった。それゆえ、半年の「空白期間」が生じ、その時期と課外活動を表す言葉をギャップイヤーでよいのに、ギャップタームと呼称していた。しかし、新案は秋でなく、従来通りの4月入学になるので、「ギャップ・ターム」使用の前提は完全に崩れたといえる。4月から8月の期間は新たにフレッシュプログラムとサマープログラムと名付け、"導入教育"になる。そう考えると、「ギャップターム」という言葉の"居場所"はなくなり、死語になると考えるのが普通だ。


名古屋商科大学が東大に先行する学部内の自己を鍛え、耐性を創る「ギャップイヤー・プログラム」
 ギャップイヤーの概念は、大学入学の有無に関係なく使用できる。名古屋商科大学は、在学している1年生・2年生の希望者に、海外での社会修行である「4-7月の4か月研修プログラム」を提供していて、東大が考えているモデルに近い。当然ながら「ギャップイヤー・プログラム」と名付けている。このように、学術機関たるもの、和製英語の使用など論外で、ましてや国際的に認知されている概念や言葉を正しく使用するのは当然の責務ではないだろうか。例えば、「マーケティング」は、どこへ行っても「マーケティング」だ。東大は、この新案を機に、「ギャップターム」というどう考えても無理のある言葉を死語にすべきだし、他の"国際拠点"を目指す大学が、「和製用語」を疑わずに鵜呑みにし、追随するのも滑稽なので、即刻やめたほうがよい。

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