代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

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高校生の「秋入学と半年ギャップイヤー」意識調査結果から考えること

 28日に公表されたリクルートの 「高校生の価値意識調査 2012」(高校2・3年1,239人、ネット調査。調査時:4月)が興味深い。 「高校生の4人に3人( 75.9% )が秋入学を認知。うち、4割弱(全体:37.8 % :男子:39.9%、女子:36.0%)が導入に賛成、 反対は19.5% 」というものだ。
 東大が秋入学を導入するとして、2016年とされるので、彼らが関係するのは既存の大学で秋入学を導入しているところだけであるが、おおよそこの世代の生徒達が考えていることは推し量れるので、参考になる。

導入に"賛成""反対"の理由は、共に"半年ギャップイヤー(高校卒業してから大学入学までの期間)"の過ごし方

 以下が"賛成""反対"の主な理由だ。
賛成理由 第1位 高校卒業してから大学入学までの期間を有効に使える 67.5%
      第2位 留学しやすくなる 43.9%
      第3位 受験が終わって、ゆっくりする時間ができる 43.5%

反対理由 第1位 高校卒業してから大学入学までの期間がムダ 73.0%
       第2位 社会に出るのが遅れる 45.9%
      第3位 就職活動への影響が出る 36.1%

 現在大学受験生である高2・3年生が考える半年ギャップイヤーの「賛成理由」も「反対理由」も、理解できる。
まず、2月・3月の入試の合格後、秋入学までの半年間のギャップイヤーが発生する可能性があるのは、現在のところ東大をはじめ、「国際対応の拠点大学」の20あまりの大学だけであり、しかも現在のところは「入学予定者」すべてに"必修"として適用しようと表明しているのは東大だけである。東大の構想は大学の「特徴」や「個性」として、私は評価しているが、あとの大学は未定か希望者に"選択肢"として「半年ギャップイヤー制度」導入を検討しているだけである。

 ここで重要なのは、半年ギャップイヤー(東大はギャップタームと呼称)の活用方法が課題で、「反対理由」への対応や対抗策であろう。第1位の「ギャップイヤー期間がムダ」というのは、情報不足ゆえの決め付けであり、そうならないように、大学が主体的に産官学民の各セクターに呼びかけ、協力して高等教育の人材育成としての「仕組みづくり」を構築すれば解決できる。

 例えば、国際教養大学が取り組んでいる「ギャップイヤー入試」(10名募集)などが一つの例だ。28日放送のNHK Eテレビの10代の進路を考える「オトナのトビラ」( 夜7時25分~)では、JGAPが取材協力して、同大学の"ギャップイヤー生"が紹介された。その「入学予定者」は9月の入学前の半年間を「活動計画書」として大学に提出し、プレゼンをしている。当該学生の計画は「日本には基地や国境問題に直面している街や村がある。そこに自転車で風を感じながら出向き、人々から話を聞く。大学入学後に、そこでヒアリングしたものを発表する」といったものだった。単位も3単位つく。

 番組の中で、彼は「高校3年間と2年浪人をしたが、その年月より、この数ヶ月のギャップイヤー期間のほうが、コミュニケーションをちゃんと取れ、友達も多くできた」と笑っていた。自転車での走行距離は既に6千キロを超える。東京育ちながらこれまで人付き合いが苦手だった自分の変身振りに驚いてもいた。

 もうひとり紹介されたのは、農業短大で1年休学して、「ふるさと協力隊」に応募した女子大生であった。農村暮らしをしながら、農業支援、地域行事の手伝い、環境・福祉施設等での運営に関わる。生活費が5万円出るので、「有償インターン」という見方もできる。「単に、『土いじり』が好きなだけで大学を選び専攻してしまったが、何を学び、将来こうなるんだという見通しが描けず、この道(ギャップイヤー)を選んだ。学業に戻った時、授業の受け方や取り組みが全く違うと思う」ときっぱり言う。

 ギャップイヤーの定義は「親元や教員から離れ、非日常下での社会体験(ボランティア・正規外の国内外留学)や就業体験(インターン・アルバイト等)を指し、期間は3ヶ月から2年」(英国・教育省他)である。こういう体験が、人間としての耐性を醸成し、グローバル人材や課題解決型人材の育成に貢献するという考え方だ。

 東大はなぜ3千人の入学者全員に、半年のギャップイヤー体験をしてもらいたいのだろう。それは、人材教育とは学内の「正課授業」だけでなく、広く社会での「課外活動」が噛み合って形成されると認めたからではないか。車の運転だって、自動車教習所だけの座学や敷地内の安全確保されたドライブが「現実」ではないことはわかりきっている。「修行」として、敷地外の「公道」でのトレーニングや現実社会を事前に見ておいたほうがよいことは明らかだ。

 実際、ギャップイヤー経験者が非経験者比べ、就学力・就業力・時間管理力などが秀でているという学術研究も先進国で進んでいる。産官学民の各セクターが、若者の就業機会や社会体験が高齢社会の中、奪われがちなら、若者の力や能力開発のために、それぞれ知恵を絞り、「仕組み」構築の協力体制を作る時期ではないだろうか。そうすれば、
懸念の第2位の「社会に出るのが遅れる 45.9% 」、第3位の「就職活動への影響が出る 36.1%」への対応策もそんなに難しく ないのではないか。

 日本の大学は、大学進学率が高まる中、18歳人口が減少する中にあっても依然800近くある。「秋入学と半年ギャップイヤー」議論は、「定員割れ」の私大も4割を数え、事実上「大学全入時代」を迎える中、それぞれの大学が学生に提供できる価値とアイデンティティを考えるよいきっかけになることだろう。

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