代表ブログ Jギャップは社会変革のイニシャル!

「ついに大学に、文科省の"ギャップイヤー予算"がつく!」


※この記事はBLOGOS でもお読みいただけます。(本欄下の関連記事除く)→


http://blogos.com/outline/104621/
新ギャップイヤー.jpg


ギャップイヤー予算の原点はGP事業
 文科省の「大学教育再生加速プログラム(略称:AP)」をご存じだろうか。これは同省の大学学部(短大、高専含む)を対象にしたGP(グッド・プラクティス)事業のレビューの中で、平成26年度(今期)に誕生した10億円規模の採択事業だ。社会が大学に期待する内容は質的・量的に過去とは大きな違いがある。例えば、大量生産・大量消費で右肩上がりの経済の時代ではなく、想定外の事象に遭遇した際に、課題解決能力は問われ、課題を抽出し、自分ごととして設定していく主体的な学生の出現を期待されている。そのためには大学は教育内容や仕組みを検討しなければならないが、個々の大学の自助努力では限界がある。そこで、過去の改革をベースにして実施される改善や進化に対しては、国はインセンティブとして、支援を継続・発展させる必要があるとの考えで生まれた競争資金だ。

ギャップイヤーには「プラン」と「プログラム」があり、今回は後者
 初年度である今期は、「アクティブ・ラーニング」「学修成果の可視化(指標モデル)」「入試改革・高大接続」の三つのテーマで大学に公募をかけて、選定した。

 そして、4月から始まる平成27年度のテーマに、新たに「長期学外学修プログラム(ギャップイヤー)」が加わることになった(予算成立を前提)。あらためて、ギャップイヤーの意味は、「親元・教員から離れた非日常下での社会体験(ボランティア、課外留学、長期の旅)や就業体験(インターンシップ、ワーホリ、アルバイト等)で、期間は3-24ヶ月」を指す。そして、若者の任意での世界一周旅行に代表される「ギャップイヤー・プラン」と、米国なら国際ボランティア機関の「Peace Corps(平和部隊、日本の青年海外協力隊の原型)」や「Teach For America」、プリンストン大学などの国際コミュニティ活動の「ギャップイヤー・プログラム」がある。

 今回のギャップイヤーの予算導入については、本欄1月12日付のJGAP代表ブログ「日本再興戦略にギャップイヤーは入り、文科省スーパーグローバルハイスクール採択校でも導入が進む」( http://japangap.jp/blog/2015/01/50300.html)でも紹介したが、昨年5月に文科省で議論していた「ギャップイヤー検討会議」の報告書を受け、同年6月に国家戦略である「日本再興戦略」に、ギャップイヤー推進の文言が入っていた。そして、今回晴れて予算が付いたという流れだ。

 上図を参考にしていただきたいが、文科省の全体予算が前年を割る中、昨年よりも増額予定だ。その意欲が伺えるが、大学がギャップイヤー・プログラム(文科省はプロジェクトと呼称)を立案する国内外での1ヶ月以上の「長期学外学修プログラム」(注1.)は、どんなものが考えられるであろうか。

ギャップイヤーは「空白」でなく、「機会」 ~失敗する体験をよしとしよう!
 例えば、国内であると、都心部の学生の「限界集落や被災地におけるボランティア活動」や「消滅可能とされる地方自治体や特色ある中小企業でのインターンシップ」などが考えられるだろう。「comfort zone(ぬるま湯的、居心地よい空間)」から抜け出し、ソフトスキルを磨いて、困難な時代に対応できるタフな人材に育ってほしいという"社会修行"のコンセプトなので、学生は大学の教室内だけでなく社会でもまれ、実体験を通して育つものという発想の共有と理解が必要だと考える。現に、ギャップイヤー帰還者が大学に戻り、卒業後、「グローバル人材」や「社会的課題解決型人材」に育っている実績がある。

 ギャップイヤーは「時間の空白」ではなく、「キャリアの機会」だ。各大学は、学生が「絶対やってみたい!」とワクワクし、チャレンジ精神を喚起すような提案をステークホルダーと協議の上、してほしい。もちろんチャレンジゆえ失敗し、鼻っ柱を折られるような体験こそ大事だという評価も忘れてはならない。

