代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集
いまどきの大学生に想うこと


衆議院議員 山内 康一

文部科学省の調査によれば、この春に大学を卒業した約55万人のうち10万人以上が、進学も就職もしていない「進路未定者」だそうです。大学生にとって厳しい時代が続きます。

大学生に待望されるユニークさとタフさ
 私は、ゲストスピーカーとして大学で講義したり、学生インターンと接したりで、ときどき大学生とお話しする機会がありますが、いまどきの学生は私が学生の頃(1990年代)とだいぶ様相が違うと感じます。最近の大学生は資格の勉強やTOEIC対策とかに熱心でまじめに勉強しているし、非常に現実的です。講義をするとまじめに聴いてくれて、お行儀もいいです。そういう点は高く評価できます。おそらく私たちの学生時代より優秀です。

 ただ、それに加え、ユニークさやタフさがあればもっとよいとも思います。現実的過ぎて面白味に欠けないように、もう一味スパイスがきいていれば、より魅力的です。最近の大学生は、不況続きと就職活動の早期化・長期化のせいで、海外留学もしにくくなって、海外のバックパック旅行なども、なかなか行きにくいようです。


異質なところに身を置いて、サバイバル経験ある人は魅力的
 ユニリーバ・ジャパン取締役人事総務本部長の宮田裕子さんは、「子どもの頃とか若いときにインドとか南アフリカで生活した経験があるといった人は、きわめてハイポテンシャルである」(中略)「丸1~3年、異質のところに身を置いてサバイバルしてきた経験のある人がほしい。帰国子女がほしいわけではない」とおっしゃっています。おもしろい指摘だと思います。


常識を疑い、常識にとらわれないところから、"新しい発想"が誕生する
 カギは「若い頃の異質なところでのサバイバル経験」だと思います。異質な土地で実際に生活し、現地の人たちと交わってみると、日本の「当たり前」や「常識」が通用しないことを何度も何度も体験します。そして、人により、国により、宗教により、文化により、気候により、その「常識」が異なることを肌で感じます。そうすると「常識を疑う」ことが、自然にできるようになります。

 「常識」にとらわれないところから、新しい発想は出てきます。そして「常識」に振り回されない人は、まわりに合わせ過ぎない人です。まわりに合わせ過ぎないから、肩がこらず、肩にムダな力が入らず、型にはまりません。そういう人の方が、多様な価値観が存在する世の中で、自分を見失わずに自然に生きられるのではないでしょうか。


「歴史」と「国際比較」のタテ・ヨコ2軸で事象を見れば、判断ミスは減らせる
 また、日本と比較するための尺度となる国がひとつあれば、日本で起きていることを相対的に見つめられます。国際比較の観点があれば、判断の座標軸がひとつできます。大学生向けの講演などで私はいつも「判断するときの座標軸として、タテ軸とヨコ軸が必要である。
タテ軸は時系列の比較、すなわち歴史。ヨコ軸は、国と国との比較、国際比較。ふたつの座標軸で見れば、判断ミスを減らせる」と言っています。


国際比較の材料を得るには、日本と異なる文化や気候のところを探すのが近道
 国際比較の材料を得るには、海外に住むのが近道です。それもできるだけ日本と異なる文化や気候の国がよいと思います。イギリスにも住んでみましたが、何だか想定の範囲内でした。近代的な民主国家、先進国の豊かな国なら、ある程度予測できます。しかし、貧しい国、イスラム教の国、熱帯の国、非民主主義国家等に住むと、思いがけない発見がたくさんあって興味が尽きません。発展途上国では、想定外のことがたくさん起きます。

 大学1~3年生くらいの人たちには、異質な国での異文化体験を勧めます。それもどうせ日本を飛び出すなら、アフリカとか、中近東とか、中南米とか、東南アジアとか、日本と全然ちがう国に行き、ある程度まとまった期間(3ヶ月~1年)をその国で暮らしてみることを強く勧めます。


フィリピンの片田舎での1年のギャップイヤー生活が「面接」に生きた
 学生時代に途上国で異文化体験を積めば、就職活動のときの競争力が断然ちがってくると思います。私は大学3年生のときにフィリピンの片田舎に1年間滞在し、現地の大学に通いながら、環境NGOの植林プロジェクトでインターンのまねごとをさせてもらいました。今でいうギャップイヤーです。就職活動の面接では、どこに行ってもほとんどフィリピン留学時代のことしか聞かれませんでした。それで第一希望と第二希望の就職先の内定をもらいました。

 とりわけ、どなたにもフィリピンで経験した話は大体興味を持って聞いてもらえました。裏を返すと、各社の採用担当者は、面接に退屈していたのだと思います。何百人という学生に面接するわけですが、どの学生に聞いても「△△のバイトで社会性を身に着けました」、「サークルではリーダーシップを発揮して○○を実現しました」、「卒論では〇〇について研究しました」と、だいたい似たような話しかしてくれません。それよりフィリピンの留学体験やマングローブの植林体験、マニラのスラム街の状況の話の方が、興味・関心をもって聞いてくださったのだと思います。

 人があんまりやらないことを、学生のうちにやっておくのは何より楽しいし、第三者から見てもとても魅力的だと思います。「就活」を想う時、ギャップイヤーで途上国の異文化体験というのも、ひとつの選択肢かもしれません。

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