代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「大学を辞め、シリコンバレーで考える"自分の生き方"~"in the right place at the right time"」蛯谷さん写真IMG_1025.JPG

蛯谷颯一郎(立教大学中退  ※現在カリフォルニア州DeAnza College在学中)

立教を辞めた理由~自分の行さ先が見えたから
 北海道で育った僕は冬になると雪が積もり、街中が真っ白な世界に変わるのが当たり前だと思っていました。
けれども今年の冬は暖かい日はパーカー1枚で過ごせるくらい穏やか、それはどこまでも抜けるようなシリコンバレーの青い空の下にいるからです。

 何故いまAppleやGoogle,FacebookにEvernoteなどの世界的なIT企業の集積地であるシリコンバレーにいるのか。
僕は高校までを北海道で過ごし、1年浪人したものの、受験にまた失敗し、2011年に立教大学経営学部に入学しました。
結果として第一志望ではありませんでしたが、大学の取り組み自体は面白く、短い期間でしたが真剣に将来の話をできる友達もできました。

 しかし自分が求めるレベルとのギャップを感じ始めてもいました。このままサークルをして、バイトをして、授業をそれなりにこなして楽しい大学生活を送って3年生になったらみんな一斉に同じ服を着て、同じような髪にして就活を始める。正直そんな風に自分の行き先が見えてしまいました。

 確かにこのままそれなりにやっていけば悪くない就職はできるかもしれない。けれどそれでいいのか?と自問し、自分は昔から会社を興すということに興味・関心があり、浪人中に勉強そっちのけで読み漁っていた本はベンチャーやITのものだったことを思い出しました。

 それと同時に、英語は話せるようにならなければならないとも思っていたこともあり、留学を意識しました。
普通に考えて日本で英語を勉強することもできますし、金銭的に簡単にではありませんが交換留学などの方法もありました。しかし、僕は自分がやりたいことを思いつくと「やるかどうか」を飛ばして「どうやるか」しか考えられなくなる性格なので、向こうの大学に入れば英語とITと起業について学べるのではないかと思いました。


渡米は直感に基づいた行動だった~in the right place at the right time
 きっとどこの大学に入っていても自分は辞めているだろうし、もしここで選ばなければ絶対にいつか後悔してしまうという直感を信じました。ちょうどその時に読んでいた梅田望夫さんの著書に書いてあった"in the right place at the right time"(正しい時に正しい場所にいることが大切だ)という言葉に心を揺り動かされ、大学を辞めてシリコンバレーへの留学を決意しました。

 入学時期がすぐには合わなかったのと留学資金を貯めるために一度札幌に戻り、昨年2012年6月に渡米しました。
そしてそれまでは本や記事などで知るだけだったシリコンバレーに実際に来てみると、自分はプログラマーでもなく、起業家でもないただの学生に過ぎないことを痛感します。
英語も中途半端で何も出来ない。
そんな思いから毎日快晴の青い空が鬱陶しく思う時期が続きます。

 最初の3ヶ月は学校に通い勉強するだけの日々でしたが、そこで自分は大学を辞めてまでここに何をしに来たのか。そんなもやもやした状況から抜け出すためにも自分が出来ないことを考えて行動をしないよりも、失敗することを恐れずにまずは動かないと何も始まらないと決意しました。シリコンバレーにいる人達に会い始め、運良くインターンをする機会を得ました。

 その企業が世界中からスタートアップが集まるインキュベーター500Startupsに入っていたこともあり、シリコンバレーのスタートアップがどのように投資を受け、成長をしていくかというプロセス、それをサポートする投資家やメンターなどの起業にまつわるシリコンバレー式のエコシステム(生態系)を間近に見ることが出来ました。


人に出会うことの面白さから、"世界を変える" "社会を変える"面白さを知る
 そんな貴重な経験も得られましたが、実際にシリコンバレーに来て一番価値があったと思えるのはAppleの本社があることでも毎日が快晴であることでもなく、人との出会いで、日本で普通に大学生活を送っていたら絶対に出会えないような面白い人達に出会っていく中で自分の人生、進路についてより深く考えるきっかけをもらったことです。

 自分がやりたいこと、やりたくないこと、できること、できないこと。そういうものを一つ一つ考えていくと、ITのスタートアップをやることが目的ではないと気付かされました。

 シリコンバレーの企業は大なり小なり"世界を変えること"を一つの目標にしています。
けれども自分がやりたいのは硬直した市場や非効率なものをITという手段を使って本来的に正しいことをして"社会を変える"ことがやりたい。

 そして自分にとって"何をやるか"よりも"誰とやるか"が大切で、"何になりたいか"ではなく"どうありたいか"を考えると、「自分が面白いと思える人達を集めて面白いと思えることをする」するという根底にあるシンプルな欲求に行き当たりました。

 実際に自分の足で海外に来て、直接肌で感じたからこそ、今は自分のやりたいことが海外で出来ることよりも日本でしか出来ないことの方が多いことを知り、留学当初は4年制大学へ編入することを考えていましたが、自分がどうありたいかがある程度はっきり分かった今、時間的、金銭的なことも考えて今年の内に日本に戻ることにしました。

 振り返ってみると浪人の1年、大学を辞めて留学するまでの9ヶ月、今の留学自体も含めて僕はいくつもの"ギャップイヤー"を過ごすことになり、周りの人達とは既に少し違う生き方をしているように思います。

 ただ、いつも自分が信じる道を選んできているので後悔は一つもありませんし、決して平たんな道ではありませんが先が予想できない人生を楽しんでいます。

 まだはっきりとした目的地や地図は持っていませんが、自分が進みたい方向を示すコンパスを手に入れられたような気持ちで歩くシリコンバレーの澄み渡る空の青さは、同じ快晴でも以前とは違った青さに見えます。

 僕は多少極端ですが、今就職活動や自分の人生で悩みや壁を感じている同世代の人達が、昨日までとは違った一歩を踏み出す1つのきっかけになってもらえると嬉しいです。


プロフィール
蛯谷 颯一郎(Ebiya Soichiro)
1991年生。札幌西高等学校出身。
About me:http://from-the-sv.sunnyday.jp/?page_id=2
ブログ:http://from-the-sv.sunnyday.jp/
Twitter:@ebiyann
Faecebook:http://www.facebook.com/soichiro.ebiya
email:e.souichiro@gmail.com

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