ギャップイヤーはキャリアの多様性を生む!
 ギャップイヤーが日本の大学に定着し、その素晴らしさが理解されてくると、一律に同い年の者同士の大学ではなくなり、体験したこともバラエティーに富んでくる。海外のギャップイヤー生やギャップイヤーを経験した者同士の文化や人種を超えた交流も自ずと進んでくる。それは、日本に欠けているキャリアの価値観の「多様性」が生まれる大きな契機になるのではと私は期待している。

(注1.)3ヶ月未満のギャップイヤーは、英国では mini gapと呼ぶことがある。また、2011年に日本に誕生したJGAPに1年遅れて発足した米国ギャップイヤー協会(AGA)は、2ヶ月以上をgap yearと定義している。

(関連記事)
2014年5月29日付記事 ここから日本のギャップイヤーの確かな一歩が始まった!→
「日本もギャップイヤー推進へ~学生の社会経験の支援を!」 文科省有識者会議が報告書提出http://japangap.jp/info/2014/05/421-1.html

2012年10月21日付
社会的課題にチャレンジする若者養成をミッションとした"ギャップイヤー社会起業"が英国と韓国で誕生!-代表ブログ http://japangap.jp/blog/2012/10/post-16.html

2013年1月9日付
なんと、大学院が「ギャップイヤー・プログラム」を創った?!~ "起業家精神と経営管理の"ギャップイヤー修了書"が授与される南ア・有力大学院1年専修コースが出現-代表ブログ http://japangap.jp/blog/2013/01/-httpkodamayusukewordpresscom20121207efbc91efbc99e6adb3e381aee88ba5e3818de8b5b7e6a5ade5aeb6e38081e4b.html

海外ギャップイヤー事情(120記事以上): http://japangap.jp/info/cat44/

【JGAP設立4周年スペシャル紙面企画】 エッセイ欄『フロンティア・フォーラム』 「いいね!」数ベスト5稿紹介! http://japangap.jp/info/2015/01/jgap1000.html

「日本再興戦略にギャップイヤーは入り、文科省スーパーグローバルハイスクール採択校でも導入が進む」

※この記事はBLOGOSでもお読みいただけます→ http://blogos.com/outline/103301/


2014年の「日本再興戦略」の中に、ギャップイヤー!
 「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」は2013年6月に安倍政権下で閣議決定されたが、この中に大学改革に関する記述がある。それは、「グローバル化等に対応する人材力の強化」の見出しで、「世界に勝てる真のグローバル人材を育てるため、教育再生実行会議の提言を踏まえつつ、国際的な英語試験の活用、意欲と能力のある若者全員への留学機会の付与、及びグローバル化に対応した教育を牽引する学校群の形成を図ることにより、2020 年までに日本人留学生を6万人(2010 年)から12 万人へ倍増させる。」というものだ。中略するが、「高校・大学等における留学機会を、将来グローバルに活躍する意欲と能力のある若者全員に与えるため、留学生の経済的負担を軽減するための寄附促進、給付を含む官民が協力した新たな仕組みを創設する」とあるのは、現在の「官民協働海外留学支援制度~トビタテ!留学JAPAN」につながっている。

 ギャップイヤーについては、定義として、「3か月以上の本組織から離れた社会体験(ボランティア・課外留学・旅)や就業体験」(注1)であり、一部「トビタテ!」の奨学生が重なっているが、本丸はその後の記述にある「就職・採用活動開始時期変更を行うほか、多様な体験活動の促進に資する秋季入学に向けた環境整備を行う」の「多様な体験活動」にあたると考えるのが、自然だろう。つまり、この時点では、内容はともかく「ギャップイヤー」という言葉はなかった。

そんな状況下、2013年10月に文科省に「学事暦の多様化とギャップタームの検討会議」( http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/57/index.htm )が立ち上がった。翌年3月まで計5回開催されたが、東大・一橋・慶應等の5学長、経団連の副会長他経済団体から3名、NPO側からETIC.とJGAPの代表理事が委員に名を連ね、産官学民の各セクターから15名のリーダー達により、 「ギャップイヤーの日本や海外の現状や、その在り方」が議論された。筆者は5回中、「世界のギャップイヤーの浸透状況」と「世界の大学のギャップイヤー制度」というテーマで2回情報提供(委員の情報提供は合計5回)をしたが、国家レベルで初めてギャップイヤーが議論されたと言っても過言ではないだろう。その過程で、国際通用性の観点から、東大の造語であった「ギャップターム」を「ギャップイヤー」で議論するという合意が得られた。5月29日に審議内容を集約し、「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて」(意見まとめ)が、検討会議にも全出席していた下村博文文科大臣に手交された(注2)

