代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

「社会的課題にチャレンジする若者養成をミッションとする"ギャップイヤー社会起業"が英国と韓国で誕生!」


※この記事はBLOGOSにも転載されています。→http://blogos.com/article/48801/


ギャップイヤーの効用はシンプルには"ライフスキル"の習得
  英国シンクタンクのデモス(Demos)によると、年間5万 人以上の英国の若者がギャップイヤーで世界に飛び、ギャップイヤー・プログラムを専門とする提供機関が85団体あるという。

 なぜ、こんなに「ギャップイヤーなのか?」は、英語文献では、よく"ライフスキルの習得"という言葉が出てくる。親元や教員から離れた非日常な生活の中、国内外で就業体験(インターン)や社会体験(ボランティアや語学習得などの課外留学等)をすることで、意思決定力やリーダーシップ、一人で暮らせる自主性・自立心を醸成できるという高等教育の人材育成の文脈で 語られる。平たく言うと「かわいい子には旅をさせよ」「他人の釜の飯を食う」「情けは人のためならず(あるいは利他)」の具現化だ。その価値はうまくマネージできれば、自明で誰も疑わないし、検証しようとする者はほとんどないだろう。私はこのことは、3月に招待論文(1万字)で紹介している。
※参考論文:「ギャップイヤー導入による国際競争力を持つ人材の育成」(日本学生支援機構『留学交流』3月号)
http://www.jasso.go.jp/about/documents/kaorusunada.pdf


ギャップイヤーの本国で「ギャップイヤー社会起業ベンチャー」が誕生!
 50年の歴史がある英国の社会起業家の中間支援組織「ヤング・ファンデーション」に3年半勤務していたジャック・グラハム氏(共著に『Growing Social Ventures(成長する社会起業)』)が、大学入学前の高卒者の期待の変化を読み取り、英国内の身近な社会的課題に挑戦することに特化した「ギャップイヤー・プログラム」を思いついた。今年3月に、その事業を行っていく社会起業の名称は「Year Here」。「"1年"を海外ではなく、"ここ"英国で」という思いからのネーミングだと推測する。私のブログのタイトルは「Jギャップは"社会変革"のイニシャル」で、「ギャップイヤーはソーシャル・イノベーションに寄与する」という意味だったが、「我が意を得たり」の心境だ。

 具体的には、若者に海外ではなく、英国国内にとどまってもらい、"地域変革"のために一汗かいてもらうという「ギャップイヤー・プログラム」だ。これはソーシャル・イノベーションの促進(社会起業支援)を行っている「ヤング・ファンデーション」が後ろ盾になっている。今後社会起業の「Year Here」は、大望があって起業家精神に満ちた若者たちに地域や地元の社会問題に取り組んでもらい、その解決を目指す。「Year Here」の顧問には、「大卒後ギャップイヤー・プログラム」として解釈できる米国ティーチ・フォー・アメリカを経験し、15年の歳月、社会起業でキャリアがあるアンドレア・コールマン氏を迎え入れている。「Year Here」 は、現在スタートアップ期にある社会起業(social enterterprises)や小規模慈善団体を声を掛け、若者達を受け入れてくれるインターン先(「パートナー」と呼称)を募集している。今後募集する「フェロー」と呼ばれる各"ギャップイヤー生"はそのパートナー団体でインターンとしてまず3 カ月働くことになる。その後の6 ヶ月は、非営利団体・学校や託児所など、より大きな組織の職場の前線に立ちスキルを磨く構想だ。

 「組織は大きくなるほど、イノベーティブでなくなるが、若者には何か意義ある仕事を提供したい」「できれば、プログラムに参加した若者は、その後もなんらか継続して地域問題克服に尽力してほしい」と代表のグラハム氏は語る(ガーディアン電子版3月16日付)。また、BBCのインタビューには、「今や、大学学位だけでは不十分で、ギャップイヤーで社会課題に直接関わることで、スキルや経験、そして真の人的ネットワークを構築できる」と発言していて血気盛ん。そして、現在1期生を先行募集中だ。


