代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

伊藤勝吾さん写真DSCN0936.JPG「それでも私は青年海外協力隊をオススメする」


伊藤勝吾
東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程1年=休学中
(青年海外協力隊 エルサルバドル共和国 派遣中)


1年の心の変化を考える
 実はこの文章を寄稿するにあたり、「はて何を書こうか」と悩んでしまった。
 中央アメリカのラテン国家エルサルバドルに来て1年が経つが、まだ胸を張れるような成果も成長も感じていない。そんな中、大層な事は書けないが色々迷った結果この1年の経験の中で自分が大きく変化した部分と、青年海外協力隊という選択肢について書かせてもらうことにした。

お気軽で順風満帆な学部時代
 私の学部生時代は、それはそれは順風満帆でとんだお気軽"温室ボーイ"だった。"テニサーで"キャプテンを務めさせてもらい、NPOユースとしても活動し、研究も頑張った。途上国へやって来て、1年経つ今でもつながりを感じることが出来る温かい師や友人に出会うことができた。
 何の障害もなく進む中、ふと思った。このままよく分からないけど"流れで"就職して、まぁ20年後にはそれなりに出世して予測可能な未来を生きて、果たしてそれで自分は満足できますか?と。

直感で「青年海外協力隊」の扉をたたく 
 そんな当時、スタディーツアーに参加したり、卒論で限界集落にホームステイさせてもらったりする中で、いつだって現場こそが全てのカギであり、そこを知ることは自分に必須だと直感した。
 私はその直感に従うまま、最も泥臭い現場である「青年海外協力隊」に応募することを決めた。

温室の蛙、大海に苦しむ 
 「自分ならきっと何かできるだろう」と自信満々・意気揚々に日本を出た私だったが、現実はそう甘くない。結果としてその鼻の先をものの見事にボッキリと折られた。ほぼ未修の言葉で送る生活、友人もいない新世界、そして何よりも厳しかったのが誰からも必要とされない孤独感。独り自分の存在価値は一体何なんだと苦しみ、へこむ日々が続いた。さらには3.11という日本の歴史の変り目にも成り得る大災害。異国でテレビに変わり果てた日本を見ながら、自分はこんな国の一大事に、一体何をやっているんだと自分を責めた。

 だけど、それでもやはり青年海外協力隊をオススメしたい。

ゼロからのスタート
 ギャップイヤーという前向きな言葉がアンテナに引っ掛かる方というのは、少なくとも心の何処かで自負なり自信を持っている人が多いに違いない。そんな方にとって青年海外協力隊は絶好のChallengeの場になる。ほとんど未修に近い言語で現地生活を送り、ほとんど何のお膳立てもなしに未知の仕事が始まっていく。上記のような環境でまさにゼロからの自分を起てていくことが求められる。
一年経った今だからこそ思うのは、持っていた自信を粉々に砕き、ゼロからスタートしたからこそ、隠れていた自分の弱みと改めて向き合い、そして新しい強みを発見してこれたのだと思う。

日本人であることへの自覚
 国外に出て生活するまで、「日本」だとか「国」について考えることなんてほとんどなかった。いや、もしかしたら自分が力をつければ、もう国がどうなっても大丈夫、とすら思っていたかもしれない。しかしここで生活を送るうちにそうではないことに気付かされる。日本を離れこの国の人と関わる中で、自分が日本人であることを教えられる。自分は何処まで行っても日本人であり、四季も恋しければ侘び寂びも恋しい。現実的にも心情的にも日本は日本人である私のふるさとであり、その帰属から逃れられない。

国民の税金で貴重な経験を味わえるは"借金"という意識
 青年海外協力隊とは言わずと知れたODA事業。すなわち、今私がここで活動できているのは日本の皆様の税金のおかげ。にも関わらず今、自分はこの現場にいて完全に役立たずの醜態を晒している。
 最近思うのは、これはひとつの"借金"であるということ。国民の税金で海外に滞在をし貴重な経験をさせてもらった、さらには自分が日本人であることも強く意識できるようになりより日本が好きになった、だからこそ帰国後働く中で是非日本にこの恩恵を返したいという責任と覚悟を強く持てるようになった。

最後に 
 人気に陰りとか事業仕分けとか、何かと叩かれがちな青年海外協力隊ですが、個人的にはギャップイヤーの選択肢としては十二分にアリだと思います。まだ自信を持って断言はできませんが、若いうちにするこのような経験は自分の幅を拡げるはずです(と信じたい)。私自身も次の機会には成果と成長についてお話できるように、任期1年精進します。乞うご期待!それでは読んで下さった皆様と世界のどこかでお会いできる日を楽しみにしております。

プロフィール
伊藤勝吾
Twitter:@shogooon (https://twitter.com/#!/shogooon)
Blog: http://shooogo.blog100.fc2.com/

※JGAPのメモ: 外務省在大使館の2011年1月の「海外安全HP」資料ではエルサルバドルの記述は以下のとおり。
「一般犯罪の発生率は依然高い数値を示しています。特に銃器を使用した強盗事件や殺人事件等が頻繁に起こっており、防犯に対する注意が必要です。一方、当国は1998年にハリケーンミッチ、2009年にはハリケーンアイダによる被害、2001年には2度にも及ぶ大地震(1月13日マグニチュード7.6及び2月13日同6.6の規模)に見舞われ自然災害に対する備えも必要です。更に2001年9月11日に発生した米国における同時多発テロ事件以降、世界の治安情勢は混沌として予断を許さぬ状況です」

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