公的なギャップイヤー制度導入大学の増加で、私的な一般学生の挑戦も加速する!
 翌月6月24日に、「日本再興戦略」(改訂2014―未来への挑戦―)が、閣議決定されたが、「大学改革/グローバル化等に対応する人材力の強化」の戦略の中で、「日本人留学生の倍増に向け、ギャップイヤー等を活用し、希望する学生が国内外で多様な長期体験活動を経験できる環境整備を推進する」とギャップイヤーが記載されている。これは検討会議の審議内容が反映されていることがわかる。日本でも今後、東大や国際教養大に続いて、奨学金や補助金の支援を受けて「ギャップイヤー制度」を導入する大学が確実に増えていく。そうなると、"シャワー効果"ではないが起爆剤となり、自主的にギャップイヤーを取得する若者も、おとなや社会の理解も大きく進むことが期待できる。また無償、低廉、もしくは有給の「ギャップイヤー・プログラム」も登場してくるだろう。(現在の有給の例:JICAの青年海外協力隊や地域おこし協力隊)

 ギャップイヤーの意義は、リーダーシップを持った「グローバル人材育成」と「地域課題解決型人材育成」、それに係る「起業家輩出」だと考える。また、シームレスでの「高校→大学→就活→企業人」という直線的なキャリアが万人にとって、はたしてよいことなのかの問題提起になるとも思っている。ストレートに企業社会に入った後が、年功序列や終身雇用の限界が来ている中、「非連続、所属なしのキャリア」を社会人になる前に体験して、レジリエンス(耐性)を高める効果も期待できるからだ。


先進的な高校(SGH)で、ギャップイヤーが進展中!
 英国で誕生したギャップイヤーは、高校・大学間のキャリアの「トランジション(移行、転機)課題」とも言える。それゆえ、先進的な高校側も敏感に反応してきている。

 国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を目的とした教育活動を支援する文科省の「平成26年度スーパーグローバルハイスクール(SGH)」の採択校56校(246校応募)の取組を概観すると、例えば、順天学園順天高校(東京)は、「SGHの成果を、国内外のアカデミックな大学との高大連携の拡大につなげていき、将来的には日本の高校生や大学生が国際社会貢献活動として取り組めるギャップターム・イヤーの基盤構築をめざして、国際系の各大学や国際的なNPO機関、国際的な企業などとの連携を図っていく」とある。早速、同校は、英国のギャップイヤー・プログラム提供NPOの「プロジェクトトラスト」(1967年設立。スコットランド西沿岸に浮かぶ内ヘブリデス諸島コール島に本部。英国全国から集まった意欲ある青年を訓練して、世界60ヵ国に毎年300人規模を送り出し、既にに7千名以上がグローバルな世界での社会貢献活動を体験している)と連携を模索している。

 昭和女子大学附属昭和高等学校(東京)は、「第3学年次をグローバル・リーダー育成に効果の高いとされるギャップイヤーとして併設大学の海外分校『昭和ボストン』を拠点とした留学プログラムを組み、高大連携の大学準備教育を行う」とあり、これは筆者がJGAP設立時である4年前から提案していた「附属高校の大学入学前ギャップイヤー」の具現化と言える。また、県立長野高校は、「ギャップタームプラン(日本の大学へ進学を希望する海外高校生の短期受入等)」を掲げている。

 他でも、SGHに採択はされなかったもののアソシエイト(国立6、公立27、私立21校)としてグローバル・リーダー教育の開発・実践に取り組む中核的な存在である立教新座高等学校(埼玉)は、今年度から、その名も「ギャップイヤー留学」を実施する。これは現高校3年生を対象に、大学入学前の2月からの1ヶ月間を利用するもので、正確には英国のmini gap(短めのギャップイヤー)に相当する。米国バージニア州にあるメアリーワシントン大学の敷地内にあるランゲージセンターで、1ヶ月間に計100時間の英語の授業を受講し、世界から集う留学生と共に集中的に実践英語を学びという。このプログラムは、単に英語力伸長が目的だけでなく、論理的思考力や批判的思考力を同時に学び、ホームステイで異文化理解の促進から大学進学や就職後にも使える力を身に付けることを目的としている。


