代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「大学入学前の半年ギャップイヤーは、学びと出会いに満ちている」大矢さん写真.jpeg


大矢聡美(おおやさとみ)
英国・サウサンプトン大学9月入学


偶然生まれた半年ギャップイヤー(gap half year)!
 このギャップイヤーは、意図していたものではなかった。高校卒業後、イギリスの大学へ進学する9月までの学事暦の半年差の期間をそう呼んでいただけであって、自発的に取り組んだわけではない。

 当たり前のことだが、半年のギャップイヤー中、私は学生でも職業を持つ人でもなかった。さまざまな場面で社会的ステイタスを問われ、「自分は何者なのか」ということを考えるようになった。ときには、損した気分になったこともある。

 そんな中、さまざまなことにチャレンジするように心がけた。アルバイト、ボランティア、大学の授業の聴講、イギリス語学留学などが挙げられる。アルバイトでは、衣料品倉庫でパッキングや出荷作業を行った。一見単純な仕事から垣間見る世界はとても興味深かった。発展途上国の工場からやってくる商品。倉庫で働く大勢のパートや非正規の女性達。大量生産される衣服。流通の実情。いろんな発見や疑問でいっぱいの仕事だった。


多様な社会体験や就業体験
 一方、ボランティア活動は、母校の小学校のサポート、障がい児サークルのお手伝い、外国人観光客のための観光案内、地域のイベントスタッフなど。自分より下の世代に触れることで、今の子どもの一般像を知ったり、客観的な目で子どもを見て、自分の子ども時代にはなかった視点を獲得したりした。観光案内のボランティアでは、どのようにすれば楽しんでもらえるか、まさにおもてなしについて考える良い機会であった。イベントのスタッフとしての仕事も、お客さんのことを考えるだけでなく、合理的で効率的な運営というものを意識するようになった。

 さらに、大学に行って授業を受けることも幾度かあった。さまざまな人とのご縁のおかげで、特別な計らいで、春休みや夏休みのセミナーに参加できた。授業で学んだことはもちろん、大学在学生からも多くの刺激を受けた。


英国での語学留学
 また、ギャップイヤー中の一番大きな取り組みとして、5月から6月にかけてリバプールで1ヶ月間の語学留学をした。ヨーロッパ、南米、中東、アジア、アフリカの国からの学生とともに英語を学んだ。ホストファミリーはフィリピン人で、ステイ先の学生はベネズエラ人とサウジアラビア人。毎日いろんな違いを見つけては驚いたり面白く感じたり、何も学ばなかった日はなかった。

 彼らを含め、友人達からはいつも質問のシャワーだった。「宗教は何を信じているの?」「どうして日本はアメリカに戦争で負けたのにこんな経済大国になれたの?」「(鞄につけていた学業お守りを見た友人が)これは何?」「(いただきますをすると)それは何のあいさつ?」言い出せばきりがない。たったの1ヶ月間だったが、とても刺激に満ちあふれた毎日だった。


所属・肩書のない半年間で得たものは・・
 学生という枠にとらわれない半年間は、私を大きく成長させてくれた。所属や肩書がなくても、自分を受け入れてくれる場所も見つかった。そして、この半年間に獲得したものは経験だけではない。人との出会いを通じて、多くのつながりも得た。今まで関わることの無かった世代であったり、自分とは全く異なったバックグラウンドの人であったり、実に多様であった。こうしたつながりのおかげで、大学の授業やその他のイベントに参加させてもらうこともでき、つながりの大切さを実感した。

 私は、これから4年間英国の大学で学生生活を送る上で、そして人生のどこかでも、このギャップイヤーでの経験や人とのコネクションは役に立つと信じている。どのように人生に変化をもたらすかはまだわからないが、今からとてもワクワクしている。英国での生活は苦労の連続になると思われるが、ギャップイヤーで心がけた「チャレンジ精神」やさまざまな発見を生み出した好奇心をいつも大切にして、貴重なモラトリアムにしていきたい。


プロフィール:
大矢聡美(おおやさとみ)
1995年大阪生まれ。大阪府立茨木高等学校卒業後、2014年9月に英国のサウサンプトン大学に進学。一年目は留学生のための学部進学準備コースを受講し、二年目から学部生として3年間社会学もしくは社会学&社会政策を専攻予定。社会学を専攻するにあたって、いちばん興味のある話題は、医療やその他の科学技術における社会的倫理問題。
Twitte:@stm_441
「留学という名のモラトリアム」寄稿:http://gakusei-ryuugaku.dreamlog.jp 

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