代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「大学3年、選んだのはインターンではなく無名の活動〜途上国の子どもたちに映画を届ける。日本の映画業界にも革命を」カンボジア写真.jpg


小笠原 美由
青山学院大学3年/NPO法人CATiC


夢を抱くスタート地点
 大学3年の夏、周りが就活を意識し始め、インターンに行きはじめる子も増えてくる頃、私はカンボジアの農村部で子どもたちに映画を届けていた。所属するNPO団体CATiCの活動である。食料やワクチンなど、届けるべきものはたくさんあるはずなのに、なぜ映画なのか。

 途上国の子どもたちに将来の夢を聞くと、答えられないか、先生か、医者という答えが圧倒的である。先進国の人間からすると、先生や医者になりたい子が多いことは一見素晴らしい。だが、そうとも限らない。

 彼らの夢の答えには先進国の子どもたちのような多様性がない----というのも、子どもたちがそう答えているのはそれしか知らないからである。彼らの多くはパティシエやデザイナーという仕事があることすら知らないだろう。余談であるが、私はウォルト・ディズニーの"If you can dream it, you can do it."という言葉がとても好きだ。

 誰だって夢を抱くことができれば、夢を叶えることもできるのである。ところが、逆に考えると、夢を叶えるためにはまず夢を抱かなくてはならないのだ。しかし、知らない夢は抱けない。知らなかったことを知り、可能性が広がったときに初めて人は"夢を抱くスタート地点"に立つのではないかと思う。そして、そこに導いてくれる可能性があるのが映画なのだ。映画は子どもたちの夢の種になり得る。知らなかった世界を見せてくれて、子どもたちの人生という名の物語のシナリオに大きなヒントを与えてくれる。今はまだ分からないが、もしかすると食料やワクチンと同じくらい届けられるべきものなのかもしれない。      


先進国の人が映画を楽しむと、途上国の子どもが映画を観られる仕組み
 そして大学3年の秋、周りの子の多くがインターンのエントリーなどで忙しくなる頃、私は映画に関するイベントをプロデュースすることに全力である。これはCATiCの新たな挑戦である"Filmeet(フィルミート)"の活動だ。"Filmeet"とは一体何なのか、そしてなぜNPO団体がイベントを行うのか。

 "Filmeet"とは、CATiCが映画に関するイベントを行っていく際のプラットフォームである。名前の由来は"film(映画)"と"meet(出会う)"。映画がきっかけで新しい世界に出会える場を作りたい、そんな思いからこの名前をつけた。現在は『映画に出会う、人に出会う』というキャッチコピーのもと、野外上映会や映画の世界をより詳しく教えてくれる専門家によるトークショーなど、様々なイベントを開催している。映画を"観る"だけではなく、映画をきっかけに人と出会ったり、新しい知識に出会ったり...。そんな新しい映画の楽しみ方を提供しているのが"Filmeet"である。
 では、CATiCが"Filmeet"をやる理由とは何か。

 それは、"先進国の人が映画を楽しむと、途上国の子どもが映画を観られる仕組み"を作るためだ。当初、"映画のチケットに寄付を付ける"という考えもあったが、日本の映画業界の市場規模は実は小さく、CSRに興味がある会社も多くない。そこで、"映画に関連するイベントを開催し、楽しみながら寄付をしてもらう仕組み"が生まれた。

 "Filmeet"のイベント活動は現状まだ無名で、何をするにも手探り状態だ。企画も集客も一苦労である。だが、この活動がやがて全国広まったとき、もしかすると日本の映画業界にも何か革命をもたらすかもしれない。近年、多様化するエンターテイメントの中、日本の映画業界は若者の映画離れという問題を抱えている。日本の人が映画に関連したイベントを楽しみ、映画を好きになるきっかけをつくることができたら...。そしてその、一人一人の映画を楽しむ体験が、途上国の子どもたちの映画をみる体験に繋がっていたら...。そんなことを考えながら、イベントのプロデュースに日々邁進している。
 
安心感と充実感
 私にとって、周りと同じ行動をすることは安心である。逆に何か周りと違うことや当たり前と違うことをすることは少し不安で、時に勇気も必要となる。前者と後者、どちらを選ぶのが正解なのかは分からない。しかし、一つ言えることは、選んだ結果がどうであれ、信念を貫いて選んだ後者では前者よりも遥かに大きな"充実感"を得ることができるだろう。社会人になる前に経験するべきなのは安心感ではなくこの"充実感"なのかもしれない。結果がどうであれ、わたしは残りの学生生活も充実させるため、信念を貫いてこの活動に取り組みたいと思う。

プロフィール:
小笠原 美由(おがさわら みゆ)
神奈川県出身。1994年生まれ。青山学院大学3年在学中。
カンボジアの農村部に暮らす子どもたちに映画を届ける活動を行っているNPO法人、CATiCに所属。

CATiCホームページ:http://catic.asia
Facebook(CATiC):https://www.facebook.com/t.cambodia/
Facebook(小笠原 美由):https://www.facebook.com/miyu.ogasawara.330

毎月映画に関連した様々なチャリティーイベントを開催しています。
イベントに関する情報はCATiCのFacebookページからご覧いただけます。
ご興味をお持ちになった方は、是非お気軽にご参加頂けると幸いです。

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