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日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

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藤本政信(留学コンサルタント)

2007年、私は32歳でカナダのトロント大学にMBA留学しました。
留学を終えて5年近くになりますが、留学に至る道、現地で経験したこと、すべてが今の私にとてつもなく大きな影響を及ぼしています。

留学した人の思い出と言えば、「楽しかった」思い出を聞くことが多いと思いますので、ここではあえてあまり語られることのない「打ちのめされる経験」について書いてみたいと思います。

海外留学、特に大学や大学院への正規留学においては様々な機会で困難が降りかかってきます。そこで多くの人が「打ちのめされる」わけです。
だから海外留学は大変だよー、と言いたいのではなく、むしろ「打ちのめされる経験」があるからこそ、海外留学は最高だ!ということをお伝えしたいと思います。


留学前から始まる試練
試練は留学前から始まります。

海外の大学や大学院に留学するためにはTOEFL、IELTSなどの英語試験で、入学を許可されるスコアを獲得しなければなりません。

私は元々海外経験も旅行以外はないし、そもそも英語嫌いの人間でした。
20代は完全に英語を避けて生きていました。
そんな私ですから30歳になる年になってTOEFLの勉強を始めたときは、完全にこのプロセスで打ちのめされたわけです。

当時月に1回だった受験機会をフルに使い、入学許可を得られるスコアを得るまでにかかった時間は合計21ヶ月。
勉強しても勉強しても上がらないスコア。
試験を受けるたびに自分の至らなさをスコアという冷酷な数字で突き付けられる日々でした。


留学後も続く試練
無事に大学に合格して現地に渡ると打ちのめされる経験は更に加速します。

まず、私が経験したのが、250人いた同級生の中で一番英語ができないという現実。
大学の入学許可をもらえる英語のスコアを持っていても、最初のうちは、授業についていけないのはよくある話です。

大学で英語ができないという辛さをもう少し具体的にいうと、こんな感じです。

・教授の言うことが10%も分からない。宿題に何が出たかも分からない。
・下手な英語だと子供がしゃべるように聞こえるらしく周りに子供扱いされる
・日本語だったら絶対負けないような議論なのに英語がうまくしゃべれないばかりにロクに伝わらずに終わる
・期末試験では内容は理解できているのに回答した英文が間違っているという理由で減点される
・グループでのディスカッションでメンバーの早口の議論についていけず、一言も発することができず3時間を黙って過ごす

本当に悔しい思いをする瞬間です。
でも英語以上に打ちのめされるのが、こんな経験です。

・日本人なのに日本のことを聞かれてもよく知らないことに気づく
・今まで当たり前だと思っていた日本人としての価値観が世界から見て必ずしも正しくないことを知る
・別の国の出身者は自分よりはるかに年下なのに将来のこととか、自分の国のことをものすごく真剣に考えていることを知る
・どんなに自分が得意だと思っていた分野でも上には上がいることを知る

要するにこれまで自分が知っていた知識や世界は随分と限られたものだったということを知る経験です。
リアリティをもってこうした経験をすると人間はある種のショックを受けるのだと思います。


打ちのめされるからこその経験
ここまで聞いて、「いいなあ、自分も打ちのめされに行きたい」って思える人は、あまりいないかもしれません。

私も留学していた当時は、辛いなーと思っていました。
でも留学を終えて数年経った今、その良さをジワジワと噛み締められるようになっています。

海外留学中は大げさに言えば毎日が打ちのめされることの連続です。
そのため、いつの間にかある種の免疫が出来てきます。

少々辛い場面でも何とも思わない図太さが出来ます。
何か問題になる前に解決に向かって自ら動くという行動パターンが身につきます。
これは、次に新たな世界に飛び込んだり、チャレンジしたりすることに積極的になれるということにつながります。

そして、今まで知らなかった外の世界でショックを受けた人は、あらためて外の世界の基準から見た自分を客観的に再評価できるようになります。

世界で何かをするには、どういったレベルを目指さなければならないか
どのくらい努力すればそのレベルに手が届くのか

それが世界を知るということでもあり、世界視点でものを考えられるということの第一歩なのではないでしょうか。

さらに、そうした困難を乗り越えて留学を終えたときは、やればできるという自信と成功体験を持つことができます。

自分がよく知っている世界を飛び出て、知らない世界を経験したからこその強さが生まれるのです。
自分の世界を広げることを避けていては、決して持つことのできない強さだと思います。


いかがでしょうか?
これが私の思う海外留学の隠れた効能、打ちのめされる経験です。
こういった経験をするとその後の人生にとても生きてくると思います。

あなたも打ちのめされに行きませんか?


プロフィール
藤本政信
2009年トロント大学経営大学院(MBA)修了
留学中に感じた多様な視点を持つことの素晴らしさを伝えたい思いと、海外でも活躍できる自立した人材育成の必要性を感じて、留学コンサルタントとして起業。

Blog:http://xsightplus.com
Twitter:https://twitter.com/XSightPlus
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