代表ブログフロンティア・フォーラム

日本をよくする提言から多様性を高める主張、ギャップイヤー文化構築提案まで、
多種才々なイノベーター達のエッセイ集

「入社4年27歳で会社辞め、アジアに旅して感じる日本の危機感」 
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和田康佑
関西大学社会学部卒業(世界一周中)

 なぜ入社4年27歳で退職か
『自分の人生の時間が80年だとして、そのうちのたった1年や2年の時間をこの広い世界を知るために費やすことは大きな糧となる』信念に従い、僕は入社4年27歳で会社を辞めた。
 むろん、両親や会社には猛反対された。「旅をする、言葉の響きはいいが結局は社会から目をそらして逃げるようなものではないか」と厳しい言葉を浴びせられた。でも僕はグローバル化、情報社会が進む現在こそ、自分の目で世界を見て、世界を知ることが必要と考えた。

 目指すは、遅まきながらジャーナリスト。そして世界へ
 僕は『ジャーナリストになる』という目標を持っている。書くことが好きで、好奇心旺盛な自身の性格を考えれば、それが自分の天職だと思っている。就職活動では新聞社を受けたが不採用で、最終的に大阪の信用金庫で働くこととなった。リーマンショックが起こり、大阪でも経済は混迷を極めていく。倒産していく企業を目の当たりにし、厳しい現実を体感した。
 やがて何年かすると、『ジャーナリスト』になる目標を忘れかけていた。ある日、馴染みの社長に「お前の人生の大義名分はなんだ」と聞かれたときに、「知られるべきことが知られていない世の中に、そのことを伝えることで社会に貢献する」という志を思い出した。
 自分の人生について熟慮に熟慮を重ね、世界を旅するという夢と、ジャーナリストになる目標、信用金庫で働いた経験を混ぜ合わせ、『世界の中小企業を取材し、出版社に投稿しながら旅をする』ということを思いつく。
そして、2011年6月、僕は妻と共に世界一周の旅に出た。

一時帰国の理由
 実はこの記事を日本で書いている。当初、旅の期間は2年間で、日本へ帰らずに旅を続けようと思っていた。それが旅人らしくて格好良い気がしていたのだ。
――では、なぜ一時帰国したのか。
それは、取材活動に挑み続けるも失敗を繰り返し、自分の構想を修正する必要性を感じたのと、各国でたくさんの人々や出来事に出会い、考え方や興味が変わってきたためだ。  

韓国でわかった取材の困難さ
 最初の国、韓国で商工会議所などに厚かましく飛び込み訪問し、旅の趣旨を述べて企業への取材の斡旋をお願いした。彼らは親切にもそれに応えようと企業を探してくれた。しかし何の肩書きのない外国人の『自称・ライター』の相手をしてくれる先はない。それでも、培った人脈をつてに何社か取材ができ、記事を書いて出版社へ送った。しかし、「記事というより感想文」と一蹴された。とても落ち込んだが、旅は始まったばかりだ。

中国の脅威と驚異
 中国では、その圧倒的なパワーと文化の違いに押された。都市の大きさ、人の多さ、建設中のビル群...聞いたことの無い街でさえ大阪より何倍も大きく感じた。
チベット・ウイグル両自治区では、危機感を覚えた。雰囲気は中国の占領地のよう。軍人がライフルを持って闊歩し、ビルの屋上には見張りの兵士が目を光らせている。僕はこの両地区で現地の人の家に泊めてもらい、食事を共にした。彼らの中国政府に対する憎悪の大きさに驚き、また故国再興に対する想いも切実なものであることを知った。そこには、地区のパワーが落ちれば、占領されることさえあり得るという現実が目の前にあった。

存在感ある韓国
 中央アジアで存在感を示しているのは韓国だ。韓国の食品や家電、韓流ドラマにいたるまで街中に浸透している。日本の存在感に出会えたのは車だけだ。カザフスタンで資源開発企業の人間と親交ができて、日本の印象について聞いてみた。「日本企業は意思決定が遅いな」と鼻で笑われた。カスピ海では石油が潤沢に産出されるため、世界中から投資マネーが入ってきているが日本からはないに等しい。この現状を見て、僕は「悔しい、日本もっと頑張れ!」と感じた。

可能性感じるモンゴル
 厳寒のロシアを鉄道で越えてモンゴルへ。ここでは親戚の友人が日本向け投資誘致会社を経営していて、その人に各地を案内してもらい、現状について教えてもらった。モンゴルは貧困国だが、鉱山資源国でありGDPは年率10%程度で伸びている。日本が欲しがっているレアアースも採れる。この国の最大貿易国は中国だ。だが、歴史的経緯から反中感情を持っている。そして、この国の経済が厳しいときに日本がODAなどで支援したため、9割以上の人が日本に好意を持っている親日国だ。中国とのパワーバランスを取るために日本からの投資を増やしてほしいらしいが、ジェトロの支部さえないほど投資が少ないのが現状だ。「日本はモンゴルに支援してくれたのだから、それをダシにお金儲けしてくれたらいいのに...」と僕は呟いていた。

やはり存在感薄い日本
 ここまで旅してくる中で、日本に危機感を覚えた。ダイナミックに世界は動き、そこへ韓国や中国などが参入しているのに、日本の存在感は薄い。そして、パワーバランスが落ちれば、対外交渉は不利になり、国家自体が危険な状態に陥ることもありうると感じる。世界には綺麗ごとは通用しないことを見てきた。これからは各地で頑張っている日本企業や日本人を取材したいと思い、態勢を整えるため一時帰国を決意した。
――「日本、もっと頑張っていこう!」というメッセージを伝えるために。

(プロフィール)
和田康佑。昭和58年6月生まれ28歳。関西大学社会学部卒業。4年間務めた信用金庫を辞め、ジャーナリストを志して夫婦で世界一周中。
ブログ:『雲をつかむ旅へ』
ツイッター:@kou3162

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