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日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

JGAP寄稿者短信"拡大版":「広い視野を持ちながら、目の前の事に夢中になれ!さすれば自分の道が拓ける!」(伊藤 淳、 WBPF Training 代表)伊藤さん新.jpg


 ここ数年、色々な方のキャリア相談に乗らせていただいている。高校生や大学生からギャップイヤーの学生、新入社員、30代の方まで様々。

 彼らと話していく中で、以前より感じていた一般的に言われる"キャリア構築"への違和感がはっきりしてきた。かつての自分もそうだったので、その悩み痛いほど分かります。

 私自身もある時から、良く言われる"キャリアの描き方"に違和感を感じました。その違和感について、皆さんに共有したいと思います。

 個人の経験に過ぎませんが、これがキャリアに悩まれている方の参考に少しでもなれば幸いです。

"違和感"の中から自分が思っていることは以下の4つです。

もし、今やりたいこと、関わってみたい分野があるならば・・・

1.まずは、早いうちにその"現場"に身を置こう!
2.近道、主流な道、正攻法なアプローチという基準よりも、夢中になれることを軸に考えよう!
3.自分の能力的成長、経験値を積むこと以上に、経験からくる自己進化、周囲(時代や環境)の変化による価値観の変化(進化?)の方が遥かに大きい。キャリア計画を立てるならば、自己進化・価値観の変化こそ考慮しよう!そしてその進化を自発的に起こすところに力を注ごう。
4.結局、"一般的"と言われるキャリアパスに縛られるよりも、自分で作っちゃったほうが案外早いよ!
以上です。

一つずつ説明すると、

1.まずは、早いうちにその"現場"に身を置こう!
 例えば、『国際開発機関で働き、途上国のXxに取り組みたい!』というものがあったとして、それだったら、大学で開発学の勉強をして、民間で経験を積んで力をつけてから、大学院に行って、それからインターンを経て28歳?くらいで国際機関に入る!

 努力の結果、実際に描いた通りのキャリアを描く方もおりますが、実際に国際機関に入って『目指していたものと若干違う。違和感がある。』『もっと現場よりが良かったのだけど・・・』と言って、悩む声を聞きます。
これ、国際開発分野に限らず、エンジニア、建築家、法律家や医療従事者など、どこでもあることだと思います。

 やりたいと思ったら、早いうちに現場に身を置き、その業界や分野の全体像、構造的な課題、自分のポジションニングなどを考える機会を多く得たほうがいいのかな?って思います。

 別の例では、『ITを極めたい』と思ったとします。IT分野が分からないとこれ以上は深められません。
一口にITと言っても、法人向けのシステム、Web系システム、モバイルアプリとあるし、アプリケーション設計・開発、ネットワーク設計・開発、ハードウェア・インフラ系でも全然違う。よりビジネスよりの要件定義・プロセス設計から実際のコーディング、運用・保守・・・・などなど、全然違いますよね。

 本を読んだり人から聞くことで、違いがある事自体は理解できるかもしれませんが、その現場に身を置かないと、実態感をもって知る事は出来ません。そして、その実態感が自分の方向性を決める上で重要になってきます。

 現場に入ることで、漠然とやりたかったことがより明確になります。
その結果、そこには自分のやりたいことが無いかもしれません。でも、それならそれでいいじゃないですか。
色々苦労して10年も20年も経ってから現場に入り、矛盾を感じながら働くよりもずっと良いと思います。


2.近道・主流・正攻法なアプローチという基準よりも、夢中になれることを軸に考えよう!
 会社の出世の例だと、『営業部で成績を上げて、本社勤務になって、20代・30代で海外駐在を経験して、本社で花形の役職を経験して・・』というのが主流であり、正攻法であり、一見近道なのかもしれませんが、この道って正攻法なだけに競争も多く、その中で抜きん出るのは大変。

 上記の『国際開発機関で働き、Xxxに貢献する』というのを例をとると、"近道"は早く修士をとって国際機関のジュニアインターンになって・・だと思います。実際にそのキャリアを予定通りに歩んでいる方も多く尊敬します。
ただ、中には実際に国際機関などに入ってから差別化できることや付加価値の付け方で悩んでいる方もいます。

 正攻法(主流)の道が唯一の道?の考えている人も多いですし、唯一とまでは言わずともそれが一番近道(効率的な道)だと思っています。しかし、実際にその分野に入ってプロとして差別化するならば、主流ではない道を歩んだほうがいいのかもしれません。

『じゃあ、あえてマイナーな道を選ぶことを勧めているの?』と聞こえるかもしれませんが、そういうことではありません。
 別に『メジャーではなくマイナーな道を歩もう!』と言いたいのではなく、『無理してまでメジャーな道に自分を合わせる必要はないのでは?』ということです。

 夢中になれることがあるならば、それがメジャーではなくとも、メジャーではないからこそ、大きな付加価値になる。事も多々あるわけです。

 例えば、途上国の医療でインパクトを出したい。と思って、医療だから医者か看護師を目指そう!というのも良いですが、それ以外にも関われることはたくさんあって、感染症を効率的に発見できる検査機器を製造するエンジニア、画期的な医療政策を立案した政治家、NGOの運営責任者として持続可能な仕組みを作り上げた方など、周囲を見ていても医療的なバックグラウンドがなくても、その分野でインパクトを出している人は多いなーって思います。むしろ、そっちの方が強いです。

