代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

ギャップイヤーについて牧浦さんJGAP.png


牧浦土雅(Makiura Doga)
e-Education ルワンダ代表


現在世間で話題になっているキーワード「休学」・「ギャップイヤー」。
 僕はイギリスのボーディングスクール在学4年目に(日本の高校2年生)、高校卒業後は大学入る前に1年置いて、ギャップイヤーを取ろう、と既に回りにもそういう人間が多い中、決断していました。その大きな理由は2つあり、その時の自分はまず、高校卒業→大学進学のレールの意味が分からなかったこと。そして、その頃から興味を持っていて、教科書やメディアで見たり聞いているだけの''途上国''だけじゃなく、自分の目で現状を確認し、何か大きなことを自分の手で大学入学前にやってのけたい、と考えたからでした。

 丁度、NHKの現代クローズアップでもギャップイヤー・休学に関してやっていたので、今日は僕の個人的な意見と経験、そして本場英国のギャップイヤーの考え方を交えながら、皆さんと一緒にギャップイヤーコンセプトに関して考えていけたらな、と思っています。


そもそもギャップイヤーって何?
 その名の通り、ギャップイヤーとは人生の中で間を置く(Time Out)事です。その中で特に自らが身を置いている教育機関(大学等)から一定期間(通常は12ヶ月)離れ、旅行やボランティア活動、また留学などをすることを示します。

 元々は1960年代に英国・イギリスがこのギャップイヤーのコンセプトの発祥の地だと言われています。

 という訳で現在、英国の高等教育機関でギャップイヤーがごく一般的なものとなっています。英国の大学進学のためにUCAS Application(日本の願書)というものを通じて個人個人、入りたい大学へアプライします。UCAS Applicationの中身は、これまでの学校内での成績や先生2人からの推薦状、そして一番重要とも言われるPersonal Statementがあります。

 Personal Statementでは、個人が大学で専攻したい教科(経済学や世界史 etc)について自分の今まで経験と照らし合わせると同時に、課外活動、スポーツ、音楽など、一言で言えば自分を売る最高の道具、です。Personal Statementは、人によりですが難関大学に入る際には非常に重要視されます。なぜなら推薦状と成績だけでは何万人とアプライしてくる生徒の個別化を図れないからです。

 つまり、この自分を売るPersonal Statementが充実していないと大学側はこの生徒を取る理由を見つけることが困難になります。現にそのためにギャップイヤーを取る生徒もいます。

 そして、英国の文化から生まれたのが「ギャップイヤー」コンセプト。生徒が大学にアプライする際、Deferred Entry (入学を1年おくらせる)として大学入学前に1年置く、という形があります。2010年には、このDeferred Entryでアプライしてくる生徒の数、つまりギャップイヤーを取得してから大学入学を望む生徒の数は格段に増えました。


なぜギャップイヤーを取るか?
1.チャレンジ
→これまで何かやりたかったこと、成し遂げたかった事を高校が終わる丁度良い時期にトライしてみる。

2.人生経験
→ギャップイヤーは100%自立し、意味・価値のある経験を得る最高のチャンスを与えてくれます。そしてこれは今後の人生で一生得られない機会かもしれません。

3.発見
→もし、旅行という選択肢を選んだなら、あなたがこれまで見た事のなかった世界を幅広い視野で自由に見ることができるでしょう。

4.学び
→ギャップイヤー終了時には、高校や大学などでは絶対に得られないようなスキルと経験を身につける事ができるでしょう。そして将来的にも、これらの新たな可能性は有利にはたらいてくれます。

5.貯金
→ギャップイヤーを使って大学の学費を貯める人も、数は少ないですがいます。しかし、ここでも1年という決められた期間で集中的に本物の社会を大学進学の前に自らの目で見ておく事で得られるものは本当にプライスレスです。


