代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「司法修習を1年間延ばした理由~私のギャップイヤー」鬼澤秀昌さん.jpgのサムネール画像

鬼澤 秀昌(Teach For Japan 職員)

1.初めに
 私は、司法試験合格の後に行われる司法修習(1年間の研修)と決まっていた法律事務所への入所を1年間延ばしました。そして今は教育格差の是正と若者のリーダーシップの育成を目指すTeach For Japanという教育系のNPOで常勤職員をさせていただいています。

 司法試験を目指して合格した後は、司法修習を早く終え、先へと進みたいと思うのが受験生だと思います。にもかかわらず、自分がなぜここで1年間NPOで働くギャップイヤーを取ることにしたのか。そのことについて、少し書かせていただきたいと思います。


2.自分がやりたいこと①
 自分がやりたいことは、ビジネス法務を通じて、志を持って多くの人々の喜びや安心を生み出そうとしている企業や社会起業家、ソーシャル・イノベーションに関わる人々を支援することです。

 当初はビジネスには関心がありませんでしたが、ビジネスコンテストを運営するサークルの活動を通じ、考えが変わりました。ビジネスにおける思考が面白いと思っただけではなく、様々なビジネス関係の本や記事を読んだりしているうちに、実はビジネスというのも、「満足の対価」として金銭を得ているのだということに気がつきました。今有名な大企業も、大きな志に支えられています。ビジネスはより多くの人々の喜びや安心などの満足を生み出すのに貢献できる点に大きな魅力を感じました。

 そして、私は「社会のルール」としての法律にも興味がありましたし、色々な組織を支援したいと思っていたので、ビジネス法務の弁護士を目指すようになりました。


3.自分がやりたいこと②
 しかし、ビジネス法務に携わる先輩の弁護士の話を聞く中で、それは、大企業などの一部の人々のみを対象にしているのではないかと感じるようにもなりました。自分としては、もう少し多様な人々に貢献できないかと考えるようになりました。そう考えていた矢先に出会ったのが、Table For Twoの小暮真久代表が書いた『「20円」で世界をつなぐ仕事 - "想い"と"頭脳"で稼ぐ社会起業・実践ガイド』でした。

 非常にスマートに多くの人々の喜びに貢献出来るその仕組みに驚き、ビジネスを通じて社会的課題の解決の実現を目指す、「ソーシャルベンチャー」に興味を持ちました。そして、とにかく現場を知りたいと思い、SVP東京というソーシャルベンチャー支援会社でインターンをさせていただくことになりました。何より驚いたのは、関わっている人々が皆情熱や志を持ち、とても楽しそうに活動している点でした。

 そして、SVP東京のイベントを通じて今職員となっているTeach For Japanに出会い、そのモデルやスタッフの熱意に感銘を受けました。スタッフとして関わるうちに、子どもたちや、子どものために本当真剣な先生たち、そしてそれを支える魅力的なスタッフにどんどん惹かれ、彼らを支えることが自分の喜びとなっていました。


4.葛藤~ここでやらずに後悔しないか?!
 昨年法科大学院を3月に卒業し、司法試験を5月に受け、結果発表は9月にありました。NPOであっても人を雇い、企業や自治体と契約し、知的財産権を持っていたり利用したりする以上、ビジネス法務の知識が必要です。そこで、9月の合格発表までの間はTeach For Japanの法務面でのサポートをしていきました。

 その活動をしている中で、将来弁護士としてNPO等の社会起業を支援するのであれば、常勤職員として活動したら、その仕組みがより実感でき、適切なアドバイスが出来るのではないかと考えるようになりました。団体の実務や実情を理解することは将来アドバイスする上で役立ちますし、NPO出身の弁護士というのはキャリアとしても珍しく他の弁護士との差別化も可能です。合格発表の後、具体的に将来のことを考え始めると、その気持ちはさらに強くなりました。

 その時、Teach For Japanでも偶然にもバックオフィス全般担当の常勤職員の募集をしていました。キャリア形成のみならず、今急成長しているTeach For Japanのバックオフィスで事業を支える仕組みを作っていく経験は、他では出来ないのではないかと思いました。

 しかし、競争が激化する弁護士業界の中で、1年間遅れをとることは将来的に不利になりうるのも事実です。先輩の弁護士や友人にも相談したりして、本当に悩みました。

 このような中、最終的な決め手はやはり「ここでやらずに後悔しないか」ということでした。弁護士になれば一年間NPOで常勤職員として働くのは非常に難しくなります。一度はNPO等に身を置きたいと思い続けてきた以上、このタイミングを逃したら後悔するのは目に見えていました。

 そう考え、内定をいただいている事務所の先生にその思いをお伝えしたところ、1年間限定で職員となることも認めていただきました。


5.最後に
 結局1年間延ばした理由は、究極は「後悔したくないないから」ということに尽きます。今は、Teach For Japanの事務局職員として、ミッション実現に全力を尽くしています。また、今だからこそできることとして、ビジネス法務に携わりそのスキルを利用してプロボノを積極的に行っている弁護士のグループ(BLP-Network)を立ち上げたりもしています。

 今後は、この1年間の経験を生かし、ビジネス法務に携わる弁護士として、志を持って頑張る人々が安心して事業を拡大・展開できるようにすることで、一人でも多くの人々の喜びや安心に貢献していきたいと思っております。

 末筆ながら、拙い文章をお読みくださり、本当にありがとうございました。少しでもお読みくださっている皆様のお役にたてば幸いです。

プロフィール
現在、特定非営利活動法人Teach For Japanにて常勤職員として勤務。ビジネス法務のスキルや知識を生かしてプロボノを積極的に行う弁護士のグループBLP-Networkの代表。
法律の勉強などをする傍ら、社会起業などにも興味をもち、大学4年時の半年間、社会起業家支援の会社であるソーシャルベンチャー・パートナズ東京にて初代学生インターンとして活動。法科大学院在学中は、出張教室(中学や高校に法律の出前授業をするサークル)に参加していた。
ツイッター・アカウント:@onichang

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