ギャップイヤーは、新たな"キャリアの創造"!
 米国・ニューヨーク・タイムスの新年1月4日付の記事が興味深い。見出しは、「In Fervent Support of the 'Gap Year'」(ギャップイヤーの熱烈支持の中にあって)。娘のギャップイヤーに反対していた母親が、徐々に変わって支持していくばかりでなく、下の息子に今度はギャップイヤーを勧めるまでの心情のプロセスが書かれている。教育に関して効率第一主義の米国でも、確実に"異変"が大きくなっている様子が記述されている。データに注目すると、2010 年から2013年の間に、ギャップイヤー・フェア(各地の高校や大学で体験者が語る会)の参加者は倍増し、2012年からたった1年で、ギャップイヤー・プログラム参加者が27%増となっている(米国ギャップイヤー協会イサン・ナイト理事長)。ハーバード大やエール大でも入学者にギャップイヤー取得を推奨していることや、ミドルベリー大やノース・キャロナイナ大の研究では、ギャップイヤー経験者は未経験者より、GPA(成績)が0.1から0.4むしろ高いことなども紹介されている。

 筆者の持論だが、ギャップイヤーの概念は、日本の人材育成に関する諺でいえば、「かわいい子には旅をさせよ(旅、課外留学等)」「情けは人の為ならず(ボランティア)」「他人の釜の飯を食う(インターン、短期就業等)」だ。別に、ギャップイヤーという言葉を使用しなくても、例えば、都会の生徒が地方に「島留学」するのも多様性が学べ、ギャップイヤー的でよいと考える。  comfort zone(ぬるま湯的日常環境)を抜け出して、非日常下に身を置き修行し、時には失敗することは、若い世代にとってソフトスキル開発や生きる力につながり、その"実体験"は大きな財産になることだろう。

 ギャップイヤーは、「空白」でなく「機会」、それは新たな価値であり、"キャリアの創造"である。


(注1)ギャップイヤーの定義と4層構造
スライド1.JPG

(注2)「学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けて」
文科省ギャップイヤー図.jpg


(関連記事)
2014年5月29日付
「日本もギャップイヤー推進へ~学生の社会経験の支援を!」 文科省有識者会議が報告書提出→http://japangap.jp/info/2014/05/421-1.html

※セミナー告知! 寄稿者の話が聴ける場!これまで大学内では「大学生起業」が議論されることは稀有だった!
1/27(火)JGAP4周年記念 JGAP&TIP*S present「"大学生で起業家"というキャリアを考える」セミナー参加者募集!→http://japangap.jp/info/2015/01/jgap-189.html

新刊『<ジーニアス>可能性を見つけよう』を読んで~「HBS⇒グーグル本社⇒シリコンバレーで起業」の石角 友愛さんのキャリア論石角さん本.jpg

「What is your genius?」は、「あなたの本質は何?」の意
 石角 友愛(いしずみ ともえ)さんには、3年前に都内でお会いし、インタビューしたことがある。お茶大附属高校時代に違和感を感じて退学し、単身米国に渡ったギャップイヤーを経験している女性だ。簡単にプロフィールを言うと、ハーバード・ビジネススクール(HBS)時代に学友と結婚した。出産をし、MBA取得後、日本で就職する選択肢を振り切って、夫婦とも米国で就職した。グーグル本社退社後、ベンチャーを起業している。(JGAPギャップイヤー・インタビュー:http://japangap.jp/gapyear/2012/05/11.html )

 これまで、話題となった「私が白熱教室で学んだこと」「ハーバードとグーグルが教えてくれた人生を変える35のルール」を著しておられるが、今回は、2012年12月にグーグルのシニアストラテジストの職を投げ捨て、米国の労働市場が抱える問題解決のためのサイト運営会社を設立されて初めての著作だ。

 この新刊『<ジーニアス>可能性を見つけよう』のコンセプトは、ずばり「ジーニアス」。私は本来マーケッターだから、言葉に対して敏感なところがある。この日本語にすると、「天才」という言葉は、出版社は普通書名に入れたくない衝動にかられると思う。反発も予想される言葉であるし、「自分とは関係ない」と思われたら、潜在読者を失うリスクが高い。
 しかし、石角さんは、敢えて自分の信じるこの言葉に賭けられたのだろう。まさにそのチャレンジングな姿勢は、彼女自身のこれまでのキャリア・パスを象徴するかのようだ。

 古代ローマでは、「ジーニアス」は特別な人に授与された特権ではなく、 "天性から備わっている才能"で、それは"秘めたる力"、「可能性」のことだ。HBSのマルホトラ教授から教わった「すべての人が未知の可能性として秘めている、自分らしさの本質」のことだという。だから「What is your genius?」は、「あなたの本質は何?」という意味になる。