じゃぁ休学って何?
 正直、僕も「ギャップイヤー」と「休学」は全く同じ意味を持っていると考えていました。しかし、実際のところ、「休学」は日本生まれの言葉であり、その意味はギャップイヤーと大きくかけ離れています。
 休学とは、
 ''学生・生徒が在籍のまま学校を長期間休むこと。'' コトバンクさんから

 何がギャップイヤーと違うかというと、休学は、完璧な独立・自立のままに行なわれるものではないのです。要するに、高校卒業後に大学入学前に1年置く、というのは休学ではありません。また、大学在学中(籍を置いたまま)1年置くことはギャップイヤーではなく、休学です。

 これを読んで、「言葉的には同じじゃん」と思っている人もいると思います。
 しかし極端な話、ギャップイヤー中、その人の職業は無職です、その一方で休学中の職業は普通は学生になると思います。それだけギャップイヤー中は覚悟して自分の好きなことを将来のためにできるのです。学生とか会社員とかいう身分が無いギャップイヤー者は、将来のことをこの1年の間に考え、決める事ができるのです。しかし、休学者は1年の休学の後(○○大学6年生とかいう人も稀にいますが。笑)に大学に戻らなければいけません。

 両者共にメリットは似ていますが、ここがギャップイヤーと休学の本質的な違いだと思います。


JGAPさんから日本のギャップイヤーの現状
 最近、ようやく日本でも''就活は早すぎ!?''とか''大学秋入学(9月)''の話が出てきました。日本ギャップイヤー推進機構協会(JGAP)さんは、''「産官学」にプラスして、「民」を結集するような大きなうねりのステージ''を求め、''大学生の国際競争力向上とダイバーシティ推進''を目指しています。
 
 このような団体が日々、日本にギャップイヤー制度を導入する働きをしてくれているのは幸いです。

 しかし、実際に上記の定義でのギャップイヤー制度導入、つまり、高校卒業から大学入学前の期間を延ばすことは特に日本の場合、大きな'チェンジ'が必要となります。
 先日、東京大学は2013年度から秋入学、つまりギャップイヤーならずのギャップターム導入を検討し始めたそうです。でも、これ正直悲しいくらいの'デメリット'と言われるものが裏では騒がれています。

1.大学設置基準を変更する必要がある。
→当たり前のことですが、やはり保守的な(conservative)で今までチェンジを望んでこなかった日本の大学がこのような大きな改革をするのには時間がかかます。しかし、今の学生の状態を見ればチェンジしないと何の変わり様もありませんよね。

2.「ギャップイヤー・ターム」を過ごす学生の行き場・受け皿が整っていない。
→これはJGAPさんを中心に後々でも作る事は可能でしょう。それに、海外ではこのようなGap Yearチョイスを提供してくれる機関がメジャーですが、大半のギャップイヤー取得者は、自ら理由があって1年置いて海外留学やボランティア活動をしているので、受け皿などに頼っているような人はむしろギャップイヤー取得について考え直した方が良いと思います。

 考えてみて下さい、なぜギャップイヤーをとるのか。もしそれが自分が大学で何を本当に学びたいか分からないから、であれば、半年バイト(目標がある)半年世界一周でも良いと思います。もし教育に関心があるならば、途上国で活動している国際、もしくは日本のNGOにインターン、できれば実際に何かのプロジェクトに関わらせてもらうこともよい経験となるでしょう。

3.就職に悪影響を及ぼす可能性がある
→・・・それはあなた次第だと思います。事実、日本の伝統的企業に就職する際、1年遅れているとなると、留年、もしくは浪人(ギャップイヤーならば)を捉えられる事が普通でしょう。

 しかし、その企業に対して、自分がなぜギャップイヤーを取って学業から離れる決意をしたのか、そしてその経験が今の自分にどう役に立っているのか、どういう風にその企業に貢献できるのか説明できればむしろギャップイヤーは就職に大いに有利になると思います。強いて言えば、これが説明できないような人も同じようにギャップイヤー・休学する資格がない、また無駄に時間を過ごしてしまった、と考えていいと思います。

