代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「一人から始めるアフリカ・ルワンダでの挑戦~持続可能なビジネス構築を目指して」三戸さん.jpg

三戸優理
i-Wind Consulting Ltd.


 ちょっと久しぶりにバナナ工芸品組合を訪れた時のこと、今まで見たことのないデザイン、でもルワンダらしいデザインのバッグがひときわ際立って並んでいました。これ、新作?と聞くと組合の代表がそうだと誇らしげに答えます。バナナ繊維プロジェクトの立ち上げから少しずつ進めてきた工芸品開発。彼女ら自身の努力によりできたものを見て、関わってきてよかったなと思った瞬間でした。


アフリカに行くからには何かやってやる
 私は、ルワンダどころかアフリカについても以前は何の知識もなく、まして住むことを考えたことはありませんでした。しかし、夫が、これまでの知見を活かしてアフリカの現場で働いてみたいということだったので、やってみたらどうかと賛同して、せっかく行くのだから何かやってやろうと自分自身の準備も始めることになりました。

 実際に行ってみるとまだまだインフラはこれからといった感じでしたが、意外とこぎれいなのと、なんといっても子供たちの笑顔が素朴で人懐っこく、親しみが持てました。治安も良さそうだったので、生活できそうなイメージがもてました。自分のこれまで携わってきた環境管理系の業務経験などを活かし、ルワンダで何ができるのかを関係者に相談しながら考え、現場に足を運びながら、やるべきことを見出していきました。


バナナ繊維との出会いと可能性
 その1つが、ルワンダの主要産品であり、アフリカでも有数の生産量を誇るバナナの収穫後に残る茎からとれる繊維を活かした新たな工芸品開発プロジェクトです。

 ルワンダは、他のアフリカ諸国と異なり、鉱物資源がほとんどない資源小国でかつ内陸国という貿易に不利な地理的条件の上に、人口圧の問題で自給自足農業だけに頼らない産業の確立が求められています。そのため、国内でとれる資源を有効活用してなんとか持続可能な産業創出はできないものだろうかと探していたところ、主要産物であるバナナの収穫後に廃棄される茎からとれる繊維にいきつきました。


ゼロからのものづくり
 ルワンダに来た際、ルワンダにはバナナ繊維を活かしたものづくりは存在しておらず、農村地の貧しい女性たちが細々とバナナの葉を使って工芸品をつくっているのみでした。そこで、なんとか日本の技術などを導入してバナナ繊維を活かしたものづくりを実現し、こうした女性たちの生計向上や自信の創出を通じた自立支援ができないものかと模索をし始めました。

 これまでバナナの茎というのは使い道がなく、収穫後は基本的に野ざらしにされているだけでした。この茎から繊維がとれ、これを有効活用すれば、廃棄物の有効利用になるだけでなく、新たな収入源の創出、産業の創造にもつながります。


バナナ繊維を用いた技術研修で、ルワンダ180人の生活向上を!
 そこで、2009年から少しずつ海外からの指導者を招へいして技術研修を行い、まずは手でよって工芸品をつくる手法を学んだことで、国内市場で売れるバッグができてきて、農村地でまったく現金収入がなかった女性たちに多少の現金収入が入るようになりました。
 しかし、ルワンダの市場は小さいため、まだ恒常的な収入創出とはなっておりません。そこで2012年には、日本政府からの助成金をいただき、より細かいデザインを反映したものづくりができるよう織り機を導入しました。現在、輸出しうる高品質な織物生産のため、日本の専門家を招へいした技術研修を行いたいと考えおり、下記のサイトで広く日本にいるみなさまに支えていただくためのキャンペーンを行っております。実現すれば、バナナ繊維を使った織り子さんやその家族、少なくとも180名の生活向上が図られます。
https://readyfor.jp/projects/Bananafiberweavingtraining

 なお、バナナ繊維プロジェクトの他にも、ルワンダの工芸品をより洗練されたものにして、日本に輸出するフェアートレード・ビジネスの構築にも日本のパートナーとともに一から携わり、現在も、300名近い現金収入に頼る不遇な女性たちに仕事を作り出しています。


一人から始める小さなことでも大きな達成感
 このようにルワンダの活動では、一から仕組みやものを造り上げていくことに携わることができ、日本ではなかなかできないことを経験してきたと思います。常に自分の専門分野が活かせるというわけではありませんが、日本で働いて又は生活をして得た経験が、小さなことであってもアフリカでは活かすことができる可能性があります。ビジネス構築、貧困対策、環境・衛生問題、基礎教育分野など様々な分野で関わることができるので、まずは実際にアフリカの国に足を運んでみて、現地の人と触れ合い、見て感じながら、自分ができることを見つけてみられてはいかがでしょうか? 


プロフィール:
三戸優理
2007年7月よりルワンダへ
2011年末 環境・開発関係のコンサルティングや工芸品の開発・販売等を行うi-Wind Consulting Ltd. をルワンダで設立登録。現在その代表。
Facebook: https://www.facebook.com/yuri.mito.1
Rwanda Banana fiber project: https://www.facebook.com/rwandabananafiberproject
Website: ルワンダでの工芸品の販売:http://www.ruisebrwanda.com/
個人のブログ:http://blog.mitoyuri.com/

【メモ:ルワンダ共和国】ルワンダは、中部アフリカに位置する共和制国家。内陸に位置し、西にコンゴ民主共和国、北にウガンダ、東にタンザニア、南にブルンジと国境を接する。首都はキガリ。イギリス連邦加盟国。アフリカで最も人口密度が高い国として知られる。世界中にディアスポラ(永住と定住、難民とよく対比される)したルワンダ人が農業、観光産業、不動産に投資し、目覚しく成長しており、この現象は「アフリカの奇跡」と呼ばれている。

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