サイエンスと実用書の両面を持ち合わせる良書
 断っておくが、この本は単なるエッセイではない。石角さんは、心理学を修めているので、その新しい知見やデータが満載のサイエンス的側面と、日本人が米国で学び、ビジネスを通して経験したことが、惜しげもなく披瀝されている実用書でもある。

 例えば、前者でいうと、米国で就職前の学生が受ける「セルフアセスメント・テスト」(日本の自己分析テストやSPIに近い)やHBSで全学生が受ける「キャリアリーダー」などを紹介している。そして、「ひとりで自分の思考を張り巡らせるのが好きか」「抽象的な概念を好み、未来に関心あるか」「自分の感覚や周りの人間の感情などを配慮して物事の判断をするか「計画は立てず、締切間近に一番能力を発揮するか」など、簡易的に、4つの軸になる質問から16種のパーソナリティタイプを割り出し、読者に提示する。グローバルエリートというと、英語が出来て、外向的で、分析能力に長けてい等ステレオタイプなイメージを持ってしまうが、みんながみんなそう一律的なものではない。「内向的」資質であっても問題ないということも理解できる。

 また、世界で活躍するのに必要なソフトスキルとして、「5つのO(オー)」を整理する。
すなわち、Optimist ,Ongoing learning, Organized ,Open-mind, Ownershipの5つの要素だ。特に、4つ目の「オープンマインド」の記述は秀逸だ。自分をさらけ出すことを恐れず、新しいことや、未体験のこと、無知だったことに興味・関心を持つことで「オープンマインド」になるが、もともと人間は遺伝子的にそうなっていない。それを鍛えるエクササイズを5つ紹介しているが、そのうちの二つは、「過去に自分に対してひどいことをした人の立場に立ち、理由を3つ挙げる」「捕鯨や死刑制度など、感情を伴うディベート・トピックスを選び、自分の反対する意見の側に立つ」。ハッとした。残りの実践的取り組みについては、現物を楽しみにお読みいただいたほうがよいだろう。

 後者の実用書の側面では、グローバルな世界で評価されているのは、doer(行動する人) であって、talker(話すだけの人)ではないことが挙げられる。doerに必要なのは、世界に通用するスキルや知識でなく、むしろ強い目的意識だともいう。MBAで学ぶのも、一つのツールでしかなく、学んだことを使って「一体何をするか」という戦略を描かない限り、シリコンバレーに行こうが、NYに行こうが何もできないと断罪している。重要なことは、自分の中のジーニアスに向き合い、「学んだことで、こういうことをやってみる」と行動を起こせば、最初は試行錯誤でも、必ず自分の進路は見えてくると自身の経験を伝えている。

 また、個々のジーニアスに合わせて、どのような「問題解決能力」を、どのような「プレゼン能力」で、どのように「交渉力」を上げていくかも、著者の多くの経験から考察していて興味深い。

 いずれにせよ、石角さん自身も言うように、グローバル・エリートは「これを学べば、この分野で成功できる」といった単純な図式では表せない。しかし、この本には、10代でギャップイヤーから異文化空間をこじ開け、米国の競争社会でもまれ、子供を育てながら起業したひとりの日本人女性がまさに肉声で語りかけてくる。決して、米国称賛の文脈ではないことも読んでいてわかってくるし、日本への温かい眼差しとエールが心に響く。

 「日本人は、アピールするにしても必要以上にガツガツせず、謙虚な態度でいることができます。相手から評価を受けているという前提があれば、この姿勢は極めて信頼を持って受け入れられます。」(第4章 「グローバルに活躍できるハードスキルを知ろう」)
「以前の日本には、女性達が安定を求めて結婚をする時代がありました。しかし、グローバル社会はもっと不安定であることを前提にした社会であり、だからこそ"支え合える人"を求めて、より絆の強い、お互いのジーニアスに共感できるパートナーを、双方が目指すのです。夫婦関係はもちろん、そういう意識をもって人とのつながりを考え直すことが、日本でもより一層重要になるのではないでしょうか」(終章 「世界のエリートは何も犠牲にしない。」) 

 この新刊は、「世界に通用するワークライフ」に対し、多くの示唆を得ることができる。まさに、これからの日本における実践的「キャリア論」だと私は考える。

戻る 1  2  3  4

記事一覧

代表ブログトップページへ戻る