代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

「ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)の採用開始のタイミングで思うこと~「卒業後ギャップイヤー」を正当に評価しよう!」~

※以下の記事は、BLOGOSにも掲出されています。http://blogos.com/article/42395/


 今朝の朝日新聞朝刊が大きく伝えるように、NPOティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)が米国ティーチ・フォー・アメリカ(TFA)と提携し、国内で採用活動を始めた。来春30~40人の教員免許資格者を関東や関西の自治体に2年間の臨時教師として送り込むことを交渉中だ。「送り込む」といっても、TFJは派遣するのではなく、雇い主は自治体。しかし、TFJはいわば「教師養成塾」として、定期的な研修のフォローもするという。

 2012年米国の大学生就職人気ランキング(人文学系、ユニバーサム調査)で、TFAは3位、7位はPeace Corps(ピース・コー、直訳すると「平和部隊」となる。故ケネディ大統領の作った国際ボランティア組織。JICAの青年海外協力隊のモデルとされる)で、私は、大学卒業後の"ギャップイヤー機関"の人気に注目している。ただ、原文は「Ideal Employers2012 USA」であり、 日本のように新卒一括採用で終身雇用を前提にした「就職ランキング」でないことは押さえておかなければならない。

 つまり、TFAやPeace Corpsは、「就職」「就社」というより、2年前後の有期での有償インターンシップやボランティア・高等教育人材育成研修プログラムと考えたほうが近い。だから当然ながら、日本のTFJも2年間、臨時教師とした後の彼らの雇用は保障していない。

 米国の例では、TFAを終えた青年は、その後教育NPOを作ったりするツワモノもいるが、有力コンサル会社や人気企業がきっちりその期間の重要さや価値を認め、指導力や問題解決能力を評価し、ほおって置かない。換言すれば、「社会の評価」が確立されている。これはPeace Corpsにも当てはまり、「お役目」が終わると、国家機関への優先採用の道もある。見落としてならないは、米国のランキングでは人文学系の「文系」だけでなく、「理系」の自然科学系でも、Peace Corpsが6位、TFAが15位と上位を占めていることだ。日本では、大学の「理系」の先生方の一部は、「数理能力が落ちるギャップイヤーへの懸念」「ボランティアなどとんでもない」などと表明されているが、ギャップイヤーはインターンもコンセプト的に入っているわけで、ちゃんと調べられているのであろうか。

 確認すると、ギャップイヤーの定義は「親元・教師を離れた非日常下での、社会体験(ボランティア・正規外の国内外留学)と就業体験(インターン)。期間は3ヶ月~24ヶ月」(英国・教育省他)で、いわば人間力を向上させる概念だ。だから、米国・労働省労働統計局エコノミストであるElka Maria Torpey 氏も教育系サイト「education.com」で"卒業後ギャップイヤー"の例として、 18才以上の市民が参加して国内の貧困問題解決に1年間取り組む「AmeriCorps* VISTA」(アメリ・コー・ビスタ)や国連ボランティアと合わせ、前述の2団体を紹介している。

 国内でも、限界集落を多く抱える島根県の津和野町が、都会の大学生4人を1年間「町長付」にして、地域の問題解決にあたってもらう有償インターン制が今年度からスタートした。1年後には、「認証」として「終了証」が発行される予定だ。京都府では地域公共人材開発機構が一般職(任期付嘱託職員)として、大卒失業者を中心に 15名を1年間雇用し、地域の課題に取り組む研修活動を行なっている。そして、地域公共のための職能資格である「地域公共政策士」を社会的認証として捉えているが、これなども卒業後ギャップイヤーの先駆的な形であろう。 ストレートでシームレスな学業やキャリアだけに価値があるというのは、「大量生産・大量消費」型であり、独創的なイノベーションが待望される時代に向けて、多くの人が疑問に感じ始めてている。そういう人材評価の"モノサシ"を再考しようとする機運は高まっていると感じる。

 ギャップイヤーは、高大の接続部分だけでなく、大卒後の大学院との間(ギャップ)や、社会に出るなら就職や起業を行なわない期間、そして就職から転職する期間の「キャリア・ブレーク」 も「ギャップイヤー」はあり得る。つまり、卒業後のギャップイヤーのほうが「大学入学前」より多様といえる。

 大学を4年間で卒業せず、1年留年した学生は、4万5千人(2年連続増加)。さらに大学を卒業後、進学も就職もしていない若者は9万人弱(3年連続増加)も存在する。後者は簡単にいえば、ハローワークに足繁く通っているか、アルバイトをしているか、資格や公務員試験の受験勉強しているか、なんらか家業を手伝っているか、ニートや引きこもりぎみの若者も多いはずだ。

 9万人といえば、小ぶりな首都圏近郊都市の総人口規模に相当し、これから毎年同じような境遇を持った"就業未経験者"が世の中に出るだろう。「人的資産」としてあまりに彼らに「機会」が少なく、もったいなさすぎる。このような若者達が、見ず知らずながら集まり、横の連携として情報共有や意見をする場である「既卒者カフェ」(ツイッター・アカウント:@kisotsusyacafe) も誕生した。 「卒業後ギャップイヤー」の充実プログラムは、文科省や経産省というより、厚労省が中心に行なってもよいのではないか。それは、昨年発行の労働経済白書で、ギャップイヤーは「職業観の醸成に役立つ」と記述されているからである。

 いずれにせよ、ここでも産官学民の各セクターが知恵を出し、行動しなければならない。 

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