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教員こそギャップイヤーが必要!教職大学院では、公費で経験できる体制確立を!~中教審答申に想う


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現在の教職大学院の総括は?~半数が定員割れの現状
 28日、中教審(三村明夫会長)は教員養成の在り方を見直し、新卒者の教員免許を2種類にし、正規教員として教えるには原則、大学院修了を要件とする制度を創設するよう、平野文部科学大臣に答申した。

 目的は、いじめや不登校など複雑化する生活指導上の課題に対応できる実践的な指導力を持った教員を育成するためだし、この答申の背景には、グローバル化や少子高齢化で日本社会が大きく変化し、教員には指導法や学校経営手法など高度な専門知識と実践的な指導力が求められているからだ。ここまでは理解できるが、それでは今ある高い専門性を持つはずの教職大学院の現状の反省や総括が聞こえてこないのが、不思議でならない。

 文科省は今後、カリキュラムや取得条件などの具体的な制度設計に着手し、受け皿となる教職大学院の拡充を推進する方針とのことだが、現状は失敗だろう。すなわち、2012年度の入学状況は、全国25校のうち半数の13校で定員を下回っている。 25校全体の総定員815人に対し、入学者数は782人だった。法科大学院も会計大学院もそうだが、これまで専門職大学院は名ばかりで実効性に欠け、制度設計自体に問題があったと言わざるを得ない。


教員こそ多様な経験するギャップイヤーが必要!~大学院入学前に"半年ギャップイヤー"を組み込むインセンティブを提言
 それでは、今後どうしたらよいか。私は修士課程の教職大学院に、原則入学前"半年間のギャップイヤー"を組み込むことを提唱したい。この期間に、人気の国際教養大(秋田市)のように、"ギャップイヤー生"として、大学院側に「研修計画」を提出し、親元・教員から離れた非日常化で、社会体験(社会貢献活動や国内外の非正規外留学)や就業体験(学校教育実習以外の本格的インターンシップ)を行うことを"必修(単位化)"とするのだ。米国のTeach For America は優秀な大卒者を問題ある学校に2年間送り込むプログラムだが、日本の優秀な教職大学院生予備軍を一般企業や地方自治体、国内外NPO等に半年送り込む"社会修行プログラム"だ。将来小学校・中学校で教える"教員予備軍"こそ、多様な経験を積むギャップイヤーが必要ではないか。また、副産物として、大学院入学予定者という、どこの組織にも属さない擬似的なドロップアウトも経験でき、学校から消えていく子供たちの気持ちも多少わかるかもしれない。

 さて、私はつまるところ、以下の6点が教員の持つべき力だと思っている。(注1参照)
(1)教職に対する使命感・子どもに対する愛情、情熱
(2)子ども理解に基づいた確かな授業力
(3)子ども理解に基づいた集団指導力(学級づくり)
(4)子ども理解に基づいた生徒指導力
(5)問題解決能力(協働性、マネジメント能力)
(6)総合的な人間力(豊かな人間性、社会性、人間関係能力 等)

そして、ギャップイヤーによって、(1)はまさに「職業観の醸成」で深く関与するし、(5)(6)も研究成果で立証されているし、(3)(4)の指導力強化にも資すると観ている。


 費用は、国や行政の奨学金や社会からの寄付で充当する。昨年度新卒で教員として採用された学生は、全国でおよそ9000人いることから、仮に全国に1700ある市町村が各5人ずつ彼らをインターンやボランティアで全員受け入れたら、ウインウインの関係が築け、それで実現可能だ。また、JICAの青年海外協力隊が「半年コース」設立も検討してよいし、アジアを中心に現地でベンチャーを起業している若手事業家も増えてきたので、お願いして有償インターンとして「他人の釜の飯を食う」のもよいのではないか。もちろん、主体的に自分でギャップイヤー・プランを策定するのも歓迎だ。

 学校現場で長期間の実習を行うのも子供の関心を引く授業テクニックの向上くらいは期待できるが、所詮"コップの中"の研修やフィールド・リサーチでは、今回の改革の背景であるグローバル化の文脈を理解する場はない。ギャップイヤー導入により、閉鎖的で狭い学校では学べないような多様な経験や指導力、コミュニケーション能力など将来移転可能な多様なスキルなども習得できる。そういう経験こそ、教職大学院生を即戦力にさせ、生徒指導の実践的な力をつけさせられるのではないか。

 そもそも、修士課程の履修で経済的な負担が増える学生への授業料の免除や奨学金の充実などの対策は必要だ。日本の教育への公的支出は、経済協力開発機構(OECD)が昨年9月に発表している。それによると、国内総生産(GDP)に占める日本の教育への公的支出割合は3.3%で、比較できる加盟31カ国の中で最下位だ(08年の調査結果)。トップはノルウェーの7.3%で、各国平均は5.0%。日本は3年連続で3.3%、2年続けて最下位だった。この惨状で、国として恥ずかしくないか。

  また、大学などの高等教育でも教育費全体に占める日本の私費負担割合は66.7%と各国平均31.1%の2倍以上。国の援助が大学に対して薄いことは明白だろう。教員は明日の日本を担う、あるいは将来のタックスペイヤー(税金納付者)になる児童や生徒を育てる重要な任務を負った人たちだ。だから、大卒すぐでもリスペクトされ「先生」と呼ばれるはずだ。大事な人材育成を背負う若い教員が、ちゃんとした社会体験(ボランティアや正規外の国内外留学)や就業体験(インターン)もしないで、座学中心の理論や名ばかりの研修をやっても、児童や生徒を導く力はつかないのはこれまで学んできたことではなかったか。優遇措置として、公費のギャップイヤーのインセンティブがあっても誰も文句はないと思われるが、いかがだろう。


(注1)京都教育大学教育実践研究紀要 第10 号 2010 221
教師に求められる実践的指導力を養成する教職専門実習のあり方
―教職専門実習Ⅰ・Ⅱの実践を通して―
藤村法子・阪梨學
「教職専門実習で育成する教師の専門的力量の6視点」より

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