僕らの人生の岐路は「自転車での7大陸走破の旅」というギャップイヤー
ジェイミー・マッケンジー&ベン・ウィルソン
翻訳:本間綾香
大学を卒業し、旅に出発する半年前あたりから、僕たちは人生の岐路に立たされていた。
1つは仕事で成功し、カッコいい車と家と、口座には十分な残高が約束されるであろう道。もう1つは、自転車に乗って未知の世界に突き進めという、僕らをかき立てる声が聞こえる道。
もちろん、僕たちは後者の声に従った。それが当時の僕たちにとって、正しい選択だと思えたんだ。僕たちはわずかな荷物をまとめ、世界を見るために飛び出した。
スタートから、できる限り臨機応変な旅にしたいと思っていた。地球を周るざっくりとしたルートだけ決めて、3年ぐらいでゴールできればいいと考えていた。
イギリスを出発してから戻ってくるまで、この間に起こるすべてのことは偶然に委ねられていたわけだ。
それは、完全なる僕たちの時間だった。僕らは自分たちの直感を信じるよう導かれ、事実その通りにしたまでだった。
僕らは思考と心と目を開いて、メディアによって伝えられている見事なまでに歪曲化された世界の現状を見た。
戦争や欲望、政治的抑圧にあえぐ過酷な世界のイメージは消えていった。自転車が僕らのカギとなり、それがなければ知りもしなかっただろう、世の中の違った側面を垣間見せてくれた。
行く先々で、人間の寛大さや優しさ、思いやりに触れた。ロシアからモンゴル、中国から南極大陸まで、最も荒れ果てた貧しい土地においても、僕らが出会った人々はみんな笑顔で、意思疎通しようとする情熱を見せてくれた。
この雄大な地球とそこに住むさまざまな人間、風習、文化を見ることができたのは、この上ない喜びだった。僕たちのような方法で世界を見た人は、そうはいないと思う。
でも、なぜだろう?
僕らが見たものを、なぜもっと多くの若者が見ていないのだろう?
僕らと同じやり方である必要があるだろうか? 僕らはそうは思わない。
ギャップイヤーやタイムアウトの意味については、個人それぞれが独自の考えを持っているはずだ。ヨーロッパに行ったり、アメリカを横断したり、世界一周でもいい。
または、個人的な一風変わった視点から、自分の母国を探究する場合もあるだろう。
なんであろうと、この時間、このギャップイヤーを取ることの大切さを過小評価してはならないし、見過ごすべきじゃない。
自分が興味をもった土地を訪れ、探検し、自らの疑問を投げかけ答えを見つけ出すことは、啓発的で実に爽快な経験なんだ。
多くの人たちは、ギャップイヤーが責任逃れやラクな選択肢のように見えてしまうワナにハマっている気がする。
でも、これは全くの間違いだ。むしろ、勇気ある立派な選択であり、個人としての体験だけでなく、キャリアにおいてもすばらしい恩恵をもたらすものなんだ。
結局のところ、自分で世界を探究するよりほかに、魅力的かつ現実的な視点を得る方法なんてないんだよ!
一部の人たちにとっては明らかに正しい進路ではないし、その意思は尊重されるべきだ。
でも、これを読んでいるからには、君たちはギャップイヤーについてすでに検討しているということだろう。
さらに前進して、ギャップイヤーを取ることを決めた人たちへ。僕らは、君たちが快活で健全でより豊かな人間になって戻ってくることを保証する。
グッドラック。世界が君たちを待っている。
追い風に乗って。
【略歴】
ジェイミー・マッケンジー
1978年イギリス生まれ。ノーザンプトン大学で芸術を学び04年に卒業。現在はフリーのデザイナー兼アーティストとして活動している。今回の旅の途中、メルボルンで出会った女性ジュリアと結婚し、同地へ移住した。
ベン・ウイルソン
1981年イギリス生まれ。ボーンマス大学でインテリア・デザインを学び04年に卒業。弟のジャックと共にインターネット向けの映像制作会社「ザ・ビッグ・スカイ」を立ち上げ、ロンドンで活動している。
※映画「僕たちのバイシクル・ロード ~7大陸900日~」あらすじ;
大学を卒業したばかりの従兄弟ジェイミーとベンは、英仏海峡フェリーに乗ってフランスに向かった。それは、飛行機に乗らずに自転車だけで7大陸を走破するという壮大な旅のはじまりだった。尚、東京都写真美術館ホール、銀座シネパトスにて公開中。以後順次全国で公開予定。
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