代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「一度きりの人生、夢を全力で追いかけろ!」河本さん写真.jpg

川本和
英国・サウサンプトン大学進学予定


 イギリスの大学に行くと決めたのは、高校1年の秋。第2希望なんてものはなかった。
通っていたのは中高一貫校、そのまま行けば大学もついてくる。いわゆるエスカレーター式だ。でも頭はイギリスでいっぱいだった。いや、夢に夢中だったと言うべきかもしれない。ただひたすらに、F1という世界最高峰のレースの舞台で、最速のマシンを作りたかったのだ。これが僕の夢。
しかし半年前には、こんな自分の姿は想像もできなかっただろう。

「俺は将来、何をすればいいんや?」

 春、高校に入ったとき、夢なんてものはなかった。
ただ、目の前に積み上げられた宿題があるだけ。なんとなく、宿題をこなす毎日。地球温暖化と言われてるから、将来は環境を守る仕事がいいのかな?そんなことを思いながら、毎日をただ"だらだら"と過ごしていた。ありふれた高校生活だ。

 しかし僕は幸運だった。高1の夏休みに、タイに行く機会があった。研修先はタイのトップ校、マヒドール高校。そこの生徒は天才的な頭の良さを持つと共に、英語もペラペラ。将来何をしたいかも明確。正直、自分なんか歯が立たないレベルである。彼らとの差に、僕は焦りを感じていた。このままではダメだと。

 マヒドール高校の友達の家にホームステイする機会もあった。当然、日本とは全然違う。ある日シャワーを浴びていると、どこからかトカゲが現れてきたりする。そんな時、トカゲを怖がって避けていた僕を見て、その友達は笑った。
「なんでトカゲを怖がるん?めっちゃかわいいやん!」
果たして、英語で言われたので関西弁なわけはないのだが、とにかく僕には、わけが分からなかった。「かわいい?トカゲが??こいつは変な奴だ」

「変なのは俺の方だ。」

 生き物が好きだから、トカゲを見ると笑顔のその友達。変じゃない、むしろ素直すぎるくらいだ。
自分はどうだ。別に好きじゃないのに環境保全の仕事をしたい。人のため?そんなの、ただかっこつけてるだけじゃないか。トカゲさえ嫌がるのに、環境という、生物に関係する仕事をしたいなど、どうかしてる。
おかしいのは自分自身だ。

 タイから帰国後、必死で考えた。
自分は将来、何をすればいいのか。

「なんで好きじゃないことをするん?」

 頭の中によぎるこの思い。そうだ、自分の好きなことをすればいいんだ。
素直になると、答えはすぐに出てきた。

「俺はF1が好きや。F1で最速のマシンを作ったる!」

デザイナーの奥山清行さんは、彼の著書"人生を決めた15分 創造の1/10000"でこう書いている。

 "好きなことが見つかるまでは、ふらふらしていても構わないが、いったん自分の好きなことを見つけたら、死ぬほど努力して、心の底から「負けたくない」と思うべきだ。"

"好きなことを見つけたら全力集中。そして堂々と「自分は努力している」と人に語ろう。"

 まさに夢ができたとき、僕は誰にも「負けたくない」と思った。イギリスに行くという選択も、本気で夢を叶えたいと思ったからこそだ。F1が初めて行われた地で、現在もほとんどのチームがイギリスに本拠地をおいている。もちろん、レースの世界では英語が共通語。日本にとどまる理由など、全くなかった。むしろ一刻も早く、本場で学ぶべきだ。最先端の技術が集まるF1には、優秀な人間が集まる。相手はケンブリッジ大学で学んできたやつらだ。のんびりしている時間などない。
 気付けば、だらだらと過ごしていた以前の自分は、跡形もなくなっていた。例えば、TOEFL iTP。当初は380。それを527、海外大学への進学レベルまであげることができた。

高3の冬
 周りが推薦で大学を決めるなか、自分だけが取り残されていく。もし落ちたら、親には日本の大学に行けと言われていた。さすがに怖かった。でも自分は努力した。誰にも負けたくないと本気で思った。だから合格通知をもらったのは、今思えば当然のことだと思う。

 これから5年間、イギリスで空気力学について学んでくる。空気の力を味方につけて、より速いマシンを作るためだ。英語が通じなかったり、バカにされることもあるだろう。でもそんなのは関係ない。ぬるま湯につかるために、イギリスに行くんじゃないんだ。

 夢を見つけたとき、やりたいことができたとき、行動して前に進み続けなきゃいけない。しかし多くの人は、途中で進むのをやめる。夢への道の険しさを前に、あきらめるのだ。夢を叶えるのは、一握りのあきらめなかった者だけ。皆と同じように、楽な方向に進みたいか?僕は嫌だ。一度きりの人生、意地でも前に進み続けてやる。

そして夢を叶えてこう言ってやる。
「俺は誰よりも努力したんだ。」


プロフィール:
川本 和
1995年京都生まれ
立命館高校を卒業し、2014年秋からイギリス・サウサンプトン大学に進学。イギリスで大学院卒業後、F1のエンジニアになるのが夢。ブログ「わたぽんWorld@UK」にて、「イギリス」や「留学」、「F1」などについて、情報発信中。

Twitter: @wataponf1_uk
Facebookページ:わたぽんWorld-イギリス留学×F1(http://on.fb.me/1nQMrxv
ブログ「わたぽんWorld@UK」:http://watapon-f1.com/

記事一覧

フロンティア・フォーラムトップページへ戻る

アーカイブ