代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「ギャップイヤーを取得して、自分の何が変わったのか?~我が心の考察」富田さん写真4223160.JPG

冨田 典希
神戸大学農学部資源生命科学科3年(休学中)


 はじめまして。
私は2年生を終えた時から1年間のギャップイヤーを取り、約8か月をフィリピン、オーストラリア、インドなどで過ごしました。このエッセイはその期間に感じたことや帰国後に考えたことをまとめたものです。同じように休学やギャップイヤーを考えている方に、これを読んで参考にしていただけると嬉しいです。

1. ギャップイヤーに至った経緯
 私は高校までを地元の富山で過ごしました。小さいころから海外のニュースに興味があり、特に食糧問題は私が農学部に進むきっかけになりました。また日本との文化の違いを肌で感じてみたいとも思っていたこともあり、大学ではいろいろな国に行きたい、と思っていました。

 神戸大学に入学後、初めて行った海外はシアトルで、英語研修を受けました。大学ではフィリピンで活動するNGOにも所属したこともあり、とくに発展途上国に興味を持ちました。海外で過ごした時間は私にとって毎日が新しい発見や出会いの連続で、刺激的でした。英語を重点的に勉強し、多くの外国人の友達を作っていくうちに、専門である農学を通して世界を見たい、もっと日本とは違う文化に触れたい、大学ではできない経験をしたいと思うようになり、1年の休学を決意しました。


2. 8か月の"縛りを設けない"海外生活
 フィリピン・オーストラリア・インドをメインに、それぞれ2,3か月滞在し、そのほか近隣のアジア諸国を訪ねました。フィリピンでは英語を勉強し、知り合いの農業団体の人たちに農場の様子を見せてもらったり、たまたま紹介してもらった災害救助団体を訪ねたりしました。

 ワーホリビザを取得して向かったオーストラリアでは、トマトファームで資金稼ぎのため住み込みで働きました。そしてインドでは、JGAP寄稿者でもある江口匠さんとヒンディー語を使って英語を教えるボランティアに挑戦し、現地で仲良くなったインド人たちと車をシェアしてネパールに行ったりもしました。時には日本でできた友達に会って助けてもらったこともありました。

 マニラでは神戸で知り合ったフィリピン人の家に泊めてもらい、インドネシアでは留学生の友人の弟に切符の購入を手伝ってもらい、香港では初めての海外のシアトルでつくった友達に案内をしてもらいました。大学に入ってから、機会があれば積極的に海外に友人をつくっておいたことが、こういった形で戻ってきたことで感動を覚えました。

 世界一周にこだわらず、一つの国にもこだわらず、テーマも決めず(しいて言えば自分の興味に従う)過ごした8か月でした。縛りを設けなかったことで、柔軟にプランを変更し、じっくり好きなことをできました。結果として自分の興味を突き詰めることができ、満足度の高い過ごし方になりました。


3. ギャップイヤーで得られたもの
 いよいよ、ギャップイヤーの私的な分析です。

・生命力が上がった
 フィリピンのド田舎に泊まったり、トマトファームにて住み込みで働いたり、砂漠の街でボランティアをしながら滞在したり、言葉の通じない地域を一人で旅したり。日本の快適さとは程遠い、時には過酷な環境で過ごすことで、明らかにいつもは使わない頭の筋肉を使いました。

 不便さや大変さがあったからこそ、毎日が刺激的でもありました。いろいろな環境に行きそこに適応するという経験は日本ではめったにできることではないので、成長して帰ってくることができたと思います(何人かから実際に、「冨田は別人みたいになって帰ってきたな!」とも言われました笑)。

・言語オタク(?)になった~現地言語は"文化そのものを習得するツール"
 大学に入ってから、私はとにかく英語を使うことが好きでした。英語を使えば違う国や文化の人とも意思疎通ができる、そのことに大きな楽しみを感じていました。しかし、ヒンディー語を勉強してインドでほぼヒンディー語しか通じない場所に滞在したこと、そのあとインドを旅してまわったことで、英語だけでなく現地の言葉を学ぶ楽しさを知りました。

 私にとって英語は"世界的な共通語"という認識ですが、現地の言葉は"文化そのものを習得するツール"のようなものです。また彼らの文化に対する敬意を払い、より踏み込んだ交流ができるとも思っています。慣れるまでは大変ですが、自分の文化的なバックグラウンドがひとつ増えたような気がして楽しいものです。


・人生に対する考え方が変わった~理系でギャップイヤー取得は少ないが・・
 当初、ギャップイヤーを取ることを私は少し躊躇していました。私の周囲、とくに農学部のような理系学部に、ギャップイヤーや留学を経験した人がほとんどいなかったからです。しかし実際にやってみると、周囲の目というのが実は大した問題ではない、むしろ21歳という時期をさまざまな経験に投資することの方が、はるかに大事だと思うようになりました。

 「時間を投資する」という考え方を得られたのは収穫でした。そして投資するのは若いうちに、さまざまなことに対して行うと、もっとも投資効率がいいと思います。(もちろん人によって事情は異なるでしょうが)最短ルートで「卒業→就職」という道がすべての人にとって最善なのでしょうか。人によっては、時には少しアカデミズムを離れて、人生を豊かにするためにいろいろチャレンジすることも大事なことだと信じます。


4. 最後に~新しい年を迎えて
 今年4月から、再び大学に戻る予定です。3年生になるので研究室の配属も行われます。ギャップイヤー中にいくつか生産現場を直接知ったこともあり、自分の専門分野の農学に対する考え方もはっきり持てるようになりました。今後は研究レベルで、自分の経験が役に立つことでしょう。

 また、専門分野以外でも昨年以上にさまざまな挑戦をしていきます。タガログ語の習得やWeb制作の勉強、新しいバイトなど、すでに始めたこともありますし、今後も新しい経験をしてみて自分の学びとしたいものです。

 最後に、今回私がギャップイヤーという貴重な経験をできたのは、たまたま私にはそれができる恵まれた環境にあったからです(たとえば日本のパスポートは、本当に強いです)。

 もしあなたがまだ若くて、少しばかりの投資をできる余裕と意欲があるならば、ギャップイヤーはとても魅力的な選択肢です。日本にもこの文化が根付くと、もっとおもしろい社会になっていくのでは、と心から思います。


プロフィール:
冨田 典希(とみた よしき)
神戸大学農学部資源生命科学科3年(休学中)

 専攻は農学・植物学。2年修了後にギャップイヤーを取得し、語学留学・就労・ボランティア・バックパッカーなどアジアを中心に8か月を海外で過ごす。英語、ヒンディー語、タガログ語、ロシア語を勉強中。
Twitter: @yoshiki_tee

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