代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

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髙 虎男( Ko Honam)

JC Group President CEO

(カンボジア在住)

同世代間での"国内競争力"を磨けばよかった時代は終わった

1990年代の半ばまで、日本の大学生にとって社会に出るということは、すなわち「出来る限りいい大手企業や中央官庁に入り、その中でとりあえず頑張る」だった。



 私が日本社会に放り出された1990年代後半には、そろそろその当たり前のはずだった既定路線に対し「本当に当たり前なの、大丈夫なの?」という疑問が蔓延し始めていた。

 今では、突然どんな大きな企業が潰れても、「あら、そうなんだ」くらいで流されるかもしれないが、当時は「あそこに入れたエリートは一生安泰」と言われ続けていた大きな事業会社や銀行・証券会社が、リアルに息絶えていく姿を、日本中がテレビや新聞で、茫然と目の当たりにした、そんな時代の走りだった。

 私も含め当時、従来の既定路線を疑いの目で見始めていた、ちょっと"意識先行"型の大学生の感覚は、「とりあえず出来る限りいい大手企業に入り、経験をつけて次のステップアップを目指す」だった。次のステップアップとは、漠然と、自分に向いている仕事ができるより良い会社への転職、くらいのイメージだった。

 その感覚で動くのがベストだと、あまり疑いもせずに思ったし、実際それしか手段がなかったとも言える。

 当時、大学にいる間に、せめて"できる"社会人への準備としては、資格取得や語学習得を目指すダブルスクール生活くらいが、目の前にある選択肢だった。

 海外留学というのは、海外大学に高い学費を払える一部の富裕層家庭向け、というイメージの、感覚的に遠い世界にあった。

 とりあえず、同じ世代の日本人大学生の間で頭一つ抜き出ておくこと・・・そこに意識を向けていたと思う。 

 当時は考えなかったが、言葉にして置き換えるとするなら、それは「同世代間の国内競争力」というところだろうか。

今、社会人スタートする時に直面する現実

 今、日本で調子が良い会社の多くは、すでに海外の人材を自社人材として採用している。

別に海外の現地法人や現地支店での採用のみ、というわけではない。もちろん、日本国内でも、しっかり海外からの人材を雇っている。

 外国人が大手チェーン飲食店の厨房でがんばっていたり、オフィスワークに励むホワイトカラーとして、日本国内で仕事をする人は既に多い。

 そのほとんどが、どこでどう覚えてきたのか、日本語もしっかりしゃべる。少なくとも仕事上のコミュニケーションに不自由しない程度にはある。

中には、メール文面を見ただけでは日本人かと見まがうような丁寧な日本語でビジネスメールを書き、普通にビジネスミーティングを日本語でこなす外国人さえいる。

 実際、私は2008年にカンボジアでベンチャー起業したたが、現地でカンボジア人を採用している。その中で一人、最も古参の人材が、東京で駐在を始めて1年半になる。

日本語はもちろん、英語も使いこなし、輸出入実務までこなす。 年齢は20代後半で

20歳前後の頃、カンボジアで日本語を勉強し、国費留学で日本に3年いた経験がある男性だ。

 人材の"国際競争力"時代は現実問題に

 彼にカンボジア現地で支払っていた給料は言うに及ばず、日本駐在になった現在でも同じスペックを持つ日本人なら同じ待遇ではとても雇えないだろう。

 要は、日本の大きい会社も小さい会社も、拠点が日本かどうか等にとらわれず、好きなところで会社や事務所を起し、好きなところで雇った人材を、日本でも海外でも自由に移動させて勤務させている、いわば"国際競争力"時代になってしまったということだ。

 彼らは母国語以外に英語や日本語を"実需"レベルで習得し、しかも日本人的にみると「えっ?」という現状待遇であっても、未来と夢を信じ、遠い異国の日本で仕事に励む。 そんな外国人スタッフに、いい未来を実現させてあげたいと真剣に思う日本の経営者がいる。

これからの時代、社会人として世に出る"日本人ルーキーズ(就活生)"の競争相手は、まさに彼らになってしまった。

 かつては「同世代の間の国内競争力」で頭一つ抜け出てればよかったが、今はそんな時代じゃなくなった。

今のうちからできることとは何か?

 "国際競争力"というとやや漠然としているが、そういう彼らと、日本で、もしくは日本の外で、仕事仲間もしくはライバルとして、同じ土俵で、同じ意識で、勝負できますか? と問われているということだ。

 今はまだ、そんなふうに働ける実力はなくて当たり前。でも同世代の彼らは、来るべく時にその環境で働けるよう、すでに準備のスタートを切っている。

 大変な時代だと本当に思うが、むしろ今までが特殊だったと考えるのが自然だ。

 たしかに、特殊な時代の「勝ち逃げ組」にあやかれなかったのは、見方によっては不運かもしれない。しかし、長い一生、若い時からそういう土俵に直面して、サバイバル力を身につけられたら、中途半端な年齢でつぶしが効かなくなる「勝ち逃げきれず組」に入らずよかった、と思える未来もあるかもしれない。

 そういう力を磨ける体験の場が用意されている、その体験に身を置くことができる。

これは私のその時代にはなかったか、あったかもしれないが遠かったものである。 

 今、それが近くにあるという事実は、現役日本人学生にとっては朗報でありチャンスと捉えるべきだろう。

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【略歴】

早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒業。

日本公認会計士。米国ワシントン州公認会計士。

監査法人トーマツを経て、2001年株式会社ドリームインキュベータ(DI)に参画。

同社の東証マザーズ上場、東証一部昇格を経験。2005年より同社の執行役員を務め、2008年3月にアジアビジネス立ち上げのため独立。

2008年9月に、"Made by Japan in Cambodia"をコンセプトに、カンボジア現地企業「JC Group」を起業・経営。

JC Groupホームページ:http://www.jcgroup.asia/index_j.php

JC Group フェイスブックページ:http://www.facebook.com/JCGroup.asia

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