米国では、09年に非営利で高校卒業生向けに「Global Citizen Year」が先行~「大学入学延期制度」がギャップイヤーを呼ぶ
  米国では、大学入学前の高校卒業者を対象に「Year Here」同様ソーシャル・イノベーションの文脈で、「Global Citizen Year」がNPOとして08年に誕生している。09年に「フェロー」という名で、10代の高校卒業生を途上国に約1年送り出しをしている。 代表のアビー・ファリック氏は、ハーバード・ビジネス・スクール在学中、自身が米国の「ピース・コー(平和部隊)」に大学入学前に参加したかったのに資格がなかった無念の想いを胸に、その構想と事業をプレゼンしていた。今年は研修後92人をセネガル、ブラジル、エクアドルに送り、9か月間ボランティアで活躍してもらうプログラムに成長している。中身は現地で、語学や文化を学ぶと共に、小学校の図書館造りやコーヒー農園での就業体験が待ち構える。

 このプログラムは、実は大学も注目している。既報だが、ニューヨーク市内にある "都心型"大学でリベラルアーツを標榜(ひょうぼう)しているユージン・ラング・カレッジ(ザ・ニュー・スクール大学傘下)が、今期から提携し、この1年間プログラムを修めると、来年晴れて「2年生」として、大学に入学できるのである。この仕掛けは、30単位が付与されるからである。つまり、ギャップイヤーは「1年分の総授業に相当」と大学が判断したことになる。

近いものに、プリンストン大学の無償のギャップイヤー制度があるが、これはあくまで、"大学入学予定者"が、途上国で社会貢献するプログラム。1年後は入学して新1年生になる。そう考えると、東大が07年度に構想している「秋入学に伴う全学半年間のギャップイヤー(ギャップタームは和製英語)」は、世界的に観て突出もしていないと思える。入学前の半年間は事前研修の「必修」扱いと考えれば、的外れでないことはご理解いただけるのではないだろうか。

 さて、プログラム参加費用は28500ドル(約220万円)と有料だが、「フェロー」の8割が公的・私的助成金など費用の支援を受けている。また、親の所得にもスライドしていて、フェローの3割が奨学金活用で費用なく参加しているのが素晴らしい。米国では、大学入学後、学部変更が8割にも及び、その結果、多くの学生が卒業まで5年かかると言われている。なかなか18歳で何をしたいかを明確にできるのは限られた"おませな"生徒しか無理なのかもしれない。そこで、米国でもハーバード・MIT・スタンフォードなど一流大学の「入学延期制度」の導入大学が注目されてきた。日本でも、これは是非導入してもらい、ギャップイヤーが取得されやすい環境を作ってほしいと願う。


韓国では、エリート官僚の旗振りで、社会的企業「Korea Gap Year」が1月に誕生!中国は?!
 一方、韓国は、徴兵制というある意味「強制ギャップイヤー」が存在するため、ギャップイヤーは成立しにくい。あるいは、サムスンのように、企業内で「ギャップイヤー制度」があるので、高大のつなぎでのギャップイヤーの浸透はどうかとされていたが、今年1月、英国同様「社会起業」として誕生した。

 韓国では、「社会的企業育成法」が07年に施行され、現在認証された「社会的企業」は500を超えている。その仕組みを活用したケースといえる。旗振り役は、実は大統領府の若手エリート官僚4人だったことが取材した結果わかった。韓国の若者にも、やはり本格的な社会体験・就業体験が必要との思いから設立されたという。名称は「Korea Gap Year」とそのものズバリ。ちなみに中国も、9月に国営テレビ「中国中央電視台」の英語討論番組「Crossover」でギャップイヤーをテーマに30分議論しており、なんらか大きな動きがあるかもしれない。


日本では、島根県・津和野町の「町長付インターン(1年)」が4月にスタート
 日本でも、今年4月から1年の予定で、島根県・津和野町で「町長付インターン」が首都圏の元気な大学生4人を招き、スタートした。
※参考エッセイ:「なぜ東京の若者が島根・津和野で、"町長付"ギャップイヤーなのか?!」 福井健さん(国際基督教大学2年=一時退学中) http://japangap.jp/essay/2012/07/post-27.html

 ギャップイヤーは「グローバル人材」の一つの形として日本では注目されていたが、実はもう一つ「社会的課題克服人材」としての側面がある。私が夢見るのは、国内に1800ある市町村が1つの自治体で平均10人の学生インターンを1年間迎えれば、1学年55万人の大学生のうち、1万8千人の受け皿ができるということだ。若者が地方や限界集落に入ると、思ってもみないソーシャル・イノベーションが起こるに違いない。その意味でも、英国・韓国、そして"課題先進"津和野の今後に注目している。

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