 なぜなら、ギャップイヤーを自らの意志で取得したなら、その後、何らかの価値・バリューをそこから見いだせるはずだからです。

--------------------------------------------------------------------------------

ギャップイヤー・休学・・・どうする?
 面白い記事を見つけました。 
 ハチナナ・ハチハチさんのブログで「僕がギャップイヤー(休学)をすすめない理由」という記事です。タイトルの、ギャップイヤー(休学)、ギャップイヤーと休学が違うことを上記で既に説明したのでここではその話は置いておきます。

 ハチハチさんは、一言で、大学生は4年でストレートに卒業すべき、と言っています。休学して世界を見てみるのも良いけれど、大学卒業後に実際に入る実社会の現実は全然違う、ということです。そして色々なことを経験するのは良いけれど、実際に卒業後に役に立つであろう「How」が無い、と言っています。つまり「経験しないと分からない。」と。

 個人的にハチハチさんの意見は一理あると思います。必ずしも休学が全ての学生にとってポジティブとは限りません。でも、ギャップイヤー、休学をしてもこの「How」はその1年でやることによっては大きく学ぶ事ができると思います。事実、僕はギャップイヤーがこれまでの人生で一番濃い1年にしてくれたと感じました。

 さらにハチハチさんは、「俺はこうしたいから!休学する!」という具体的な理由で休学する人は良い、と言っています。これはもっともだと思います。その一方でアバウトに「休学してやる!」という人は辞めた方が良いと説いています。

 僕はこれには反対です。アバウト、方向性がよく分からない、学生生活を送っている人間が休学という選択肢を選ぶ事で、1年後の彼・彼女の考え方は大きく変わる可能性があります。それに、皆と同じようにただ単位をとって、バイトして、サークルして、のサークルから抜け出すことで自分の人生を新たな視野で見つめ直すこともできると思います。


ギャップイヤー・休学「イエスorノー」
〜自分で考えよう〜
 ここまで、ギャップイヤーと休学の違いから、双方の正当性について勝手に喋らせて頂きました。

 これから、グローバル人材育成がもっと必要だ!とさらに騒がれるようになり、このギャップイヤーと休学の話も熱くなってくるでしょう。しかし、ここで一番重要、僕が一番伝えたい事は、


ギャップイヤー・休学しても、最後に全てを決めるのは自分だ!
いうことです。
 就職活動に役立つから、自分の大学生活を変えてみたい、何をやりたいかもっと深く考えたい。

 考える事はひとによってバラバラで数多くあるでしょう。何をするにあたっても、この「空白期間」を作る、というのは自分を真っ向から見つめ直す良い機会です。それが例え卒業を遅らすことになろうが、就職活動で不利に働こうが、リスクが伴っているだろうが、関係ありません!
重要なのは、

- そもそもなぜ自分が今ギャップイヤー・休学をすることを考えているのだろうか?
- 学業から少し離れる事で何を学びたいのか?
- 将来的にどうやって役立てたいのか

 日本は、まだまだ古くさい伝統にとらわれ過ぎています。学生=大学の傘、なんていう帝国主義の考え方の時代は終わりました。ただでさえ国際化に乗り遅れた日本。若い世代の人たちが自らの意志で決断、実行していける機会の一つが休学、またはギャップイヤーなだけです。将来は医者になるから休学なんてしてる暇がない!素晴らしい考えだと思います。自分の意見をしっかり持ち、問題意識があるからこそ大きく学ぶ大学で人々は育っていくと思います。他の人がどう思っているかなんて関係ありません!

 今後も限られたチャンスをモノにする、だけではなく、
 
 チャンスを自ら切り開いていってやりましょう!

 今日は長文になってしまいました。
読んでくれた皆様、ありがとうございました!

プロフィール:
牧浦土雅
e-Education Project Coordinator
Commodity Broker
URL: 途上国メディア「トジョウエンジン」:eedu.jp/blog
Twitter: @DogaMakiura
Web: dogamakiura.net

記事一覧

フロンティア・フォーラムトップページへ戻る

アーカイブ