 自分のキャリアの例でいえば、コンサルティング会社で普通に出世するコースから外れて、アフリカというほぼ唯一の軸をもち、そしたらそれが結果的にとてもユニークな軸になりました。

 ものづくりに興味があり大学で機械工学科を専攻しましたが、エンジニアとしてのキャリアには興味をもてませんでした。
 でも、10年経って、ウガンダでFabLab(ものづくりのインキュベーションセンター)を立ち上げるにあたり、エンジニアではないこそ、コンサルタントだったからこそ出せる価値があるなと感じています。
むしろ、周りはエンジニアばかりなので、自分のような人材の方が希少価値だったりします。


3.キャリア計画を立てるならば、自己進化・価値観の変化こそ考慮しよう!そしてその進化を自発的に起こすところに力を注ごう。
 2のキャリアパスを描く方法で陥りがちな罠は、現時点での自分の価値観や経験値を主軸に将来を決めている事。キャリアを考える際に、多くの人は、今見えているキャリアのゴールを達成する事ばかりに囚われて自己の成長や経験値を積むことばかり考えてしまいます。

 ただし、自分が成長し経験をつめば、その分だけ価値観も大きく変わります。当初の想定から全く異なる結論に奈多としても、それは"ブレ"ではなく成長であり進化の証だと思います。
 そして、自分の変化以上に、時代や環境の変化による価値観の変化もとても大きな要素です。

『どのように価値観が変化なんて前もって予測できないじゃないか!』というのはごもっともですが、だからといって『計画を立てる意味はない。放棄しよう』というのは違うと思います。
『どんな変化か分からないけど、私が一生懸命やっていれば、必ず価値観の変化が起こるよね。』というのを計画に考慮すれば良いだけです。
 そういう価値観の変化を楽しみ、常に受け入れられるだけの感性や余裕を備えておく事が大事だなと思います。

 ちなみに、私自身はその価値観の変化を進化だと思っているので、日頃から、価値観の変化や揺さぶりが起こるような機会をたくさん作ろう!って考えています。全く異なる価値観の人と会う機会を意識的に作り出す。とかもそうですね。

Planned Happenstance(計画的偶発性)やSerendipity(セレンディピティー)と言われていることですね。

 陥りがちな罠としては、『目の前にある仕事で成果を出せない。息苦しい。だから他に居心地の良い場所を求めよう!』という発想だと進化にはなりません。単なる逃避のように思います。
 いま、主軸に置いている仕事には全力投球し、そこへの自信は持っていることが最低要件で、その上で多様性を取り入れていかないと、価値観は進化するのではなく、ブレれているだけな気もします。。

 私自身、大学を卒業してから10年間で、大きく4つほどの価値観を進化が合ったなと思います。
この進化は最初のうちは気付かないのですが、時が経つと明白になります。進化が始まると、自分の身を置く時間・関係性・場所がガラっと変わります。そして、また新しいところに馴染みます。馴染んだと思ったら、また次の進化が始まります(始まるように仕掛けを作ります)。


4.結局、"一般的"と言われるキャリアパスに縛られるよりも、自分で作っちゃったほうが案外早いよ!
 色々言いましたが、結局キャリアなんて千差万別で、主流なものなどなくて、そういうキャリアパスがなければ、自分で作ることもできます。これは組織を飛び出して起業する!に限りません。転職でももちろん、社内でも出来ます。

 実際に、会社の中でこれまでに前例のない人事を創り出した人がいかに多いことか!

 私自身も、社会人4年目くらいから、良く言われる社内の昇進プロセスを全く意識せずに、自分なりの経験を積むことを重視した結果、独特なキャリアを描くことになりました。

 そして、社内で今の制度のままだとアフリカに関わることが出来ないんだなと気づいた時に、自分が作ればいいのかと思うことが出来ました。

 外資系企業だったので、日本人が日本オフィスから関わるのは実質不可能だったですよね。そこでグローバルのアフリカ担当をする責任者達に根気強くアプローチしました。『Xxxというプログラムは素晴らしい。でも、日本ではほとんど前例がない。だったら、私がそれを担う事で、日本のパイオニアになりたい。』というメールを送りました。今思えば幼稚ですが、それでもうまく行きました。

 学生時代から『ロールモデルを持とう!』と言う風潮がありましたが、私にはいまいちピンときませんでした。尊敬できる人はたくさんいましたが、そのロールを追従したいと思える人はいませんでした。その人と自分は生まれてきた状況も生きてきた背景も違うのにどうしてモデルになるのだろう?と悩んだこともありました。

 ある時から『ロールモデルがいない。』と悩むよりも、『自分が道を作ろう。』と思うようになり、遥かに気が楽になりました。

 まとめると、夢中になることに取り組んでいて、視野を広く持ち続ける努力を続ければ、自分独自の素敵な道が見つかるよ!って思います。


(関連記事)
2014年8月25日付
No.180:「なぜ今、コンサル辞めてウガンダで起業なのか?」(伊藤 淳さん、 WBPF Training 代表)
エッセイ集 フロンティア・フォーラム: http://japangap.jp/essay/2014/08/-wbpf-training-20146-12916.html

JGAP寄稿者短信:「アクセンチュアの社内報に"スターアラムナイ"として紹介頂きました。」(伊藤 淳さん、 WBPF Training 代表@ウガンダ)
http://japangap.jp/info/2014/10/jgap-wbpf-training.html

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